キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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伝わらない想い~Time Limit~ -2-

夏休みが明けて、2学期の最初の日。
一人で電車に乗り、文庫本を開く。通勤ラッシュに巻き込まれながら、輝日南まで本とにらめっこ。輝日南駅に着くと、そこからまた一人で学校へ向かう。
何もかもがいつもと同じ…のはずだった。
それが転校が決まった途端、不思議と学校までの道のりが長く感じた。いつも見ている風景も、今日に限って今までとは違ったように見える。
…「転校」という事実は、私のあらゆる感覚をセピア色に染めてしまっていた。
染まってしまった自分を実感して、何とも言えない寂しさを覚える。
この街にいられるのも、あの学校にいられるのも、あと少しなんだ。あの人に会えるのも…そう思うと、胸が苦しくて押し潰されそうになる。
ほんの数日前にいきなり突きつけられた現実を簡単に受け止められるほど、私は強くない。
読みかけの本と今にも泣いてしまいそうな感情を胸に抱え、私は輝日南高校の門をくぐった。
「おはよう!」
「おはよー!」
クラスの人たちがお互い久しぶりに顔を合わせるから、教室は明るい空気。
それを避けるように私は視線を窓の外に向け、見える景色をぼんやりと眺めていた。
(私、どうすれば…)
目の前の世界が色褪せていくのは止められない。でも、何とか食い止めないと、私は何もできないまま転校してしまう…。
あと1ヶ月…男の人のことをよく知らず、打つ手の分からない私にとっては短すぎるタイムリミットに、不安ばかりが心の中で蠢いていた。


(バタバタバタ…)
チャイムが鳴ると同時に、その音を掻き消すようなもの凄い足音が私の耳に届く。
「おはよう、柊」
「お、相原。間に合ったか」
「ふう、ぎりぎりセーフってとこだな」
「新学期早々から遅刻とあれば、担任が容赦しないからな」
「ははは…」
汗だくになって教室に駆け込んできた一人の男の子。
私が1年生のときから気になっていた、あの人。彼とは1年の時から同じクラスなんだけど、全然話をしたことがない。
いつもチャイムが鳴る頃に教室に駆け込んできたり、宿題を忘れて先生に立たされたり。私とは何かにつけて正反対だし、しぐさや行動が決してカッコいいというわけじゃない。
けれど、私の目には彼の醸し出す優しそうな雰囲気が焼き付いている。
彼のことが気になりだしたのはいつからかわからない。ただいつの間にか、無意識に彼に視線を向けていることが増えていた。
今日も、足音が聞こえると不意に視線が廊下を向いていた…でも話しかけたりはできなくて、彼をただ見ているだけ。
内気な私ができるのは、そこまでだった。


体育館での始業式が終わると、私は足早に図書委員の仕事に向かった。
職員室へ行って司書の先生に鍵を借り、図書室の鍵を開ける。
…これで一日の仕事の半分は終わり。
借りられる本も返される本も一日に両手で数えられる程度だから、私がカウンター担当の日はほとんど座りっぱなし。
借りる人も限られてて、いつの間にか顔を覚えていたりもする。そこに彼は入っていなくて…。彼を図書室で見かけたこともないし、図書室には縁がない人なのかもしれない…。鍵を開け、開室を待っていた人たちを中に入れる最中、私はずっと彼のことを考えていた。
誘導が終わって中に入り、今日も彼がいないことを確認する。いつものことだから…と言い聞かせてみるけれど、今日は胸にすきま風が吹き込んだような感覚。彼がいないことが、淋しい。
「あれ、星乃さんじゃないか?」
「えっ?」
「ほら、あそこ」
「え、ああ…」
カウンターに入って椅子に腰掛けようとすると、男の子2人の話し声が耳に入ってきた。私の名前を知ってるということは、クラスの男の子…。
振り返って声のした方に目を向ける。見覚えのあるシルエットが2つ、私の目に飛び込んできた。
(相原…君…)
振り向いた拍子に彼と目が合う。
「あ…」
気づいた彼が咄嗟に視線をそらし、私を視界から外そうとする。隣にいた彼のお友達の柊君が、そんな彼に耳打ちする。すると、彼は戸惑う素振りを見せながら一歩ずつカウンターにいる私に歩み寄ってきた。
2人の会話を耳にしてから完全に固まってしまって中腰のままの私に、一歩、また一歩と彼が近づいてくる。
そして、私の目の前で彼は立ち止まった。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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Author:星乃裕一
SS書き5年目。

『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
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