キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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キンモクセイの咲く街 -1-

お待たせして申し訳ありません。


いつもより長いです。
なので格納形式にさせていただきました。

柊姉、登場の巻。
(10/17 タイトル変更)
星乃さんが転校して一週間が経った。
彼女が座っていた席は、主を失って寂しく教室に置かれている。
学園祭のときに大粒の涙を流していたクラスのみんなは、何事もなかったように授業を受けている。
先生もいつもと表情を変えず、授業を進めている。
僕ひとりが星乃さんのことを意識している―――教室にいると、そんな感覚に陥りそうになる。


星乃さんが毎朝世話をしていた花壇の花は、僕が代わりに世話をすることにした。
図書委員も、僕が引き受けた。
花を世話しているとき、本に触れているとき、ふと彼女の笑顔が浮かんでくる。
それが僕の原動力になっていた。
でも、僕の目に浮かんでいるのはあくまで幻の中の彼女でしかない。
…星乃さんは、もう輝日南高校にはいない。


「どうした相原、そんな顔して」
「ああ、柊…」
「…星乃さんのことか?」
「まあな」
「転校して一週間…か。あっという間だな」
「ああ。でも、まだ実感が湧かないんだ」
「それもそうだろう。まあ、一ヶ月もすればイヤでも実感することになるさ」
「…そうだな」
「想いは伝えてあるんだろ?焦ることなんてないじゃないか」
「…ああ」
持つべきものは友、とはよく言ったものだ。
柊にはいつも助けられてばかりいる。
「ところで柊…この近くで、高校生でも雇ってくれるバイトってないか?」
「どうしたんだ、突然」
「いや、ちょっとな…」
僕が話すのを躊躇するのに何かを悟ったのか、柊は笑みをこぼした。
「なるほど、そういうことか。そうだな…ちょっと待っててくれ」
ひと思案を巡らせると、柊はズボンのポケットから携帯を取り出し、廊下に出て誰かに電話をかけ始めた。
「もしもし、俺………ああ、わかった」
通話を終えて僕の元に戻ってきた柊は、僕にこう言った。
「うちの姉貴のバイト先で人手が足りないらしい。そこは高校生でもいいらしいから、受けてみたらどうだ」
「本当か!?」
「ここで嘘を言っても、俺に得はない」
「…それもそうだよな」
「今日は姉貴が入ってる日だから、良かったら行かないか?」
「もちろん行くさ」
願ってもない助け舟に、僕は早速乗り込むことにした。


放課後。校門で柊と待ち合わせ、駅に向かう道を進んだ。
輝日南駅の手前の路地を進むと、こじんまりとした建物が奥まで並んでいる。
「ここは初めて来るな」
「だろうな。ここは知る人ぞ知る場所だから」
「じゃあ、ここを選んだのは…」
「学校の人間にバレないためさ」
ありがたすぎるほど気の利く友人は、僕の考える一歩も二歩も先を行っている。
柊に足を向けて寝られない。そう思った。
一番奥の建物にたどり着くと、柊は携帯を取り出してお姉さんを呼び出した。
数分おいて店から出てきたのは、薄いピンクの開襟シャツにタイトスカートを身につけたハタチくらいの女性。
モデルのようなスラっとした肢体とシャツから見える胸元が妙に色っぽい。
「明良、待ってたわよ」
「忙しいのに悪いな姉貴。無理言って本当にごめん」
「気にしなくたっていいから。で、電話で言ってたのはこの子?」
「そう。ほら、うちの姉貴」
「あ…相原光一です」
「よろしくね。私は柊那奈。明良と仲良くしてくれてありがとう」
「い、いえ、こちらこそ…」
柊に似て切れ長の目にストレートの黒髪。そしてネックレス越しに見える胸元に生脚…。目のやり場に困って視線は定まらず、気持ちも落ち着かずでしどろもどろの挨拶になる。そんな僕をこの男は見逃さない。
「ふう…相変わらずだな、君は」
「…でも、カワイイじゃない」
ため息交じりの柊のそばで、那奈さんはクスリと笑ってフォローした。
「さ、立ち話もなんだから、中に入って」


