キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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胸いっぱいの単語帳~1年後~ -2-

遅ればせながらのクリスマス編第2話。


結美の誕生日SS、間に合うかなぁ。
**********


光一の家に家庭教師に行くことで、抱えていた淋しさを解消できるようになった。
週に2回、必ず恋人の顔を見られるという保証が私を安心させている。
それに彼のそばにいることで、彼がどれだけ頑張っているかを近くで感じられる。
これが私にとって何より一番の喜び。
とはいえ、もうすぐ彼の家庭教師に就いて1ヶ月になるのに「先生」とは一度も呼んでもらえていない。
1年前は勉強を教えてもらっていた相手だから、仕方ないのもある。
あるいは光一が私を“摩央姉ちゃん”と呼び慣れたからかもしれない。
でも本音は「先生」って呼んでほしいし、本当は別の呼び方もしてもらいたい。
私が光一にだけ呼んで欲しい、あの呼び方で…。


「もうこんな時期なのね…」
12月のカレンダーを眺めて、この時期が来たんだと心を弾ませる。
付き合い始めて2度目のクリスマス。
受験生の彼には関係のないことかもしれないけれど、私はこの日を特別なものにしたい。
ちょうどイヴは休日。絶好のデート日和。
私の気持ちを伝えるには絶好のチャンスでもある。
そこで私はクリスマス直前の授業で、イブの朝に授業をすることを光一に提案した。
「ね?いいでしょ?」
「…うん」
乗り気、というにはあまりに素っ気ない返事。
勉強のことで頭がいっぱいなんだ、とそのときは思っていた。
でも、本当の理由が当日になってわかった。
しっかり勉強してからデートしよう…という私の思惑は外れる。
こんな日に限って光一の調子が上がらない。
うーん、と唸りながら頭を抱えるその姿は、少し痛々しい。
「どうしたの?」
「ここ数日、全然集中できなくて…。昨日の模試も全然出来なくて…」
見ると、シャーペンを持つ手が震えていた。
前の授業のときに気づいてあげればよかった…。
自分のことばかり考えて彼の異変に気づいてあげられないなんて…と自分を責めた。
彼に気づかれないように、感情のままに拳を強く握り締めた。
「気分転換に、外…行かない?」
完全に手が止まってしまった彼を見て、私は何かが必要だと感じた。
少し間を空けて、彼はこくりと頷いて答えた。
「じゃあ私、リビングで待ってるから」
「うん、わかった」
彼が立ち上がるのを見守ってから、私はドアを閉めて階段を下りた。
それから10分ほどしてから、彼はゆっくりとした歩みで玄関に現れた。
「今日も寒いわね」
「そうだね」
外に出ると北風が我が物顔で吹いていて、通りの並木を揺らしていた。
一番最後のデートで買ったおそろいのマフラーが風に揺れる。
「こんな風に二人で歩くのって、いつ以来かな」
「…そういえば、もう随分経つなぁ」
(……)
最後にデートしたのが家庭教師になる前。
だから、最低でも1ヶ月以上前の話。
その1ヶ月そこそこをまるで遠いことのように感じている彼の言葉が、切なかった。
受験勉強に明け暮れる生活は、彼の時間感覚を狂わせていた。
そう思わずにはいられなくて、少しだけ受験というものを憎んだ。
「それで、どこに行くの?」
「輝日南駅のあたりまで行こうかな、って」
行くなら少しでも長く光一と一緒にいられるところに行きたい。
勉強を頑張っている彼にご褒美も買ってあげたい。
それに…彼に言いたいこともある。
ゆっくりと輝日南駅に向かう道を歩きながら、彼が元気になる方法を考えた。


