キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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遠い街のどこかで~17 years old~ -4-

久々にこの時間にSSを上げることになるとは…。
リアルが忙しすぎです。書く暇ないです。マジで。
今度の公開は5月確定。
のんびり、のんびりいきますよ。


どうでもいいけど最近のBGM→宇多田ヒカルにはじまりPerfume、柴咲コウときてラストはセカンドキス。
我ながらカオスだ…w
++++++++++


「ごちそうさまでした」
食器を流しに持って行き、母さんに手渡す。
ダシまで飲んだのね、と感心する母さんを横目に、僕は食卓を後にした。
うどんとそばのダシは麺の質が違うから味付けが違うというけれど、いつもの里なかのダシだった。
―――僕が違いに気づいていないだけだろうか。
(…何を考えてるんだ、僕は)
ともかく、おいしかったことは確かなんだ。
階段を上りながらダシの違いを考えることが不毛なことであることに気づいて、一人で苦笑いする。


部屋に戻ると、さっきしまったばかりの箱を取り出す。
チョコレート色の封筒のすぐそばに、時季に会わない若草色の封筒が映えて見えた。
視覚に訴えかけるその色は、はっきりとその日の記憶を思い出させる。


++++++++++


3月。
バイトを始めてやっと半年が経った。
慣れるまで随分時間はかかったけれど、那奈さんやマスターに助けてもらって何だかんだで続けることができた。
マスターにはカップの磨き方からモップがけ、テーブル拭きまでキビしい教育的指導を受けた。
厳しいことには慣れていなかった分精神的にはきつかったけれど、“星乃さんに会いに行く”という気持ちが僕を何度も助けてくれた。


「もう3月なのねー」
那奈さんが伸びをしながらカレンダーを見つめる。
今日の那奈さんはいつもとは違い、スーツを着てバックルームに現れた。
何でも“リクルートスーツ”と言うらしい。
「それがどうかしました?」
「…相変わらず、裏を読むのは苦手みたいね」
溜め息交じりに呆れられる僕。
裏を読む、と言われても何が何だかさっぱりわからない。
「この格好でわからない?」
「い、いや、全然…」
「私、就職活動してるのよ」
あっ。
どうりで最近シフト表に那奈さんの名前がないわけだ。
「やっとわかったのね」
「は、はい…すみません」
「いいのよ。それが光一君らしいし」
「どういう意味ですか」
「そのままよ」
意味がわからず呆然とする僕に向かって、那奈さんはクスリと笑みをこぼす。
切れ長の目が狐目のようにさらに鋭く、そして丸くなる。
この表情は男受けするな…と弟に似て整った那奈さんの顔を見て思う。
僕には星乃さんがいるから、惑うことはないけれど。
「そういえば、どこ行くか決めてるんですか?」
「うん、一応ね」
「どこですか?」
「そんな無粋なことは聞かないの。でも、いいところは狙ってる」
「そうなんですか…」
不敵な笑みが好奇心をくすぐる。
―――カチャリ。
外からノブに手をかける音がすると、買い出しに出ていたマスターがバックルームに戻ってきた。
腕には買い出しの成果を示すように大きな茶色の紙袋を抱えている。
「那奈、ぼちぼち行かないといけないんじゃないか?」
「そうですね。それじゃ、そろそろ」
「こんにちは~」
那奈さんが鞄に手をかけたところで、カランカランと表のドアの鐘が鳴る。
聞き覚えのある声だ。
「あ、摩央ちゃん。どうしたの?」那奈さんが真っ先に部屋を出る。
「那奈さんと美容院に行こうと思ったんだけど、どうかなーって思って」
「あら、もう準備を始めるのね」
「『善は急げ』、だからね」
摩央姉ちゃんは右腕で力こぶを作りながらこう言い切った。
2月の大学入試で超難関大学の英文学科に合格して、すっかり大学生モードらしい。
半年前まで『ジンマシンが出る~』と教科書を嫌っていた人とは思えない。
「でも、なんでわざわざここまで?」
「さっき美容院に寄ったら『私と那奈さんの時間が重なってる』って言われたから。それで」
「それなら話は早いわね」
女二人の会話。
ついていけない僕は、一人取り残される。
できることはただポカンとして見つめることのみ。
「光一、『いってらっしゃい』は?」
「あっ、いってらっしゃい」不意をつかれ反応が遅れる。
「…気持ちが入ってない」
「…ごめん」
鈍い反応をすぐに咎められる。
今のは反則だろ…と愚痴を心の中でこぼしつつ、見送りがてらドアを開けた。
「美容院…か」
「女は大変なのよ~。彼女がいるんだから、気を回してあげなさいよ」
「摩央ちゃん、またあの“チェック”してる」
「…あ」
摩央姉ちゃんはぽかんと口を開け、その口を気まずそうに右手で覆った。
どうも無意識のうちに“チェック”していたらしい。
「じゃあ、行ってきまーす」
「お店、よろしくね」
二人の影が消えてから、僕は店に戻って掃除とカップ磨きに精を出した。