誘われて入った先は、巷の喫茶店とは一線を画した店だった。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
那奈さんは店の奥からアイスコーヒーを入れて持ってきてくれた。
「ここは…ネットカフェ、ですか?」
「そんなとこね。昼間はただの喫茶店なんだけど」
グラスを傾けながら、店の中を見て回る。所々にノートパソコンが閉じられた状態で置かれている。
「ネットカフェは会社帰りのサラリーマンをターゲットにしてるの」
ボックスで仕切られた閉鎖的な空間とは違って、喫茶店にいながらネットを楽しめるような感覚がウケているらしい。
仕切りの必要がないように、ケーブルは四方に散らばせてあるという。
しかもここの店長さんがマッサージ師の資格を持っている人で、マッサージのためだけに来るお客さんもいるとか。
「開店までまだ時間あるし、店長に会っておかない?」
「あ、はい」
那奈さんに連れられてスタッフルームに行くと、口元に白い髭を蓄えた人物が煙をふかしながら座っていた。
「那奈、どうかしたか?」
「さっき言ってた子、連れてきましたよ」
「ど、どうも…」
その人物の威圧感に僕は腰が引けてしまっていた。
「この人が店のマスター。強面だけどいい人だから、肩の力抜いて大丈夫」
「あ、はい…」
「那奈、そんなこと言ったら余計に緊張するだろ。やめとけ」
「はーい」
じゃあ私はこれで、と那奈さんは席を外した。
初対面の大人…しかも強面の人と1対1。えも言われぬ緊張感が部屋の中を漂う。
「で、ここでバイトをしたい、と」
「はい…」
「ふむ…」
小首をかしげながら、マスターは僕の顔をしげしげと見つめた。
「じゃあ、来週から来てもらっていいか?」
「…わかりました」
こんなに適当でいいのか?と疑問に思うほど、あっさりとバイトが決まってしまった。
それでも決まったということで一時の安堵感を味わおうとすると、マスターからの突っ込みが入る。
「その制服は輝日南高校だな」
「は、はい…」
「校則を破ってまでバイトをしようとは…何かあるんだろう?」
「ええ、まあ…」
「ま、彼女とデートしたいって言うのが顔に書いてあるけどな」
「ええっ!?」
思わず顔中を触ってみる。結果的にそれが墓穴を掘る形になった。
「冗談で言ったつもりだったんだが本当だったのか!これはまいった」
そういうことなら早く言ってくれ、と言わんばかりにマスターは笑いながら僕の背中を何度も平手で叩いた。
心の内を知られた僕はこっぱずかしくて、顔を真っ赤にするのが精一杯。
「ま、その話は追々聞かせてもらおうか」
スタッフルームを出る前、マスターは僕の真っ赤な耳をくすぐるように耳打ちした。


「どうだった?」
出て早々に柊と那奈さんに尋ねられた僕は、一つこくりと頷いてみせた。
2人はホッとしたような表情を浮かべる。
「そろそろお客さんが来る時間ね」
腕時計を見た那奈さんにつられて、僕と柊も時間を確かめる。
「じゃあ、そろそろお暇させてもらうよ」
「明良、また来るのよ」
「わかってるって」
「那奈さん、よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
一度ぺこりと頭を下げ、僕たちは店を後にした。


