キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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2人の廊下 -18-

家に帰り自分の部屋に戻った僕は、左腕から時計を外し、机の上に置いて見つめた。
(星乃さんと同じ時計だ…)
好きな人と同じものを持つ。それが僕にはとても新鮮で、嬉しかった。
初めて感じる、好きな人が目の前にいるような感覚。
そして、同じものを持つという行為でお互いの結びつきが強くなったような感覚を覚えた。この時計は、何があっても手離さない…。
「お兄ちゃん、何やってるの?」
二人っきりの世界に浸っているところに、妹の邪魔が入った。
せっかくのムードがぶち壊しだ。
「菜々、ノックぐらいしろよな」
「ごめんなさい…。お兄ちゃん、菜々が『ご飯できたよー』って何回も言ってるのに、下りてきてくれないんだもん」
「もうすぐしたら下りるから、って母さんに言っててくれ」
「うん、わかった…」
(…ったく)
「お兄ちゃん、机の上にあるの、何?」
…まだいたのか。こっちは星乃さんのことを考えていたいのに。
「お前には関係ないだろ」
「関係あるもん!菜々はお兄ちゃんの妹なんだもん!」
あーもう。菜々の発言にイライラさせられて、星乃さんどころじゃなくなってしまった。
はらわたが煮えくりかえった僕は、吐き捨てるように菜々に告げた。
「先にご飯食べててくれ!」
「うん…」
きつく言ったことでようやく菜々は僕の部屋から撤退し、リビングへと下りていった。
(まったくもう…)
怒りが収まるのを待って再び時計に意識を向け、またしばらく星乃さんのことを考えた。


次の日から、僕はペアウォッチをはめて登校した。
時間にルーズだった僕が時計をするなんて、いったい誰が考えただろう。
「おはよう、星乃さん」
「相原君、おはよう」
いつものように教室で挨拶を交わす。星乃さんの左腕を見ると、彼女もはめてきてくれている。それを確認するだけで、胸が躍った。
「フフッ、なんだか恥ずかしい」
「僕もだよ」
僕らは照れながら、ペアウォッチが近づけた二人の距離を確かめ合ったような気がする。
教室にいる間は、授業中も、休み時間も、互いの目が合うと見つめて笑顔を浮かべる。
会話はないけれど、なぜか会話をしているときよりも幸せな気持ちだった。
僕は彼女の顔を見るだけで幸せだったんだと思う。そして彼女も、僕の顔を見るだけで幸せだったのかも知れない。
自分にこんな純粋な気持ちがあったのか…と自分で思うくらい、僕自身の心境の変化は著しかった。
星乃さんも、出会った頃からは想像もつかないほど積極的になっていた。
「ねえ、一緒にどこか行かない?」
彼女は僕の手を取り、学校のあらゆるところを見て回ろうとした。
花の手入れをしていた花壇。
よく読書をしていたというテラス。
星乃さんの居場所だった図書室。
二人が初めて会話した保健室。
そして…初めてキスをした校舎裏。
どこに行っても、彼女はその場所にある思い出や思い入れを語っていた。
彼女にとって、学校全体が一つの思い出のようなものだったんだろう。
思い出を語るときの彼女の顔が、とても嬉しそうだったのが印象的だった。


でも、時間は待ってはくれない。もうすぐ星乃さんとは離ればなれになる。
それだけが、ただそれだけが怖かった。


星乃さんと受ける最後の授業の日。
彼女のことが頭を占領していたことで前の日あまり眠れなかった僕は、体育の授業を水泳と間違えて水着を持ってきてしまい、体育の先生にこっぴどく叱られた。
(はぁ…)
体育が6時間目だったからよかったものの、僕はこの一日がスッキリ終われなくなってひどく落ち込んだ。叱られて少し自棄気味の僕は、ホームルームが終わると久しぶりにプールへ向かった。
…またしても誰も泳いでいない。ツキにも見放された。そう思っていた。
「相原君」
後ろから僕を呼ぶ声がする。
「あ、星乃さん。プールに何か忘れ物?」
「ううん、そうじゃないの。もうプールに来ることもないから、しっかり目に焼き付けておこうと思って」
「そうなんだ」
「相原君はどうしてここに?」
「あ、いや…」
(自棄になって覗きに来たなんて言えないよなぁ…)
「実は今日、体育が水泳だと間違えてさ、海パン持って来ちゃったんだよね。だから、無性に泳ぎたくて。あはは…」
海パンを持っているのは事実だけど、プールに来た本当の理由があるせいで後ろめたい。
「そうなんだ…。じゃあ、私も…泳ごうかな」
「ええっ!?」
「えっ?いま私、変なこと言った?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど…」
誰かに見られたらどうしよう。先生に見つかったりでもしたら…腰が引けてしまって、気持ちが前向きになれない。
「本気?」
僕は星乃さんの気持ちを確かめた。
「うん。だって、学校のプールを二人で泳ぐなんて、なかなかできないもの」
(……)
でも、いい思い出になるかも知れない。
「そうだね。一緒に泳ごう」
「ええ。じゃあ、ちょっと着替えてくるわね」
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SS書き5年目。

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