キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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2人の廊下 -16-

キスをした後のことはあまり憶えていない。
ただ、駅で僕を見送る彼女の顔がとても淋しそうだったことは憶えている。
(星乃さんともうすぐ会えなくなる…)
帰りの電車の中で、切なくて胸が張り裂けそうになった。


あくる朝。
学園祭ウイークで盛り上がる周囲を尻目に、鬱々とした感情を抱えながら教室に入った。
星乃さんとは「おはよう」と一言言葉を交わしただけ。
(転校…か…)
そればかりが頭を支配して、授業に身が入るような状態ではなかった。
「はい、今日は現代国語の宿題回収の日だから後ろから集めて」
1時間目が現代国語ということも、宿題なんてあったかどうかも憶えていない。
「相原君?」
(はぁ…)
「相原君?聞いてるの?」
川田先生が呼ぶ声が微かに聞こえた。
「え、えっ?」
「相原君、宿題は?」
「え、あっ…」
慌てて鞄の中をまさぐる。しかしそれも虚しく、宿題のノートはその中にはなかった。
「ふう…また忘れたのね。じゃあ今回も廊下に立っててもらいます」
「ええっ!?」
「ちゃんとやってくるように、って念を押してたはずなんだけどな」
川田先生にため息混じりに皮肉られた。
「す、すみません…」
「はい、それじゃ相原君は廊下で頭を冷やしてきなさい」
仕方なく、席を立って廊下に出ることにした。
「他に忘れた人は?」
クラスの誰からも手が挙がらない。
(どうせ僕一人だろうな…)
諦めて教室のドアを開けようと手をかけた瞬間…
「先生…私も…忘れました」
(えっ?)
「えっ?星乃さんも?」
「はい…」
冗談だろ、と耳を疑った。
「意外ねー。あなたが2回も宿題を忘れるなんて」
「すみません…」
「…仕方ないわね。あなただけ教室に残しておくわけにもいかないから、廊下で反省して」
「はい…」
星乃さんが席を立つのを見ると、僕はドアを開けてそそくさと廊下へ出た。


後を追うように、星乃さんは廊下に出てきた。
「ど、どうしたの?」
「うん、ちょっと家に忘れてきたみたい…」
驚く僕に、星乃さんは苦笑いを浮かべながら理由を話してくれた。
「そういえば、2学期の最初もこんな感じだったわね」
「そうだね」
二人が初めて話したときのことを思い出す。
宿題を忘れて、二人で廊下に立たされた。
あの時は星乃さんの目の前で倒れて保健室に運ばれたんだっけ…恥ずかしかった。
でも、倒れたから星乃さんと知り合えたんだ。
「あの時は本当にありがとう」
「ううん、こちらこそ」
笑顔で返してくれる星乃さん。
「それにしても、誰もいなくて静かね」
「授業中だからね」
「クスッ、そういえばそうね」
教室の先へと続く廊下をちらりと見ながら、二人でたわいもない会話を小声で交わす。何だか新鮮で、面白かった。
「…相原君」
「何?」
星乃さんは急にしんみりした表情を浮かべた。
「…私を、抱きしめて…」
「…ここで?」
こくりと頷く彼女。
誰もいない二人っきりの廊下。教室の磨り硝子の窓は閉まっている。見られることはまずない。
それなのに、誰かに見られたらどうしよう…そんな不安が頭をよぎる。
僕の馬鹿。意気地なし。
「私、相原君と離れたくない…」
「星乃さん…」
「我儘なのはわかってる…でも…」
哀願するような潤んだ瞳で、星乃さんは僕を見つめた。
「…もう、それ以上言わなくていいから」
星乃さんの気持ちを、僕が受け止めなくてどうする。
僕は星乃さんの背中に手を回し、おもむろに体を密着させた。
「あ…」
僕が星乃さんを抱きしめると、呼応するように彼女はか細い腕に力を入れ、僕を抱きしめる。
映画のワンシーンのように、僕らのいるところだけが別世界のような感覚をただ味わう。
「ずっと、こうしていたい…」
「私も…」
教室では授業中ということも忘れ、二人で互いの温もりを感じ合った。
制服の胸のあたりにじわりと熱いものが滲みるのを感じる。
それがとても切なくて、彼女の髪を撫でながら抱いている腕にありったけの感情を込めた。
「…ごめんね、いきなり『抱きしめて』なんて言って…」
僕の腕の中で、星乃さんは囁いた。
「私、昨日ずっとあなたのことばかり考えてたの…。それで…眠れなくて…」
「……」
直感でそれが廊下に出てきた本当の理由なんだとわかった。宿題を忘れたんじゃないんだ。
「今日の放課後、一緒に帰れない…かな?」
言葉では言えない。けれど、僕も淋しい。だから、星乃さんと一緒に帰りたかった。
「ええ、嬉しい」
少しでも長く二人で一緒にいたい。それはお互い同じだったのかも知れない。
彼女は二つ返事で返してくれた。
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SS書き5年目。

『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
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