あっさりと決まってから1週間。初めてのバイトの日を迎えた。
マスターの配慮で那奈さんと同じシフトに入った僕は、那奈さんに一つ一つ仕事を教わることになった。
「そんなに難しい仕事じゃないから、すぐ覚えると思うよ」
「はい」
「必要なのはとりあえず『元気』だけだし、気楽にやりましょ」
那奈さんのアドバイスで少し気持ちは落ち着いた。
でも接客なんて初めてだから、お客さんが来ても「いらっしゃいませ」という一言を発するのが難しい。
お客さんが入ってきても、緊張が先回りして上手く口が動かない。
それに加えて手はガチガチ、足はガクガク。
―――夕方からのシフトだったけれど、異様に時間が長く感じられた。何を教わったかも覚えていない。
「お疲れ様」
「お疲れ様でした…」
バイトが終わって那奈さんと別れるときには、もうしゃべる気力が失せていた。
気が抜けたまま自転車に跨り、ノロノロ運転で家までたどり着く。


トゥルルルル・・・トゥルルルル・・・


玄関を上がったばかりの僕を、電話の音が迎える。
(この時間に誰だろう…?)
「もしもし」
「あ、相原さんのお宅ですか?」
(ん…?)
聞き覚えのある声に、疲れた頭がもう一度起動しなおした。
「私、星乃と申しますが…」
「星乃さん!?」
おぼろげな記憶が確かな現実へと姿を変える。
さっきまで体を包んでいた疲れはどこかへ吹き飛んでいった。
「あ、相原君?」
「どうしたの?こんな時間に」
「うん、ちょっと…ね」
「そっか…」
「……」
転校してから2週間、星乃さんとは一言も会話を交わしていない。
何から話していいのかわからず、僕は思いついたままを電話口から発していった。
「引越しの片付けは、もう終わった?」
「うん、だいぶ片付いたわ。もともとあまり物は多くなかったし」
「でも、大変だったんじゃない?」
「そう…かな。こっちの学校に行くのを1日遅らせちゃったくらい」
「そっか。でも一段落ついてよかったね」
「うん」
星乃さんの話すトーンが妙に低く感じた僕は、何かを思わずにはいられなかった。
「そういえば、バイト始めたんだ」
「そうなんだ」
「できたら、クリスマスに星乃さんのところに行けたらなって思ってる」
「うん…嬉しい」
やっぱり、どこか元気がない気がする。
もしかしたら…。
「星乃さん」
「何?」
「元気…ないね」
「……」
彼女は何も声に出さなかった。
それが何を意味しているのか、僕はすぐにわかった。
そして間もなく、電話口からすすり泣く声が聞こえてきた。
「相原君…淋しい…」
「星乃さん…」
「独りが…辛いの…」
「……」
もし今からでもできるなら、彼女のそばにいたい。
彼女を思い切り抱きしめてあげたい。
彼女を守ってあげたい。
でも、それは叶わない…。
電話越しに嗚咽を漏らす彼女に、気の利いた言葉をかけることさえもできない…何もできない自分が悔しかった。


「…ごめんなさい。突然泣いたりして」
少し落ち着いた彼女は、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「気にしないで。星乃さんの声が聞けて、よかったから」
「うん…。私も、相原君の声が聞けて嬉しかった…」
「……」
「…相原君」
「何?」
「電話って、不思議ね」
「どうして?」
「離れてても、そばにいるような感覚になれるから」
「うん、そうだね」
繋がっているのは声だけ。でも、それだけでも幸せを感じることはできる…。
「二人でずっとこうやって話せるといいね」
「うん…相原君となら、ずっと話していたい」
「…早く、会えたらいいね」
「うん…」
会いたい。星乃さんに会いたい。
その想いを再確認した。
「そろそろ、寝る時間ね」
「うん…でも、電話を切っちゃうと、また淋しくならない?」
「大丈夫。淋しくなったら、また電話するから」
「そっか。じゃあ、いつでもかけてきてよ」
「ありがとう。また電話するね」
「うん」
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」


ガチャッ・・・


受話器を置いた途端、全身を淋しさが襲った。
部屋に戻っても、星乃さんのことしか考えられなかった。


―――早く、星乃さんに会いたい。
はやる気持ちは、もう抑え切れなかった。
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