キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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2人の廊下 -15-

星乃さんの家は二階建ての一軒家で、玄関のそばには植木鉢がたくさん置かれている。おそらく星乃さんが育てているんだろう。
「相原君、上がって」
「おじゃましまーす」
シーンとした家の中に、2人の階段を上る足音だけが響く。
星乃さんは僕を部屋に案内するなり「ちょっと待ってて」と言い残し、下へ降りていった。
女の子の部屋。妹の部屋すら見ることのない僕は、初めて体験する空間だった。
淡いブルーや水色で装飾られ、落ち着いた雰囲気の彼女の部屋。本棚にはぎっしりと文庫本が詰まっている。
「お待たせ」
入ってきた星乃さんは紅茶の入ったティーカップと一緒に分厚い本を持っていた。
「それってアルバム?」
「ええ。恥ずかしいけど」
すこし赤面しながら、僕にアルバムを渡してくれた。
淹れてくれた紅茶を飲みながら、一ページずつゆっくりとめくってみる。
涎掛け、ベビー服、幼稚園の制服…どれもかわいかった。
(…ん?)
アルバムの真ん中あたりで僕は手を止め、目を疑った。
小学校の運動会の集合写真で、見覚えのある紋章が写真の背景に写っている。
さらに眼を凝らして見てみると…今度は見覚えのある顔がいくつも出てきた。
小・中と一緒だった僕の友人が写っていたのだ。ということは、さっき見た紋章は小学校の校章…?
(まさか…星乃さんは僕と…小学校が同じ?)
さらにページをめくる。すると…遠足の写真で明らかに誰とわかる顔があった。
僕が写っている…。隣には前髪の脇でゴムを巻いた女の子…しかも、手を繋いでいる…。
(こんなことって…ありなのか!?)
心の波は一気に荒れ、もう冷静ではいられなかった。
「この写真って、どの子が星乃さん…?」
真実を目の当たりにした僕は、確認するようにおそるおそる彼女に話しかけた。
「私?…えっと…これ…」
彼女も勘づいたのか、写真を指す指が震えている。その指の先が指していたのは、僕と手を繋いでいる女の子…。
(そんな…馬鹿な…!)
記憶の引き出しが、自ら音を立てて一斉に鍵を開け始めた。


星乃さんは小学2年の時、僕と同じクラスだった。
遠足の班で一緒になって、手を繋いで先生について行った。帰りに丘の上公園で遊んだ。
滑り台から降りられなくなった星乃さんを助けたこともあった。
妹や幼なじみのお姉ちゃんと一緒に4人で帰ったこともあった。
でもその年の夏、クラスの誰も知らないままひっそりと転校していた。
転校したことは人づてで聞いた。けれど、時とともに顔も名前も忘れていた。
たった3ヶ月。その記憶が、転校したその子の前で鮮明に蘇った。
まさか、自分の好きな人が自分とこんな過去を共有していたなんて…。
「相原君…」
記憶が紡ぎ出した過去に打ちのめされた僕を現実に引き戻すように、星乃さんは話しかけてきた。
「星乃さん…」
名前を呼んだけれど、他に言葉が出てこない。
「やっと、気づいてくれた…」
言葉が出てこない僕は、俯き加減に頷いた。
彼女は続ける。
「実はね、相原君にもう一つ伝えないといけないことがあるの」
「え…何?」
彼女の哀しげな表情が作り出す重い空気が部屋を支配する。
「私…転校するの」
(えっ…!!)
「それって…冗談でしょ?」
「ううん、冗談なんかじゃない。本当なの」
「そんな…」
僕は呆然とした。呆然とするしかなかった。
過去の転校を思い出したばかりの僕に、星乃さんの言葉はあまりに重すぎる。
「このこと、ずっと言わなきゃ…って思ってたんだけど、どうしても言い出せなくて…」
「…いつ、決まったの?」
冷静になろうと必死にもがく。
「夏休み…。8月にお父さんが転勤したの。今は単身赴任なんだけど、この家の売り先も決まったし、みんなで暮らそうって…」
「……」
「あなたが『友達になろう』って言ってくれた時、私…すごく嬉しかった。でも、その時にはもう転校が決まってたの…」
彼女の目が潤んでいる。でも僕はショックで気が動転しきって、頭が回っていない。
「…いつ、転校するの?」
「お母さんが、学園祭が終わるまではこっちにいていいって…」
「学園祭って…来週じゃないか!」
僕は冷静さを完全に失った。もう1週間しかないじゃないか…。
「うん…だから、早く言おうって思ってた…。けど、どうしても…言い出せなくて…」
「星乃さん…」
「…ごめんなさい…」
謝りながらすすり泣く彼女に、僕は何もしてあげることができなかった。
好きな人は小学校の同級生、という過去。
好きな人が転校する、という現実。
どちらも僕にはすぐには受け入れがたいものだった。


…でも、こうやって悲しんでも、星乃さんは決して喜ばない。
僕は泣いている彼女を、そっと抱き寄せた。
「あ…相原君…」
僕は星乃さんのことが好きだ!!心の中でそう叫んだ。
「星乃さん…転校するまで、できるだけ一緒にいたい」
「……うん」
「僕は…星乃さんのことが好きだ」
「……」
星乃さんは何も言わず、僕の肩に寄りかかり、目を瞑った。
「ありがとう…嬉しい…」
頬に流れる結晶を彼女は手の甲で拭き取ると、瞑った目を少しだけ開き、僕を見つめた。
「私も…相原君のことが…好き…」
「星乃さん…」
やっと聞けた。僕の心に積もり積もったモヤモヤが方々に散らばり、消えてなくなった。
抱え込んでいた疑問が、すべて吹っ飛んだ。
「星乃さん、キス…してもいい?」
感情が高ぶるのを抑えることもなく、僕は星乃さんにキスを求めた。
「…ええ」
彼女は再び目を瞑った。
涙の筋が残る彼女の顔が愛おしい。僕は彼女の肩を抱き、そっと唇を重ねた。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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SS書き5年目。

『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
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