「光一、上がっていいぞ」
最後のお客さんが精算をして帰った後。
マスターに言われてバックルームに戻り、ポケットから携帯を取り出す。
『未読メール 1件』
クリックしてメールを開けると、特別なフォルダにカーソルが合った。
自然と口元が弛む。
携帯を持ち始めてからも時々家の電話で話していたけれど、最近はメールをするようになった。
お互いの家の電話代がとんでもないことになったためだ。
子機だからどれだけ話そうと気づかれない、とは限らない。
嘘をつき通せるはずもなく、明細を前にあっさり降伏するしかなかった。
おかげで旅行代の半分が飛んだ。
―――でもその分だけ星乃さんと話せた、ということだ。
好きな人との時間をマイナスに捉えるなんて、裏切りにも程がある。
「明日、行くんだろ?」
「はい」
片付けを終えたマスターが声をかけてきた。
「気をつけてな」
「…はい」
明日は土曜日。
明日になれば、彼女に会える。
「お疲れ様でした!」
自転車をこぐ足に力が入った。


++++++++++


春になった、とはいってもまだ寒い日はなくならない。
三寒四温、とはよく言ったものだ。
朝起きて肌寒さを感じた僕は、冬仕様の厚着で彼女のいる街に向かった。


寝起きにしては随分読みが鋭かったらしい。
蛍ヶ浦に降り立つと、すでにカイロがいくつあっても足りなくなっていた。
(うう…寒い)
カイロ代わりに手に熱いお茶の入ったペットボトルを包む。
12時を過ぎたところだというのに一向に上がらない気温。
時折雪の混じる風が吹くのを見ると、季節を間違えたような錯覚に陥る。
「おまたせ」
体を冷やさないようお茶をちびちび飲みながら待っていると、待ち人は現れた。
前と同じ、クリーム色のコートとブーツ。
長く風邪を引いていたからか、前会った時よりいくらかほっそりしているような印象だった。
髪の毛も少し短くなっているせいかもしれない。セミロングからボブカットっぽくなっていた。
「先月は…ごめんなさい」
「謝らなくていいよ。星乃さんは悪くないんだから」
悪いのはインフルエンザウイルスだ。
星乃さんが罪悪感を感じることはない―――そう言っても彼女は「自分が悪い」と思ってしまうのだろう。
それが、彼女のいいところではあるんだけれど。
「でも、そのかわり…」
「そのかわり?」
「今日は僕に付き合ってくれない?」
「え?」
「一緒に行きたいところがあるんだ」
考えているのは先月下見した場所。
1月に会ったときにどこに行くか決めるだけで時間を費やしたことが悔しかった。
だから、自然と場所探しに力が入っていた。
「どこなのか、楽しみにしてて」
「ええ」


