キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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浴衣と恋と友情と -3-

(このまま戻ったら、また誰かと一緒に過ごすことになるかもしれない…)
みんなと過ごすのは嫌いじゃない。けれど、なかなか2人きりになれないことが、もどかしくてたまらない。
校庭に向かう途中、私は相原君をある場所に誘うため、もう一度校舎裏に戻る。栗生さんと出くわしたときに、校舎裏の出入口の鍵が開いていることを確認していた。だから、校舎に入るのは難しくないはず。
…運よく私たちは誰かに見つかることなく、校舎に入り込むことができた。
誰もいない校舎の中を、階段を上りながら目的地へと足を進める。真っ暗な廊下に、裸足で歩く2人の足音が静かに響いている。もし誰かが見回りに来ていたら…内心怖かった。でも、そのスリルがまるでサスペンスものの小説に出てくる犯人の気分を味わっているようで楽しくもあった。
「相原君、ここ」
「ここは…」
私が相原君を連れてきた場所―――思い出がたくさん残っている図書室。
せめて、中に入れたら…期待と不安が入り混じる中、ドアに手をかけて開けようとした。当然、この時間に鍵が開いているはずはない。
(職員室なら、きっと鍵があるはず…)
わずかな希望を胸に、私は彼をその場に待たせて鍵が管理されている職員室へ行こうとした。
その時。


ヒュー…
ドーン!


ヒュー…
ドーン!!


背後から聞こえたのは、打ち上げ花火が夜空に舞い上がる音。空高く上がってゆく花火が、真っ暗な校舎を照らす。
「キレイ…」
鍵のことを忘れ、私は次々に空に舞う大輪の花に見入っていた。そんな私に相原君が歩み寄り、何も言わずそっと肩を抱いてくれる。
私は彼に体を委ね、窓越しに花火を眺めた。
―――やっと訪れた、二人っきりの時間。三ヶ月、待ちに待った甘いひとときに私はめぐり合った。
「やっと、二人になれたわね」
「そうだね」
互いに照れ笑いを浮かべながら言葉を交わす。外では私たちのムードを盛り上げるように、満開の花が宙を舞い、私たちを照らしていた。
相原君の腕の中で、花火を眺める彼の横顔を見つめる。視線に気づいた彼が私を見つめ返す。
「星乃さん、ありがとう」
そして、彼は不意に私の唇を奪う。
「あ…」
火のついた感情の導火線は、瞬く間に私の心に大きな花を咲かせた。
彼の唇の感触をもっと味わいたくて、唇を重ねたまま腕を彼の首に回し、体を密着させる。呼応するように彼も私の背中に腕を回し、体を引き寄せる。
浴衣の胸元が緩くなっていたけれど、そんなことはもうどうでもよかった。
(相原君…好き…)
…高ぶる感情を抑えきれず、ついに感極まった私。好きな人とキスできて嬉しいのに、なぜか目頭が熱くなっていた。


輝日南の空に咲いた夜花は、やがて短い命を終えて儚く散っていった。
散りゆく花を惜しむように、私たちはまた暗くなった廊下で二人余韻に浸る。
「綺麗だったね」
「うん、とっても」
花火が作り出したムードがあまりに印象的で、私はしばらくその場を離れることができなかった。
相原君も動こうとしなかったから、きっと私と同じ感覚だったと思う。
でも…ずっとここにいるわけにもいかない。至福の時間の代償で生まれた葛藤を恨みながら、私たちは階段を下りて校庭に戻る。
校庭に戻ると、お祭りはエンディングへと向かっていた。クラスの子と会っていた柊君たちと再び合流し、4人で校庭を後にした。
「それじゃ星乃さん、お元気で」
「じゃあね、星乃さん。かんざし、大事にしてね」
「柊君、明日夏ちゃん…ありがとう。じゃあ、またね」
校門で二人に見送られ、私は相原君の自転車の後ろに乗って彼の家に向かった。
彼の腰に抱きついて、自転車で二人乗り。いつかの恋愛ドラマで見たシチュエーションに、頭の中で私たちを投影する。
さっき体を寄せ合ったばかりなのに、私の体温は上がりっぱなし。ペダルをこぐ彼に気づかれそうなほど、胸のドキドキが止まらなかった。


