キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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伝わらない想い~Time Limit~ -15-

相原君は指を震わせながら、紐を結んでいった。
誰かに見られるかもしれないというドキドキと、相原君に見られているドキドキが私の体温を上昇させた。
「これでよし、っと」
彼が手を離してすぐに完成した結び目に手を回し、水着がずれないことを確かめる。
「ありがとう。助かったわ」
「どういたしまして」
照れくさそうに苦笑いを浮かべる彼を見て、お互い恥ずかしかったことも確認した。
「でも、残念だったなぁ」
「えっ?」
「あ、いや…なんでもないんだ」
「クスッ…変な相原君」


プールから上がった私たちは、そばにある公園でお昼をとることにした。
「今日はお弁当を作ってきたんだけど…」
「お弁当?やった!」
喜ぶ彼に、私は包みをほどいて弁当を出し、彼に渡した。
鼻歌を歌うようにして、彼は弁当箱のふたを開け、中身を見る。
「いただきまーす」
ひと口目をお箸でつまみ、口に持っていく。
彼の嫌いなものは入っていない。けれど、彼の口に合うかはわからない。
一口食べた彼の感想が気になって、両手に力が入る。
「星乃さん、やっぱり料理上手いんだね」
「えっ?」
「星乃さんの作った弁当、すごくおいしい」
「本当?よかった…」
彼は弁当のおかずを次々と口に運ぶ。その表情がすごく嬉しそうで、私は満足した。
そして、私がゆっくり食べている間に彼は早々と弁当箱を空っぽにした。
「また星乃さんの弁当が食べられるといいな」
満足そうな彼の顔が眩しい。
「あ…うん」
『また』という彼の言葉に、私は反応した。
今日は、彼に話さないといけないことがある。話をすれば、『また』が実現するかもしれない。
私も箸を進めながら、この後のことに心を向けていた。
「ごちそうさまでした」
二人で手を合わせ、彼の手元にあった弁当箱を受け取る。
「休憩したら、どこか行かない?」
「そうね」
いよいよ、このときが来る…。
「また、あそこでもいい?」
「いいよ」


私が誘って向かった先…それはあの日と同じ、丘の上公園の高台。
今日は天気がよくて、夕焼け色に染まった輝日南の街がよく見える。
「ここから見える景色って、癒されるんだね」
初めて気づいたような口調で彼は言った。
「うん。だから、私はここが好きなの」
あの時は雨が降っていたから、この景色は見ることができなかった。
だから今日、彼に私の好きな景色を見てもらえたのが嬉しかった。
その景色を眺めながら、相原君は私に話しかける。
「星乃さん…」
「何?」
「この前、話があるって言ったよね?」
「うん」
「その話をしたい」
彼は手すりに当てていた肘をそこから放し、前かがみになっていた背中を伸ばす。
さっきまでとは正反対の真剣な顔つきを見て、私は少し身構えた。
「星乃さん、僕は星乃さんの気持ちを知りたい」
「えっ?」
「星乃さんは僕のこと、どう思ってる?」
私の顔を見つめ、彼は核心を突いてきた。
「……」
私は相原君のことが好き。だけど…。
「ごめん。僕から先に言うよ。僕は星乃さんのことが―――」
「待って…!」
とっさに私は声のトーンを上げ、彼の言葉を遮った。
「…どうして?」
驚いた様子の彼。
「それ以上…言わないで…」
私には、彼が言おうとしたことがわかってしまった。
わかってしまったから、胸が苦しかった。


決めたはずなのに、彼に「好き」って言うって決めていたのに…。
私は彼を、彼の言葉を受け入れることができなかった。
そして、摩央さんや川田先生のことを裏切ったようで、苦しかった。
「相原君…聞いてくれる?」
「…うん」
胸の苦しさを無理やり抑えつけ、私は話を始めた。
「私、転校するの」
「え…!?」
「ごめんなさい…今までずっと言おうって思ってたんだけど、どうしても…言い出せなくて…」
「い…いや…いいんだ、気にしないで」
相原君は動揺したように視線をそらす。
「だから、このままでいたいの…」
「じゃあ、僕のことなんか何とも…」
「ううん!そんなことない!そんな、こと…ないの…でも…」
(でも…)
涙があふれて、目の前の世界がにじむ。
言葉にしたくてもできない想いが、体の中を駆け巡る。
うまく口にすることができなくて、もどかしくて、苦しくて…。
「ごめんなさい…」
「いや、いいんだ。僕が急ぎすぎただけなんだよ。星乃さんは悪くない」
「ううん、悪いのは私…」
「星乃さん…」
彼は肩を落とし、途方に暮れたように表情を曇らせた。
『私は相原君のことが好き』―――それだけを言えたらいいのに、言うことができない。
まだ、彼に私の気持ちは伝わっていない…もどかしさだけが募って前に進まない状況が、私をさらに苦しめた。
「相原君、キスして…」
「……」
「言葉では言えないけど、気持ちなら伝えられるから」
「星乃さん…本当に、いいの?」
「…うん」
せめて、彼に少しでも私の気持ちが伝わってくれたら…私にとって精一杯の背伸びだった。
ゆっくりと目を瞑る。そこに彼が私に近寄り、私の肩を抱く。
やがて唇に、柔らかい感触が…訪れた。
(相原君…)
胸がいっぱいになって、涙は止まらず、体も震えて止まらない。
好きな人とキスをしたというのに、切ない思いばかりが体を包んだ。


私にとってのファーストキス。それはあまりに切なくて、苦いものだった。
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Author:星乃裕一
SS書き5年目。

『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
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