歩きながら考えて決めた行き先は、輝日南駅につながる商店街。
そこにあるケーキのおいしいお店に彼を連れて行こうと決めた。
通りに流れる有線ではクリスマスソングが流れていて、通り過ぎる店の佇まいもすっかり赤と緑のクリスマス一色。
「人、多いね」
「休みだから仕方ないわよ」
駅のほうに向かいながら相変わらず元気のない光一の手をぎゅっと握り、人混みを掻き分けるように私たちは道なりに進んでいった。
そして輝日南駅の改札が見えたころ、ようやく目当てのお店が見えた。
ビルの1階にあるガラス張りのお店には、人気のロールケーキを買おうという人が改札に向かって何十人も並んでいた。
私たちも冷たい風に吹かれながら、二人でその列に並ぶ。
「……」
「……」
横に並んでいる彼を見上げる。
何も喋ろうとせず、ただ前を向いて列が進むのを待っている。
景気づけに話しかけようと思った私は、口を真一文字にしている彼を見て声をかけるのをやめた。
北風の勢いは止まることなく、私たちに向かって吹いてくる。
寒さを紛らわせるため、そしてもうひとつ別の理由を作って彼のそばにぴたりと寄る。
「……」
「……」
光一は何も言わず、ただ前を向いている。
何も話そうとしないのは何でだろう―――見当のつかないことを恋人のそばで考える。
彼の顔を見ながら思案をめぐらせている間も、その彼は仏頂面のまま。
(ひょっとしたら、私…)
無理やり連れ出したのは私だし、並ばせているのも私。
彼の顔を見ているうちに彼に悪いことをしたような気がして、辛くなった。
気が重くなって周りを見渡すと、笑顔を交わすカップルが行き交っている。
ここには、会話のないカップルがぽつり。
恋人がそばにいるから寂しくはないはず…なのに、自分たちと他とを比べて寂しさを感じてしまう自分がいた。
「ほら、もうすぐだよ」
「…えっ?」
辛さと寂しさで隣にいる存在を忘れそうになったころ、誰かの声が聞こえた。
条件反射で俯かせていた顔を上げる。彼の顔には表情はなく、ただ前を向いている。
でも間違いなく、彼の声だった。
上げた顔を店の方向に向けると、こじんまりとした雰囲気の店の入り口が見えていた。
「輝日南ロールひとつ、ください」
彼が声を発したことがちょっとうれしくて、注文の声が上ずった。
“chou chou”とお店のロゴが入った橙色の紙袋を受け取り、店を出る。
私が最近お気に入りにしているロールケーキ。
これを彼へのご褒美にすることにした。
ひょっとしたら彼も気に入ってくれるかもしれない。
かすかな望みをこのケーキに託して、私は彼をこの店に連れてきた―――そんな根本的なことを忘れるほど、私は店に入るまで気持ちの余裕を失っていた。
「このロールケーキ、すっごくおいしいんだから」
「…そうなんだ」
「なによぉ、素っ気ないわね」
「…別にそんなこと」
ほっぺたを人差し指でつつく。
「ま、摩央姉ちゃん…」
「…クスッ」
ずっとひきつったままだった彼の頬の肉が緩んだ。
ちょっぴり、安心した。
「ね、公園に寄って行こ」
「どうして?」
「ちょっと、話があるの」
「でも…」
言葉を口にした彼のコートの袖を引っ張り、私は小走りに公園へと向かった。
驚く彼を引っ張りながら時計を見る。
(もうすぐ12時…)
家を出たのが11時。
お昼ごはんには戻る、と彼の両親に伝えてあるから、あまり長くはいられない。
(…決めなくちゃ)
もうひとつ予定していたイベントのために気持ちを固める。
『水澤摩央、今日一番の見せ場よ』
自分に言い聞かせて、気持ちを高ぶらせていった。
「ごめんね、無理に付き合わせちゃって」
「本当だよ」
「…もうっ」
公園のベンチに座り、ようやく戻ってきた光一の減らず口に心底ほっとする。
「あと1ヶ月なのよね」
「…うん」
いきなり本題に入るのは憚られたから、ひとまず勉強の話題を切り出した。
センター試験までは残り1ヶ月を切っている。
直前の追い込みで私は今の大学に滑り込んだけれど、彼はあと一歩が必要。
その一歩を踏み出す前にその場で地団駄を踏んでいる。
「勉強ばかりに精を出すのもいいけど、こんな風に気分転換も必要よ」
「…そうだよな。ずっと成績のことばかり考えてたから、頭がおかしくなってたんだと思う」
「光一って、変なところで考えが一本道なのよね」
「…それってどういう意味さ」
