キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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遠い街のどこかで~17 years old~ -1-

約1年置きっぱなしの長編でしたが、やっとこさ再開の目処が立ちました。
今回からは「北風の吹く夜」とは異なる状況を作って結美の17歳の誕生日を扱ったSS。


ちなみに。
タイトルを検索するとあることがわかります。




アニメレビューは気が向いたら書く方向で。
今週は華麗にスルー。
++++++++++


机の中に潜ませていた箱を取り出して、幾重にも重ねられた封筒をばらす。
それぞれに入っている便箋を丁寧に取ると、逆さに見える字から彼の存在を感じる。
手紙のやり取りをもうどれくらいしたのだろう。
青、黄緑、赤…季節に合わせた色とりどりの封筒が気がつけば箱いっぱいになっていた。
輝日南の街にさよならを言ったのが1年前。
蛍ヶ浦にやってきたのも1年前。
そして彼と遠距離恋愛を始めたのも、1年前。
その日から暦はひと回りを重ねた。
私は受験生になり、彼もまた受験生になった。
―――光陰矢のごとし。
ふと呟いてみる。
本当に1年前のことが昨日のように思えるのだから。


**********


年が明けてすぐ、相原君は私の誕生日のために来てくれた。
修学旅行以来、数週間ぶりのデート。
夜10時過ぎの電車で来た彼は近くのホテルに泊まり、一夜を過ごすことを決めていた。
「遅くなってすみません。予約していた相原ですが」
「相原様、お待ちしておりました。“例のもの”をすぐご用意いたしますので、先にお部屋をご案内いたします」
ホテルのフロントの人は遅い時間なのに愛想よく私たちに接してくれた。
例のもの、という言葉。
駅からホテルに来る道中で「サプライズ」と彼が言った誕生日プランだとすぐに気づいた。
平日で授業があるはずの彼が来てくれたこと自体がサプライズなのに、彼はいたって自然体。
ホテルに入ってからもそれは変わらなかった。
「さ、入って」
彼に誘われるまま部屋に入って荷物を置き、程なくトントンとドアをノックする音が聞こえた。
「お待たせいたしました」
運ばれてきたのは二人で食べ切れそうなほど小さなスポンジケーキ。
中心に太いロウソク。中心を囲むように7本の細いロウソクが立てられ、それをさらに囲むようにしてチョコレートクリームで私の名前が入れてあった。
「星乃さん、誕生日おめでとう」
「…ありがとう」
薄暗い部屋の中で静かにハッピーバースデーが奏でられた。
私の隣に座った彼は狙っているかのように時々音を外しながら歌っていて、少し可笑しかった。
歌い終わると彼は私の頬にキス。
「あっ…」
暗かったし油断していたから、反応がつい大きくなる。
「どうかした?」
「う、ううん…なんでも、ないの」
平静を装おうとするけれど、やっぱり無理。
好きな人からのキスが嬉しくないわけがないのだから。
「じゃあ、切ろうか」
「う、うん」
二人でロウソクを抜いて目の前にあったケーキナイフで切ろうとすると、彼は「僕が切るから」と私を制してナイフを取った。
ナイフを取られるときに手が触れてどきりとする。
彼は刃を入れて真っ二つに切り終えると、今度はお皿に盛り付けまでしてくれた。
「今日は何もできなくてごめん。だから、せめてこれくらいはさせてほしかったんだ」
「相原君…」
彼なりの優しさが身に沁みて、昂ぶる気持ちをもうこらえ切れなかった。
小さく半円を描くケーキがぼやけて見えた。
コトン、という音をさせて真っ白で四角いケーキ皿とフォークが添えられる。
「星乃さん」
「何?」
「口、あけて」
「…えっ?」一瞬彼が何を考えているかわからず戸惑う私。
でも、彼が私のフォークでお皿の上のケーキを切ったとき、次に何が起こるかわかった。
「相原君、私…」
「恥ずかしい?」
「……うん」
彼の気持ちに対する心の準備ができていなかったことを悔やんだ。
そして残念そうにフォークを置く彼を見ると、心が痛んだ。
「やっぱり、してもらおうかな」
「……」
彼の悲しい顔は見たくない。
そこで私は彼と恥ずかしくないように目を瞑る、という約束をしてケーキを食べさせてもらうことにした。
ゆっくりと瞼を閉じる。フォークがお皿に当たる音がする。
甘い香りと冷やした食べ物独特のひんやりとした感覚が徐々に私の顔に近づいてくるのを感じる。
やがて鼻のすぐそばで生クリームの匂いがして、冷たい固まりが口の中に収められるのを感じ取った。
「はい、目をあけて」
「…うん」
甘いはずのケーキの味がよくわからない。
きっと味覚が麻痺するくらい恥ずかしかった。
それ以外に理由はないと思った。
お返しに私も彼の口にケーキを運んであげる。
彼も食べてみると「味がわからない」なんて私と同じことを言っていた。
「じゃあ、早く起きたほうがモーニングコール」
「うん」
ケーキの生クリームよりも甘い時間を過ごした私たち。
そのケーキを食べ終えたころには、もう時計は11時半を指していた。
このままひと晩彼と一緒にいたいけれど、それはできない。
後ろ髪を引かれる思いで部屋を後にした私は、口元をマフラーで覆って家路についた。


