キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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2人の廊下 -9-

(あぁ…馬鹿だ、馬鹿だ…)
星乃さんに口走ったあの一言が頭から離れず、後悔の念だけが洪水のように押し寄せてくる。
高校に入ってからまともに女子と話す機会がなかったにせよ、これだけ馬鹿なことをしたら普通は逃げられる。
明日からどうしよう…天国と地獄は紙一重。隣の席という至福ともいえる喜びがこれ以上ない苦痛に転じた。
自分が作り出した真っ暗な明日に不安になり、一晩じゅう頭を抱えながらベッドの上でもだえた。
翌日。考える気力を使い果たし、魂が抜け落ちたような感覚のまま学校に向かった。
星乃さんと顔を合わせるのが辛い。もし会ったら何て話しかけたらいいかわからない。でも隣の席だから、顔を合わせないわけにいかない…。
これから待ち受ける恐怖にビクビクしながら、僕は教室に入った。
星乃さんはすでに席に座り、1人窓の外を見ながら佇んでいる。僕は彼女に気づかれないよう、そっと席にたどり着き、座った。
そして鞄を机にかけた瞬間、僕は机に突っ伏して彼女の顔を見ないようにした。
星乃さんの顔を見るのが怖い。ただそれだけだった。


「あ、相原君…もう来てたんだ」
(えっ…?)
まさか彼女が話しかけてくるなんて。咄嗟に僕は顔を上げ、星乃さんの方へ目を向けた。
「あ、星乃さん…お、おはよう」
ドキドキして上手く舌が回っていない。
「き、昨日は…変なこと聞いてごめん」
「あ…ううん、別にいいの。相原君の困った顔、見たくないから」
「え、あ…そっか」
「だから、気にしないで」
「うん…わかった」
(…あれ?何かおかしいような…)
不思議な感情が全身を包んだ。てっきり嫌われたと思っていた僕は、星乃さんが普通に接してくることに違和感があった。ありすぎた。
あんなことを聞いたのになぜ…頭の中をクエスチョンマークがぐるぐる回り、寝起きの回っていない頭を刺激する。
(…これは…夢…!?)
きっと嫌われた、という思い込みが星乃さんの優しい言葉を無機質なものに変換している。
「気にしないで」と言われても、その言葉を今ひとつ信じ切れない自分がそこにいた。


放課後。僕は星乃さんのいる図書室に向かった。
どうしても理解できない「気にしないで」という一言。「困った顔、見たくないから」という言葉。
柊や友人の昼食の誘いを断ってまで考えても、一向に答えは見つからなかった。
答えを知るのは…星乃さんただひとり。わからないなら直接聞くしかない。これが僕の結論だった。
今日の星乃さんは図書カウンターで受付の仕事をやっている。
「星乃さん」
姿を見つけた僕は、彼女に声をかけた。
「あ、相原君。どうしたの?」
「う、うん。ちょっと星乃さんに聞きたいことがあって…」
「ひょっとして本のこと?」
「い、いや、そういうわけじゃなくって…いま時間があったら、ちょっと二人になれるところへ行かない?」
「え?い、いいけど…」
僕の誘いに怪訝そうな表情を浮かべる星乃さん。
「じゃあ、ちょっとついてきて欲しい」


僕は星乃さんを連れて、屋上に向かった。
「相原君、聞きたいことって…何?」
屋上に着くとまもなく、星乃さんから僕に訊いてきた。
「朝、星乃さんが言ってたことなんだけど、どうしてもわからない。なぜ星乃さんがあんなことを言ったのか」
「あ…あれはその…」
「その…?」
「ううん、何でもないの」
「何でもないって言われると、余計気になっちゃうよ」
「う、うん。でも…」
星乃さんは言葉を詰まらせた。その詰まらせ方があまりに不自然で、僕は気になって仕方がなかった。
しばらくの沈黙。お互いの目は時々目線を外しながら互いの方向を向いている。
僕はこの沈黙を破るべく、攻めの姿勢に入った。
「そして、もう一つわからないことがある」
「もう一つ?」
「星乃さんが普通に僕に接してきたこと。僕はてっきり嫌われたと思ってた。だからどうしても星乃さんの言葉や行動が理解できない」
「嫌うなんて…そんな」
ようやく星乃さんは重い口を開いた。
「私は相原君のこと、嫌いだなんて思ってない。キスの話はびっくりしたけど、男の人と仲良くなるのってこんな感じなのかな、って…」
「え?」
「私、男の人のことよく知らないから…」
「そ、そっか」
…意外な答えだった。僕は彼女に嫌われてはいなかった。正直なところ、ホッとしたという表現以外に言葉が見つからない。
「それじゃあ、これからも友達でいいってこと?」
「ええ」
「そっか…よかった」
僕の思い込みとは正反対の方向に事は進んでいく。
僕の「嫌われた」という思い込みはめでたく星乃さんの言葉でかき消されていった。


「そろそろ図書委員の仕事に戻るわね」
「あ、うん。呼び出したりしてごめんね」
「ううん、相原君と話せてよかったから」
「それじゃ」
「ええ」
星乃さんを図書室まで送り、僕は学校を後にした。
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