キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2人の廊下 -19-

こんな展開になるとは思っていなかった。
星乃さんと二人っきりのプール。しかも、学校のプールでなんて…。
先に着替えてプールサイドにいた僕の心は、緊張とドキドキの狭間で揺れ動いていた。
「おまたせ」
濃紺のスクール水着に着替えた星乃さんは、制服の時より少し細く見える。
(もう、星乃さんのスクール水着姿を見ることもないんだな…)
スクール水着姿の彼女を見つめて一人感慨に耽っていた。
「相原君…」
「な、何?」
「恥ずかしいからあんまり見ないで」
「あ…ご、ごめん」
慌てて目を逸らす。しまった、ちょっとやりすぎた。
「さあ、泳ごうか」
「ええ」
場の空気を変えるため、僕らは水の中に入ることにした。


学校のプールとはいっても、二人で泳ぐには広い。
二人で泳いだり、歩いたり。時々水をかけ合ってはしゃぎながら、水の中で時間を過ごした。
窓から差し込む夕日がやけに眩しい。
「この辺りは深いから、つま先で立つのがやっとなの」
「じゃあ、僕の肩につかまって」
「うん…」
プールの真ん中。僕の肩を持った星乃さんの顔が、目の前にある。
「あ…」
彼女も僕の顔との距離に気づいたのか、少し顔が赤い。
鼻がひっつきそうなほどの至近距離でお互いの顔を見つめる。夕日に照らされる彼女の顔が、僕の目には寂しそうに映った。
(もう、会えなくなる…)
変えられない現実。でも、会えなくなるなんて嫌だ。こんなに好きな人と、離れるなんてできない…。
つのる想いだけが身体中を駆けめぐり、感情のタンクはもうはち切れそうだった。
(星乃さん、好きだ…)
「キスしていい?」…もうこの言葉は必要なかった。
僕は何も言わず、星乃さんの唇に自分の唇を重ねた。
彼女は呼応するように僕の肩を持つ手を首に回し、力を込めて僕を抱きしめる。
淋しい想いはお互い変わらない。むしろ、彼女の方が淋しかったんだと思う。
星乃さんは重ねた唇をより密着させるように僕の頭に手を動かし、抱くようにして僕の顔を彼女の顔に近づけた。
今までで一番濃厚で、大胆で、一番長いキス。
二人の世界にいる僕らに、ここが学校のプールだということはもう関係なかった。


どちらからともなくおもむろに唇を離す。頭に動かした手を肩に戻した星乃さんは涙を流していた。
「私…忘れない…」
「僕も忘れない…」
次々と頬を伝う涙はやがて、プールの水と同化した。
プールの水がみな星乃さんの涙になったような錯覚を覚える。
僕は彼女の頬に手をやり、親指で優しく涙を拭い取った。それでもとめどなく、彼女の目からは大粒の雫が流れ落ちる。
「泣かないで、星乃さん」
「うん…泣いちゃいけない、泣いちゃいけないって思ってるんだけど…」
「星乃さん…」
…僕が彼女を守る。それが、今の僕にできることだと思った。
僕は涙でくしゃくしゃになった彼女の顔を胸に抱き寄せ、子どもをあやすように頭を撫でた。
「…ありがとう…」
胸の中で、彼女は小さな声で僕に言った。


日が沈みかけた頃、僕らはプールから上がり制服に着替え直した。
一緒に帰るとき、僕らは腕を組み、時折見つめ合いながら微笑んでみたりした。
あと少しだけの一緒にいられる幸せなひととき。
駅で別れるとき、腕を離すことさえ互いに躊躇った。
二人の時間がずっと続いて欲しい。僕も星乃さんも、同じ思いだった。
「学園祭、一緒に回らない?」
「…うん」
別れる間際に交わした会話は、学園祭の約束だけだった。
でも、これだけで十分だった。


プールでの出来事の余韻が冷めないまま、週末を迎えた。
正門に建てられてある「輝日南高校学園祭」と書かれた大きな門を見ながら、教室へと向かう。
星乃さんと学校で会うのも、隣の席に座るのも、今日が最後。
彼女と同じ空間にいて、同じ教科書を広げて、同じ先生の授業を受けることはもうない。
認めたくない、受け入れたくない、もし今からでも変わるなら変わって欲しい現実。
それを、ただ噛みしめるしかなかった。
「おはよう」
「おはよう、相原君」
教室に着くと、いつものように星乃さんと挨拶をする。
このいつも通りの光景も、もうなくなるんだ。そう思うと、僕は切なかった。

スポンサーサイト

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

当室はリンクフリーですが、ご一報いただけると幸いです。
御用の方はメールフォームからどうぞ。

来訪者数

最近の記事

カテゴリー

プロフィール

星乃裕一

Author:星乃裕一
SS書き5年目。

『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
『アマガミ』の二次創作もぼちぼちと。


mixi参加してます。
下記メールリンクより管理人宛にアド添付してメールをいただければご招待させていただきます。
あわせて感想などもありましたらどうぞ。

管理人メール

リンク

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。