「ここが僕の家だよ」
「うん」
山の手の住宅街に入ったところに、相原君の家はあった。
「ただいま」
「おじゃましまーす」
「おかえり、お兄ちゃん」
私たちを出迎えてくれたのは、校庭で聞いたあの声。
「あ~、お兄ちゃん…菜々の知らない女の人連れてる」
いかにも嫉妬しているような表情で、女の子は私を見つめる。あの時走った理由が、何となく解った気がした。
「菜々、その顔はやめろって」
「だって…」
ふくれっ面をする女の子に、頭を掻きながら苦笑いを浮かべる相原君。その光景がほほえましくて、頬が緩んだ。
「妹の菜々。こんな妹だけど仲良くしてやって」
「うん」
そして彼は妹さんに私の紹介をしてくれた。
「ほら、お前も星乃さんに自己紹介しろ」
「あ、私…妹の菜々です。菜々って呼んでください」
「菜々ちゃんね。これからよろしく」
「はい、結美お姉ちゃん」
お姉ちゃんだなんて…一人っ子の私には恥ずかしかった。でも、こんなふうに私を呼んでくれるなんて新鮮。私は家に招待してくれた彼に心の中で感謝した。
「それじゃあ上がって」という彼の誘いを受けて、私は下駄を脱いで彼の家に上がる。リビングでお世話になる彼のご両親に挨拶をして、泊まっている間使う部屋を彼に案内してもらった。
「相原君の家って、結構広いのね」
「まあね」
2階に上がり、廊下を奥へと足を進める。
「ここだよ」と彼がドアを開けると、ひんやりした冷房の風が部屋から流れてきた。中に入ると、5帖ほどの洋間に布団と先に彼が持ってきてくれたボストンバッグが置かれてある。「この隣が僕の部屋で、一番階段に近いところが菜々の部屋。何かあったら言ってきてよ」
「うん、ありがとう」
じゃあ僕は部屋に戻るから、と彼は部屋を去っていった。


私は浴衣のまま布団に横になり、花火のときのことを思い出していた。
私の肩を抱く彼の手の感触も、唇の感触も、背中に回された彼の手の感触も、みんな体が憶えている。
そしてふと彼の唇の感触を思い出すと、無意識に唇に指を当てる私がいる。
私は相原君のことが心から好きなんだ…改めて確信した。


ご両親の計らいで、私は3日間相原君の家でお世話になった。
そのお礼と言っては何だけど、一緒に料理を作ったり、菜々ちゃんとお風呂に入ったり、高校生3人で勉強したり。
彼だけじゃなくて、彼ととても近しい人たちとのふれあいが楽しかった。
……あっという間に3日間が過ぎ、彼との別れのとき。
お世話になりました、と彼のご両親に挨拶をした私は、彼と菜々ちゃんと3人で輝日南駅に向かった。
「もうお別れなのね…」
仕方ないよ、と慰めてくれる彼。
「また輝日南に来てね、お姉ちゃん」
「うん。菜々ちゃんも元気でね」
えへへ、とはにかむ菜々ちゃん。
「じゃあ、菜々はちょっとここで待っててくれ」
菜々ちゃんを駅前に残し、相原君は私をホームまで見送ってくれることになった。
「相原君、誘ってくれて本当にありがとう」
どういたしまして、と頭を掻きながら恥ずかしがる相原君。
「今度は僕が星乃さんのところに行く番だね」
「クスッ、そうね。じゃあ…今度は私の家に招待しないとね」
「その時はよろしく」
会話のあいだ、時々互いに吹き出して笑いながら、電車が来るまでの時間を過ごす。
「…星乃さん」
「何?」
急に真剣な表情になる彼。
「最近、高校を卒業してからどうするか考えてるんだ」
高3の夏。そろそろ、進路も決めなきゃいけない。
「できれば、星乃さんと一緒に過ごしたい」
「え?それって…」
「僕は、星乃さんの住んでる街にある大学に行こうと思ってる」
「……」
「そうすれば、お互い淋しい想いをしなくてすむからさ」
「相原君…」
私は彼の言葉が嬉しかった。彼は私のために、将来を考えてくれている。
私が彼を想う以上に、彼は私のことを想ってくれている…その実感が、体中を駆け巡った。
「ねえ…」
何?と彼が私に顔を向けた瞬間…私は彼にキスをした。


(この気持ちが…彼に伝わりますように…)
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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Author:星乃裕一
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『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
『アマガミ』の二次創作もぼちぼちと。


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