キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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伝わらない想い~Time Limit~ -11-

雨は放課後まで止むことはなかった。
私はみんなが帰った教室で一人、雨が止むのを待ちながら箒を持っていた。
今日も彼から一緒に帰る約束を持ちかけてくれた。私はもちろんOKの返事をした。
…でも、私の胸の内は複雑だった。
あのことを、話さないといけない。そう考えただけで気が重くなる。
ひと月前には光さえ見えなかった私に一筋の光が射し、その光はもう私のすぐ目の前に来ているというのに…。悲しいけれど、私にはその光を一瞬で遠ざけるものを持っている。
―――転校。
彼にこの事実を伝えること…それは遅かれ早かれ、いずれはやってくる試練。
逃れたい。けれど、逃れることはできないその試練と向き合うことになったとき、彼と話すようになってからの1ヶ月が急に色を失い始めた。


彼と帰るときは、いつも校門の前で待ち合わせをすることになっている。
いつもならドキドキしながら待っているけれど、その感情はどこにもなかった。
(彼に、言わなきゃ…)
傘の中で俯きながら、彼が校舎から出てくるのを待つ。
5分、10分、20分…約束の時間を30分過ぎても、彼は現れなかった。
(どうしたんだろう…)
気になった私は下足ロッカーに戻ろうとした。
すると手前の校舎を過ぎたあたりで、私の目の前に鞄で頭を覆いながら男の子が走り寄ってくる。
「星乃さん、ごめん!待った?」
相原君だった。覆いきれていない肩が雨に濡れている。
私は彼を傘の中に入れ、彼がこれ以上雨に濡れないようにした。
「大丈夫?服が濡れてるけど…」
私はポケットに入れていたハンカチを渡した。彼はそのハンカチを取って濡れたところを拭いていく。
「これで大丈夫。心配してくれてありがとう」
「あ…うん」
ハンカチを畳みなおして、彼は私にハンカチを返す。
「相原君、傘、忘れたの?」
「うん。家を出るときに雨が止んでたから、てっきり降らないだろうと思って傘を持ってきてなくて…」
でも、星乃さんと相合傘ができてよかった…彼は嬉しそうに私の手から傘の手元を取り、傘を差し直した。
(相合傘…)
同じ傘に好きな人と一緒に入る。私にとっては夢のようなシチュエーションだった。
だから、本当なら相原君みたいに喜びたい。
それが今の私には、どうしてもできない…。表に出せないもどかしくて辛い思いが、私の体を駆け抜けていく。
「星乃さん、どうかした?」
「えっ…ううん、なんでもない」
彼に不意を突かれ、慌ててごまかすように返事をした。
「何か考え事をしてたみたいだけど」
「ううん、本当になんでもないの」
できるだけ彼の前では明るく振舞おう…そう決めた。


「相原君」
「何?」
「ちょっと、寄りたい所があるんだけど…」
「どこ?」
「ついてきたらわかるわ」
彼をがっかりさせないように、私はわざと行き先を隠した。
私が行きたかったのは、学校から山の手に10分ほど登ったところにある公園。
「丘の上公園」と呼ばれるこの公園は、私にとっては思い出の詰まった場所。そして、外では一番落ち着く場所でもある。
晴れている日は、高台にある分だけ景色が遠くまで見える。けれど、あいにくの天気でそれは望めそうにない。
それでも公園に着いたときには、雨はずいぶん小降りになっていた。
「ここ、か」
トーンの低い声で彼はつぶやいた。
「がっかりした?」
「いや、久しぶりだなーと思って」
摩央姉ちゃんや妹とよくここで遊んだんだ、と彼は公園の思い出を私に話してくれた。
「でも、どうしてここに?」
彼の不思議そうな表情を見て、私はここに来た理由を答える。
「私ね、昔はこの街に住んでたの」
「そうなんだ」
「でも小2の時、お父さんの仕事の都合で引っ越して…」
私はこの街が好きだったから、我儘を言って引っ越してもこの街の学校に通わせてもらっていた。
電車通学で輝日南高校に行っているのも、そういう理由だから。
―――私は輝日南の思い出を一つ一つ記憶の引き出しから出すように、彼に話をした。
「引っ越してからも私は時々ここに来て、元気のないときはここの景色を見て励まされたり、いいことがあったときはここで喜んだりしてた」
「星乃さんにとってここは思い出の場所、ってわけだ」
「うん…」
…その思い出の場所からも、もうすぐ離れてしまう。
何もかもを置いて、見知らぬ土地へ行かなければならない…。
「星乃さん」
「えっ?」
また不意を突かれて、気の抜けた返事をしてしまう。
「どうしたの?さっきから何だか変だよ」
「え…そう?」
「何か、あったの?」
「ううん、何でもないの…」
本当は、言わなきゃいけないことがある。
転校する…そう言ってしまったら、彼は何て言うだろう。
せっかく仲良くなったのに、離れなければならない…しかも、話しかけてくれたときにはもう転校が決まっていたなんて言ったら…。
彼の反応が怖くて、口にできなかった。
「何でもないって言われても、僕は力になれない…」
「うん…でも本当になんでもないの」
「わかった。もし言いたいことがあるなら、言って欲しい」
「うん…」
彼の言葉が、私を追い詰める。
そして、私の心を切り刻むように湧き上がる不安と恐怖、罪悪感…。
「…やっぱり、言えない…」
「どうして…?」
「どうしても…」
「…」
「…」
彼に話さなきゃいけない。けれど、話すのが怖すぎる…。
事実と向かい合おうとしていた私の心は、もう限界だった。
「相原君…!」
私は彼の胸にすがりつき、こらえていた感情を爆発させた。
「星乃…さん…」
「少しだけ…このままでいさせて…」
私は泣きながら、彼のカッターをぎゅっと握り締めた。
「私、私…」
何か話そうとしても、感情が先走って言葉にならない。


彼は突然泣き出した私を見て驚いていたけれど、やがて泣いている私を静かに抱き締めてくれた。
「星乃さん、一人で抱え込まないで」
「うん…でも、でも…」
彼の言葉が、また私の心を締めつけた。
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『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
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