キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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2人の廊下 -20-

星乃さんは学園祭前のホームルームで、転校することをクラスのみんなに告げた。
改めて転校するというのを聞くと、胸が苦しかった。
転校のことを初めて知ったクラスのみんなが星乃さんの周りに集まり、涙を流して悲しんでいる姿が見ていて辛かった。
何より、人だかりの中心にいる星乃さんがずっと浮かない顔をしていたことが、とても辛かった。
…学園祭が始まっても、星乃さんの周りには名残惜しむ人が常について回る状態で、二人っきりになる時間は全く取れなかった。
結局、僕は一人で学園祭を回らざるを得なくなった。けれど彼女のことがずっと気になって、とても楽しめない。
仕方なく、食堂で時間を潰しながら1日を過ごした。


学園祭の終わり―――それは同時に、星乃さんとの別れが近づいていることも示していた。
ホームルームになってようやく星乃さんの周りから人が離れ、会話をする時間が生まれた。
「相原君」
「何?」
ホームルームの後、星乃さんは片付けに参加することになった僕を呼んだ。
「後で、図書室に来て欲しいの」
「え、どうして?」
「うん、ちょっと…」
「わかった」
二人きりになれる場所…そう考えて彼女は図書室を選んだんだと思う。
キリのいいところで作業をやめ、片付けに追われる柊やクラスの友人に断りを入れ、一人図書室へと向かった。
輝日南高校での、星乃さんとの最後の時間――――


星乃さんは図書室の窓際で読みかけの本を持って待っていた。
窓から入り込む風が彼女のセミロングの髪をなびかせている。
「星乃さん」
声をかけた僕に気づき、僕の方を振り向いた彼女の顔が夕日に照らされる。
微笑みかけてくれる星乃さんの表情は、まるですべてを乗り越えたように穏やかだった。
それを見た僕は安心して、気持ちが落ち着いた。
「やっと二人になれたわね」
「そうだね」
「…学園祭、一緒に回れなくて…ごめんなさい」
「仕方ないよ」
「ううん、せっかく約束したのに悪いことしちゃって…」
余程気にしていたのか、すっかり下がり眉の星乃さん。僕はすかさず慰める。
「気にしてないよ。だから、あまり自分を責めないで欲しい」
「うん…ありがとう」
八の字の眉が、大きな弧を描いて元に戻った。
「そういえば、ここは星乃さんが学校で一番好きな場所なんだよね」
「ええ。たくさんの本に囲まれて、たくさんの本に触れあって…大好きなものに囲まれて、幸せだったわ」
「よかったね」
「ええ」
嬉しそうに話す星乃さんの透き通るような笑顔が、とても可愛かった。
「最後に、受付に座ってみたら?」
「うん」
「じゃあ、これ…持ってて」
持っていた本を僕に渡すと、星乃さんはカウンターの椅子に座った。
「図書館に何かご用ですか?」
彼女はとびきりの笑顔で、カウンターの向かいにいる僕に話しかける。
「ちょっと待ち合わせで来たんだけど…」
「どなたと?」
「目の前の女の子と」
「クスッ」
キザっぽい会話が恥ずかしくて、二人でクスリと笑った。
「…もう、ここに座ることもないのね」
さっきまで嬉しそうだった星乃さんの顔が急に淋しそうな表情になった。
…事実、彼女がこのカウンターに座ることはもうない。
座っていた彼女は静かに腰を上げ、カウンターから離れていった。
「もう、いいの?」
「あんまり座ってると、寂しくなるから…」
「そっか…」
ずっと座っていたら、きっといろんなことを思い出して立てなくなる。彼女はそう思ったんだろう。
「そろそろ、行かなくちゃ」
「……」
もう…行ってしまう。
「帰りに、丘の上公園に寄らない?」
別れる前に、星乃さんの好きな場所に連れて行きたかった。
彼女はうん、と頷いて僕の腕を取った。


丘の上公園に着く頃には、もう日が暮れかかっていた。
「…ここに来ることも、もうないのね…」
「……」
夕日に染まった輝日南の街を眺めて寂しそうな星乃さんの顔を、僕は見ることができない。
「私、この街が大好きだったの。この公園も、ここから見る景色も、この街の雰囲気も全部。だから、引っ越しても我儘を言って電車通学させてもらってたの」
「……」
「それに、この街には引っ越す前からずっと好きな人がいて…」
「…その好きな人が、僕?」
「ええ。相原君と遠足で手をつないだり、あなたが滑り台で下りられなくなった私を助けてくれたことは今でも覚えてる。あなたの優しいところが好きだった。引っ越してからもずっと探したくて、この街に毎日通ってたわ。でも、全然会えなかった…」
「そうだったんだ…」
「高校の入学式で相原君の名前を見たとき、私…嬉しかった。やっと、やっと会えたって思った。それなのに、あなたは気づいてくれなくて…」
「ごめん…」
「クラスが一緒なのに、全然話す機会がなくて…。このまま片想いで終わっちゃうのかなって思ってた…。夏休みに転校が決まって、もう会えなくなるってわかって…悲しかった。それであの時、嘘をついたの…」
「あの時って…」
星乃さんは僕と知り合いたいがために、やってある宿題を忘れたとわざわざ嘘をついていたんだ。
「……」星乃さんの気持ちを改めて感じて、もう言葉にならなかった。
そして、僕との慣れない関係にも健気だった星乃さんに、自分が彼女にしてきた常識外れの行動を恥じた。
「星乃さん…本当にごめん」
「ううん、いいの。こうやってあなたとお知り合いになれて、私は嬉しかった」
「星乃さん…」
こんな僕に…彼女の言葉が嬉しくて、胸が熱くなる。
「それに、あなたが昔のことも思い出してくれたから…。私はそれでいいの」
「……」
―――9年越しの片想い。そこには、僕が気づかなかったことで生まれた空白がたくさんある。
僕はその空白を、これから埋めていこうと決めた。
「星乃さん、離れても気持ちはいつも一緒だよね?」
「ええ、もちろん。心はいつもあなたのそばにいるわ」
もう、離れない。そして絶対に離さない。
「バイトして、お金貯めて会いに行くよ」
「うん、ありがとう。待ってるから…」


「行く前に、滑り台に行ってみない?」
「…うん」
滑り台は僕らが成長したことですっかり小さく見える。その階段を登って、二人で沈む夕日を眺める。
「星乃さんのこと、ずっと大切にするから」
「ありがとう…」
僕は星乃さんを優しく抱き、唇に自分の唇を触れあわせた。





「星乃さん…好きだ…」
「私も好き…大好き…」




Fin.
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Author:星乃裕一
SS書き5年目。

『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
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