翌朝。
起きて携帯を見てみる。
携帯の時計は7時を指す。彼からの着信はない。
(…クスッ)
彼がどんな反応をするのか楽しみにしながら通話ボタンを押した。
通信音が5回くらいしたあとに、ピッと通話ボタンを押す音がした。
「…もしもし?」寝起きらしい腑抜けた声が聞こえる。
「相原君、おはよう」
「……おは、よう……」
どうやら私からの電話だと気づいていない様子。
それなら―――私はゆっくりと彼の記憶を呼び起こさせることにした。
「昨日の約束、覚えてる?」
「やく、そく…あっ!星乃さ…痛っ!」
電話の向こうからドスンと何かが落ちるような音がした。
「大丈夫!?」
一緒にいるわけじゃないのに、とっさに身構えた。
「起きた?」
「これで起きないわけが…いたたた…」
「…もう」
ひとつため息をつく。
それは気づいてくれなくてがっかりしたというのもあるけれど、むしろホッとしたというようなため息でもあった。
「何時にどこに行けばいいかな?」
「9時に駅で待ってるわ」
「うん、わかった」
約束の時間を決めて、私は朝食の手伝いのためキッチンに足を運んだ。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

久々の長編、つい今までのをすべて読み返してしまいました。
いやーやはり二人の仲のよさに
萌え殺されてしまいます。
お疲れ様です。
あと、キミキスのDVD2巻目買いました。もちろん特典の結美のCD目当てです。いい出来でした。
【2008/01/28 10:29】 URL | 子龍 #V4rYaZBU[ 編集]
お初にお目にかかります。
全作品読ませていただきましたが、どれも素晴らしい話ばかりですね~~('∀'●)思わずにやにやしてしまいます(*´∀`*)
自分も星乃さん好きなので、このサイト様にはたいへんお世話になっております♪これからも素晴らしい作品を期待しています!!


ちなみに、自分は高校2年です。星乃さんたちと同学年ですね。
【2008/01/28 22:24】 URL | コウ #-[ 編集]
>子龍さん
いつもどもです。
長編はすっかり2人の世界ですから、ニヤニヤできるシチュをない頭を絞って考えてますよ(笑)
にしても、買う予定のなかったアニキスDVDが欲しくなってきた…(笑)


>コウさん
はじめまして。
コメントありがとうございます。
結美たちと同い年、ということでSSに出てくるキャラクターにシンパシーを感じてもらえればうれしいです(笑)
お暇があればまたお越しください。
【2008/01/29 22:33】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]
いえいえ無い頭なんてことはないと思いますよ。これだけのものをつくっていらっしゃるんですから。尊敬の一言に尽きます。
アニキス(ガチムチの兄貴'S?(笑))2お勧めですが、2といわずに全部・・。
私はアニメイトで全巻初回版を予約してしまいました。最初の目的は消えて特典CD目的になりましたが(笑)
【2008/01/30 00:35】 URL | 子龍 #V4rYaZBU[ 編集]
久々の長編再開ですね。もう、お前ら仲良さ過ぎ!
早いもので自分もここのサイトを知って1年になります。
結美と同じく『光陰矢の如し』ですね。

昨日、TLSSと廉価版キミキス買いました。特典は例によってMacなので価値半減。TLSSは有森先輩を攻略中です。結美と同じ属性か……!
【2008/01/30 22:55】 URL | Kein #sa7XU41w[ 編集]
>子龍さん
なんだかくすぐったいです…頭の辺りが(笑)
ガチムチの兄貴’Sも面白いかもしれませんね。
いや、結構マジで。


>Keinさん
図書委員&転校属性ですね。
年上属性は有森先輩にしかないですし。
公式絵師の方もサイトで言われてるようにまったりプレイできますし、相原光一とは違った変態視点も楽しんでください(笑)
【2008/01/31 23:46】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]

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