キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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2人の廊下 -11-

(はあ…はあ…)
目的地に着いた僕は、そんなに長い距離を走った訳でもないのに、全力で走ったせいか息を切らしていた。
横を向くと、星乃さんも呼吸が乱れていた。
「ふう、びっくりした…」
「ほんとね…」
「一気に降ってくるとは思ってなかったから、制服がびしょ濡れだよ」
「私も…これじゃあ電車に乗れないわ」
うなだれる星乃さんに目を遣ると、濡れた制服が体に貼り付いて白の下着が透けて見えている。確かにこれだと人前には…。
(でも、ちょっとラッキー)
(…って、星乃さんの目の前で何を考えてるんだ僕は!)
湧いてくる邪心を抑えるように、僕はわざと星乃さんを視界から外して深呼吸をし、気持ちを落ち着かせることにした。
その邪心と平常心の隙間を狙ったように、星乃さんは僕に声をかけてきた。
「あ、相原君…」
「えっ?」要らぬ事を考えていたことがバレたと思い、思わず背筋が伸びた。
「手…ずっと握ってる」
(えっ?)
ただの勘違いだった。
「あ、ご…ごめん」
僕は無意識のうちに星乃さんの手を握っていた。たぶん雨が降り出した時、咄嗟に彼女の手を取ったんだろう。
慌てて彼女の左手から自分の手を離し、謝った。
「全然気づかなかった」
「ううん、いいの」
こんなふうに言いながらも、星乃さんは恥じらう素振りを見せた。やっぱり恥ずかしかったんだ。
「でも、相原君が手を取ってくれて嬉しかった」
「え?」
「私、男の人と手をつないだ事ないから、新鮮な感じがして」
「そっか」
「よかったら…また、手をつないでくれない…かな?」
「ここで?」
「…うん」
「わかった」
僕はさっき離した右手を彼女の左手に近づけ、握った。
自分の手を通して星乃さんの体温を感じる。恥ずかしいというか何というか、言葉にできない不思議な感覚だった。
僕たちは手を繋いだまま、雨が上がるまで雨宿りをすることにした。
「そういえば、こんなに本気で走ったのって久しぶり」
「そう?」
「私、運動とか走るのって得意じゃないから」
「そうなんだ。僕は毎日のように走ってるなぁ」
「どうして?」
「いつも遅刻しそうだから、走らないと間に合わないんだ」
「クスッ、そうなんだ」
笑いながら雨で濡れた髪をなびかせる星乃さん。それが風呂上がりの女性のようで妙に色っぽい。
一度抑え込んだ邪心がまた湧いて出てきそうで、僕はまた視界から彼女を外した。


そして、時々二人で一緒に空を見上げてみる。
「雨…やまないわね」
「そうだね」
「…」
「…」
待っても待ってもやまない雨。雨宿りを始めて、もう30分くらい経つだろうか。
待ち続ける二人の空間に、沈黙の時間が流れる。
でもこの沈黙は、今までのそれとは全く異質なものだった。
同じ空間に、二人っきりで、手を握って、雨宿りして…まるで恋人同士のような、甘くて恥ずかしいシチュエーション。
「こうやってるのって、まるで恋人同士みたいだね」
僕は静かに口を開いた。
「あ…うん」
星乃さんは少し俯きながら、僕の言葉に頷く。
「星乃さんは、好きな人とかいる?」
話の流れで、僕は星乃さんに訊いてみた。
「…うん。1年の時から」
「そっか…」
(そうだよな。別にいてもおかしくないよな…)
相手は誰かわからない。誰かなんて訊けない。でも、好きな人がいると聞いてショックだった。
「相原君は?」
「僕も、1年の時から好きな人がいるんだ」
「そうなんだ…」
僕の答えを聞くと、なぜか星乃さんの表情が曇った。その表情はとても哀しげで、さっきの僕の落ち込みようとは比べものにならないようだ。
星乃さんは少し時間をおいて、僕に問いかけてきた。
「…相原君、ひとつ訊いていい?」
「いいよ」
「ありがとう」
そう言うと、星乃さんは軽く口元を窄めてフーッと小さく深呼吸をし、僕を見つめた。
「…あなたは、どんな女の子が好み?」
彼女は哀しげな目をしている。今にも涙がこぼれそうだ。
「僕は、まじめで大人しい子が好き」
「え、それって…本当に?」
「うん。たとえば、星乃さんみたいな子が僕は好きなんだ」
「そうなの?嬉しい…」
曇っていた彼女の顔が一気に晴れて、満面の笑みがこぼれる。
本当は「たとえば」なんかじゃない。僕は星乃さんが好きだ。でも、彼女には好きな人がいる。複雑な想いが僕の身体中を駆けめぐった。
(でも、好きな人がいるならどうして手を握って欲しいなんて…)
「あ、雨…上がったみたい」
僕の悩みを切り裂くように、星乃さんの声が耳に入った。
「本当だ」
「雨宿りの間に、制服もだいぶ乾いてくれたみたい。これで電車に乗れるわ」
「よかったね」
「ええ」
「じゃあ、駅まで行こうか」
濡れたアスファルトの上を、二人で手を繋いだまま歩いた。
駅までの道のりで何を話したかは憶えていない。ずっと考え込んでいた気がする。
「じゃあ、また明日」
「ええ、さよなら」
駅の改札の前で星乃さんを見送り、僕は学園祭の買い出しへと向かった。
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『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
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