「それは、秘密」
一本道なのは何も勉強だけじゃない。
―――再会した頃を思い出す。
テラスで雑誌を読んでいた私に彼は声をかけず、逆に気づいた私が声をかけたのが始まりだった。
当時、彼にはお気に入りの女の子がいた。
でも、その子ではなく私を選んでくれた。
それは彼がその子に夢中だったのではなく単におしゃれに目覚めた私を避けていただけで、「瓶底メガネをかけた摩央姉ちゃんが好きだ」と告白されたときは驚いたなんてものじゃなかった。
コンプレックスだった『瓶底メガネ』がいい、なんて言われるとは思っていなかった。
その告白から1年と3ヶ月。
瓶底メガネで彼の前に現れても、何も怖くはなくなった。
私のすべてを受け入れてくれるのは、光一ただ一人。
幼馴染という関係から恋人という関係に発展して、より強くそう思うようになった。
今日は、その想いをひとつの言葉にしたい。
「あのさ、光一…」話題を変えるために、私は切り出した。
「何?」
聞き返されて体がゾクゾクする。
あのことを言いたいだけなのに。
緊張してるのかな、私…。
「…摩央姉ちゃん?」
「え?」
「なんだか落ち着かないみたいだけど」
「そ、そんなことないわよ」
図星。でも、光一の前でそんなことをぬけぬけと言えるわけがない。
言いたい気持ちとプレッシャーが交じり合って、頭の中が混乱する。
どっちにすればいいのか決められずもどかしい。
(摩央、あんたらしくないじゃない。すぱっと決めなさいよ)
もう一人の自分が私に囁きかける。
そのとおり。
こんなところでもたもたするなんて、私らしくない。
「ねえ、光一」
「何?摩央姉ちゃん」
「もう、摩央姉ちゃんって呼ぶのはやめて」
「えっ…」
戸惑う彼を見て、私も言葉が詰まる。
いきなりこんなことを言い出すんだから、仕方ない。
「私、光一とずっと一緒にいたいの。だからお願い。もう“姉ちゃん”って言わないで」
「……」
きっと“摩央姉ちゃん”と言いたかったんだと思う。
彼は言葉が見つからないのか苦い表情を浮かべている。
「一緒にいたいのに、ずっと“姉ちゃん”って呼ばれるの…辛いんだから」
「…ごめん」
「いつか気づいてくれるかな、って思ってたのに…」
「…ごめん」
彼はこうべを垂れて申し訳なさそうにする。
「もう、摩央チェックの効果が切れちゃったのかもね」
「『時には強引に』、だよね」
「…ちゃんと覚えてるんじゃないのよぉ」
摩央チェックはとっくに終わったはずなのに、いつの間にか光一は忘れていた。
ちょっと、切なかった。
「光一は、私とずっと一緒にいたいって思ってる?」
「うん」
「じゃあ、名前で呼んで」
私は彼の目を見つめる。
彼は私の目を見つめ返す。
「摩央」
「光一」
「…ぷっ」
「なによ、その笑いは」
「い、いや、あまりに真剣すぎてつい…」
パーン。
公園に頬をひっぱたく音がこだました。
こんなときに笑うなんて女の子に失礼、ってわかってよ。
「ごめん、摩央姉ちゃ…」
「また、“姉ちゃん”って使ってる…」
「あ、あはは…」
まだ彼の中で私は恋人であり、年上の幼馴染。
ひとつ大きなことがわかって、悲しかった。
「でも、頑張ってみる」
「ありがと、光一」
けれど、いつかきっと私のことを名前で呼んでくれる。
期待を持てる言葉を聞いて、私は安心した。
「いつかはちゃんと名前で呼んでね」
彼の前に立ち、おでこにキスをした。


時計は12時をさしていた。
「さ、早く帰らなきゃね」
彼の手を取り、戻るべき彼の家に向かった。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

早速、読ませていただきました。
いやー、あまずっぱいですねー。
ニヤニヤしっぱなしでした。
また、次も期待しています。

【2008/01/11 23:29】 URL | 子龍 #V4rYaZBU[ 編集]
ありがとうございます。
摩央姉はこうあるべきだ、というアニメへのアンチテーゼも込めながら書きましたよ(笑)
【2008/01/12 22:00】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]

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