駅からバスに乗り、山道をくねくねと曲がった先に目的地はあった。
歩いて行ける距離にめぼしいものがなかったから、思い切って遠出をすることにした。
「ここは来たことない?」
「ええ。学校や家とは反対側だから」
「そっか」
辿り着いたのは蛍ヶ浦山。
輝日南でいうなら輝日南山、と言えばいいだろう。
輝日南山と同じように中腹の地点で市街地がよく見える。
「寒くない?」
「ええ、私は大丈夫。だいぶここの寒さにも慣れてきたし」
「そっか。うう…寒い」
周りにはまだ雪が残っている。
持っていたペットボトルはすっかり冷めてしまった。
自販機を見つけ、ホットドリンクを買う。
でも自分の分を買うだけじゃあんまりだから、星乃さんにもホットドリンクを買ってあげた。
ありがとう、と顔をほころばせる彼女の姿がいとおしい。
バス停のベンチに腰掛け、二人横並びに座った。
次のバスは2時間先までない。
車の通りも多くない。バス停自体が小さなロータリー型になっていて、本道からベンチは死角。
だから、ほとんど邪魔が入ることはない。
我ながら、よくここまでリサーチをしたものだ。
「これ、ずいぶん遅れちゃったけれど…」
座るとまもなく、星乃さんは小さな紙袋を取り出した。
「相原君のために、いつもより頑張ってみたの」
照れ隠しになっていない下がり眉の表情を浮かべ、僕にその袋を手渡す。
開けてみて、という彼女の言葉に促されて袋を開ける。
(……星乃さん)
まさかとは思ったけれど、本当に作ってきてくれるなんて。
「あ、ありがとう」
表面に僕と星乃さんの似顔絵が可愛く描かれたチョコレート。
ポッと湧いたムズガユイ感情をこらえきれず、チョコから顔を背けてお茶を飲む。
嬉しいのに何だか照れくさい。この感情はどう表せばいいかわからない。
どうかした?と訊かれても「なんでもない」と答えるしかなかった。
「…変な相原君」
そう言いながらも僕に微笑んでくれる。
星乃さんはいつも優しい女の子だ、と改めて思った。
「それにしても意外だったなぁ」
「え?」
「インフルエンザなんて星乃さんらしくない、って思った」
「そう?」
「ほら、星乃さんって何をするにも丁寧だし、注意深いし」
「そう、かな?」
訝しがる彼女の前で大きくひとつ頷いた。
「でも、星乃さんも人間なんだって思った」
「…クスッ」
「ど、どうかした?」
笑う理由がわからずうろたえる。
「今日の相原君、やっぱり変」
「え?どこが?」
「…ふふっ、なんでもない」
今度は彼女が「なんでもない」。
「…ぷっ」
「…ぷっ」
どうやら同じことに気がついたらしい。
「恋人になると仕草が似てくるって言うけど、本当みたいだね」わざとらしくポリポリと頭を掻く僕。
「…うん」相手は頬をほんのり染めながらボトルのお茶をすする。
お互いがお互いを見つめているから、そして繋がっていると思い合っているから起こる現象。
少なくとも、僕はそう思うことにした。
「相原君」
「何?」
「今日は、来てくれてありがとう」
「そんな…僕こそ、チョコを作ってくれてありがとう」
「……」星乃さんは恥ずかしそうにまた眉を下げる。
「星乃さんには、何て言っていいかわからないくらい感謝してる。ずっとバイトを続けてこれたのは星乃さんのおかげだし」
「そんな、私は…」
「いや、星乃さんが思っている以上に僕は星乃さんを好きなんだ、きっと」
「……」彼女の口からまた言葉が途絶えた。
「これからも、僕は星乃さんを支えにして生きて行きたい…って、ちょっと度が過ぎたかな」
「相原君…」
僕を見つめる彼女の目が、潤んだ。
「どうか、したの?」
「ううん、嬉しいの…。嬉しくて…嬉しくて涙が…」
涙を拭う姿が切なくて、もらい泣きしそうになる。
僕は星乃さんを頼りにしている。そして、彼女も僕を…。
そっと彼女の肩に手をかける。
「顔、上げて」
彼女が声に反応したその刹那、僕はすり寄って彼女の頬にキスをした。
ほんの少ししょっぱい、2ヶ月ぶりのキス。
一瞬驚いたようにピクッと震えた彼女は、やがて身を委ねるように僕にもたれかかった。
僕はその肩を強く抱いた。
「私、もっと甘えていい?」
「…うん」
肩を抱いていた手で頭を撫でてあげる。
僕が星乃さんのそばにいる。できる限り、ずっと。
そんな思いを手に託した。


やがて2時間。
駅に戻るバスが折り返してきた。
それは、二人きりの時間の終焉を知らせる合図。


バスには僕たち2人だけ。
一番後ろの席に座り、手袋を外して互いの手を素手で握り合う。
彼女の手の感触にもだいぶ慣れてきた。
「離れるのがもったいないね」
「…うん」
このまま二人でどこかへ行ければいいのに…。
重ね重ね“遠距離”の壁を感じずにはいられなかった。
駅に着いても、僕は彼女の手を離そうとは思わなかった。
改札で別れるのがこんなに辛いなんて、思わなかった。
「さよなら」を言うのが、怖くなった。


++++++++++


「さよなら」の重さを知ったあの日。
以来、僕はさよならとあまり言わなくなった。


いつだったか「『さよなら』はまた会うための約束の言葉」だと星乃さんに教えてもらった。
でも、まだ僕には彼女の言葉を理解するのに時間がかかるらしい。
「お兄ちゃ~ん、なるちゃんが来たよ~」
菜々の声がした。
初詣に行くために、なるみちゃんは菜々の部屋で外泊をすることになっている。
(初詣、か)
もうすぐこの年とも「さよなら」だ。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

待ってました!!最新作!!
お疲れ様です。
早速読みました。甘酸っぱいです。
この先の展開がやはり楽しみです。
【2008/04/19 18:16】 URL | 子龍 #V4rYaZBU[ 編集]
お久しぶりです。

まさかコメントつけられなくなるほどになるとは思ってませんでした(汗
【2008/05/19 23:59】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]

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