キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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七夕。

大変ご無沙汰しておりました。
ともちゃん先生と同じ仕事をこなすようになったがために忙しいのなんのって。


でも久しぶりに書きましたよ。
今回はアマガミから。


結美と光一の話もいい加減書きたいなぁ(遠い目
+++++


「せっかくの七夕だっていうのに、あなたは私より優先するものがあるんだ…?」
口調の優しさとは裏腹な詞の般若のような表情に、純一は凍りついた。
彼が久々に感じた、詞の表裏一体の感情。
「…ごめん」
「もういいわ、さっさと行って。このろくでなし」
詞は純一に背を向け、部屋のドアを思いのままに閉めた。
閉じられた瞬間のバタン、という激しい音が詞の感情を表していることに、純一は気づいている。
しかしどうすることもできない。
―――ろくでなし、か。
純一はドアの前に立ち尽くす。そして吐き捨てるように言った詞の言葉を反芻する。
高校生活最後の夏。常に成績トップの座に君臨する詞と交際を始めてから、純一は自然と勉強のことを意識するようになった。
詞と同じレベル、とまでは行かなくても、せめて近づこう。
純一がクリスマス以来ずっと心に決めていたことだった。
定期テストで結果がどんなに悲惨でも、詞は優しい言葉をかけてくれた。
自分にとって、裏表のない詞と一緒にいられることは高校生活の中で一番の幸せ。
口には出さずとも、その自覚が純一にはあった。
補習、という憂き目に遭うまでは…。
「…まだいるの?」ドアの向こうから詞の声が聞こえる。
さっさと行きなさいよ、という意味だろう、と純一は思い、鞄を手に取った。
やれやれ…せっかくの七夕なのに。純一も詞と同じ思いだった。


(もう、どうしてこんなときにあの人の古典の補習なのよ、バカ)
部屋に一人きりになった詞は、恋人に補習を課した教師を責めた。
同時に、自分の力が足りなかったことを恥じた。
テスト前になると、毎日のように互いの家でテスト対策をした。
評価に関わるから、と提出物を出すように急かした。
詞は自分なりに純一を支えてきた。その結果が、34点。
目標としていた75点の半分にも満たなかった。
同じテストを受けた詞の点数が94点。
逆方向に遠ざかっていく恋人の姿をただ見ることしかできず、詞は心の中で悶えていた。
「ろくでなし」と純一に言ったことも、教師と自分を「バカ」と心の中で罵ったのも、その表れ。
きっと彼はしょんぼりしているのだろう…詞は学校へ急ぐ恋人を思い浮かべた。
私は部屋の中でひとり。彼がいなければ、心にすきま風が吹く。
この風を、早く帰ってきて止めて欲しい。
七夕の伝説に出てくる織姫さながらの深い想いを抱えながら、詞はベッドに横たわった。


(どうしてこんなときに補習を入れるんだ、もう)
悶々とした感情を抱えながら、純一は他の対象者とともに机と黒板を交互に見つめていた。
教壇に立つ教師は、子守唄を歌うようにのんびりと講義を進める。
その子守唄につられて眠りに落ちていく者を尻目に、純一は眠気覚ましになるものを探そうと筆箱の中を漁ってみる。
当然そんなものが筆箱にあるはずもなく、純一は小さく溜め息をついた。
何とか古典は理解したい。でも、眠い…。でも…。
輪廻のように頭の中をいろいろな思考が回っていく。
大学受験、それも有名大学を受験するときに古典は必須。
詞と同じ大学に行く。だからこそ、詞を置いてでも補習を優先させている。
早く補習を受け終わって、急いで詞のもとへ…。
「橘、この部分の書き下し文を答えなさい」
「え、あ…」
「聞いてなかったのか」教師の鋭い言葉が純一の耳をつんざく。
「す、すみません…」
純一は立ったまま俯いた。
叱られることを覚悟した。
「橘、『牛郎織女』という漢文を知ってるか」
教師の発した言葉は、意外なものだった。
「ぎゅうろうしきじょ?」
「七夕に関する記述がある中国の古典だ。また調べておきなさい」
「は、はぁ…」
当てられたと思ったら何なんだ…。
瞬間的に緊張していた純一の全身が、今度は一気に弛んでしまった。


(ぎゅうろうしきじょ…)
随分と重苦しい名前だな…と思いながら、純一はいったん自宅に戻り、パソコンを立ち上げた。
ネットなら、何かが見つかるはずだ。検索エンジンを使い、教師が言っていた文献を探す。
ISDN回線の遅さに辟易しながら、ようやく表示されたページ。
(…本当か!?)
純一はそのページを見て驚いた。
七夕、それも織姫と彦星に関する記述が詳細に述べられていた。
ページを読み終えて純一の頭に真っ先に浮かんだのは詞のことだった。
純一は詞の家へ自転車を走らせた。
「遅いわ」
明らかに不機嫌そうな詞の表情を見ながら、純一は詞の部屋に入る。
「今日は何の日か、わかってるわよね」
純一は小さく頷く。
「七夕だ」
「そのとおりよ」
硬い表情が少しばかり柔らかくなる。
「詞」
「何?」
「織姫と彦星は、年に1回しか会えないんだよな」
「それが、どうかした?」
「これが中国の古典から来ていることは知ってるよな」
「ええ、授業で先生が言ってたから」
「じゃあ、『牛郎織女』は知ってるか?」
「え?」
どうやら詞も初めて耳にする言葉らしい。純一は繰り返し、「ぎゅうろうしきじょ」と口に出した。
「織姫と彦星の話だよ」
「…今更何よ」
「年に1回しか会えない彼らと比べて、いつでも会える僕たちは幸せだよな」
「何?どうかしたの?」
いぶかしげに見つめる詞を横目に、純一は続ける。
「僕たちは、会おうと思えばいつでも会える」
「……」
「そのこと自体が幸せなことなんじゃないかって、七夕のことを考えて改めて思ったんだ」
「…純一くん」
つり上がっていた口元が下がり、表情がさらに柔らかくなった。
「今日は、ごめん」
「…私こそ」
詞の気持ちの壁がようやく下がったことを、純一は実感した。


どちらからともなく近づいて、肌を触れ合わせた。
詞の頭が、純一の胸で震えていた。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

いつも拝見させていただいてます。
私は主様の書かれているssがとても好きです。私事ですが4月に恋人と別れまして…このssのような素敵な恋をまたしてみたいなぁ、とよく思います。

主様新しいお仕事忙しいと思いますが影ながら応援させていただきます。
ノンビリで結構ですのでまた素敵なssを…心よりお待ちしていますm(_ _)m
【2009/07/22 01:18】 URL | ニキータ #-[ 編集]
はじめまして。コメントが遅くなり申し訳ありません。


応援いただきありがとうございます。
ゆっくりな更新ですが、SS公開までしばらくお待ちいただけると幸いです。
【2009/07/31 22:04】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]

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