キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

胸いっぱいの単語帳~1年後~ -1-

クリスマスSSとして公開予定だった摩央受験編のアフターストーリー。
諸事情によりプロローグだけ公開していましたが、本編の公開を新年のご挨拶がてら。


本年もよろしくお願い申し上げます。
**********


11月の終わり。
一本の電話が私の元にかかってきた。
「あ、摩央ちゃん?」
電話は光一の家からだった。
光一が受験を控えているから、家庭教師をしてほしい。
誰か雇ってもいいんだけれど、せっかく大学生の摩央ちゃんがいるんだし―――光一のお母さんからの申し出は、私にとって願ってもないものだった。
「はい!もちろんやらせていただきます!」
もちろん二つ返事。
光一と二人きりになれる時間が増えるなんて、こんなに嬉しいことはない。
今まででも勉強を教えていたことはあったけれど、最近はすっかりご無沙汰。
休日は一日じゅう模擬試験だから、ゆっくりデートも出来ない。
頑張ってることはわかっているから、あえて文句を口にしたりはしない。
けれど、「寂しい」という自分の気持ちに嘘はつけなかった。


「こんにちは」
「あら摩央ちゃん、いらっしゃい」
電話があった翌日。
彼のお母さんに迎えられると、彼の部屋ではなくリビングに招かれた。
いつもの光一の家。でも、何かが違う。
「これ、たいした額じゃないんだけど」
「え…」
ソファに座るように言われて待っていると、お母さんは茶封筒を持って戻ってきた。
「これ、今月からの月謝」
茶封筒を目の前に差し出されて、私はたじろいだ。
給料をもらうことなんて考えていなかった。
幼馴染のよしみもあるし、何より教える相手は私の恋人でもあるんだし…。
「そんな、私」両手を振りかざして拒もうとする。
「いつも光一を見てくれてるお礼よ。受け取って」
「でも私、これは受け取れ…」
「恋人がいるなら何かと入り用でしょ?」
お母さんは私の耳のそばで囁いた。
不意に胸の辺りを射抜かれたような気持ちになる。
「……」意表を突かれた私は返す言葉が見つからない。
「一応1回につき2時間で週2回。曜日は摩央ちゃんと光一の都合に合わせて自由に決めてくれていいわ」
封筒を置いたまま、契約の話を一方的に進められる。
私は頭の整理がつかないままその話を聞いていた。
「さ、早く部屋に行かないと光一が待ってるわよ」
「あっ、はい」
話し終えると何事もなかったようにお母さんは立ち上がった。
背中を押すような言葉をかけられて、私はようやく我に返る。
結局封筒を無理やりカバンに押し込まれ、私は2階にある光一の部屋に向かった。
「じゃあ摩央ちゃん、光一のことよろしくね」
「わかりました」
部屋の前。
光一に気づかれないように小声でお母さんと言葉を交わした。
「光一、言ってた家庭教師の人、来てくれたわよ」
「ああ」彼の声がする。
「さ、摩央ちゃん」
誘われるままに部屋に入る。
一歩踏み出した瞬間、立場を変えて恋人の部屋に入ることは半端じゃなく緊張する…と気がついた。
「こ、こんにち…は」緊張してる分声は小さくなり、呂律がうまく回らない。
彼は手を止めて私のほうにちらりと顔を向けると、一刹那うつむいてからまたペンをノートに走らせ始めた。
何を思っているのか、不安になる。
「もう紹介はいいわよね。それじゃ、あとはよろしくお願いね」
「は、はいっ」
お母さんは両肩を叩くとドアを閉めた。
私は律儀に背筋をシャキッと伸ばし、担当する生徒に近づいた。
改めて見る恋人の姿。
机いっぱいに参考書を広げちらちらとそれを見ている光一の目は、いつもの彼とは違っている。
場違いなところにいるんじゃないか、という錯覚に陥りそうなほど彼はピリピリとした雰囲気をかもしている。
「よ、よろしくね」
喉から無理やり声を押し出すように、私は話しかけた。
「やっぱり摩央姉ちゃんか…」
一方の彼は私の顔を見るなりこう呟いた。
「何?その不服そうな言葉は」
光一の言葉に棘を感じた私は、すぐに問い詰めた。
「い、いや、そういう意味じゃなくて…」
「じゃなくて、どういう意味よ?」
「それは…」
「それは?」
言いかけていきなり口ごもる彼。
声の途絶えた部屋にヒーターの音と外の雑音が混ざって響く。
その部屋には俯いたままの彼と、それを見つめる私。
…じれったい。
言うならさっさと言ってよ―――叫びにも似た言葉が頭を駆け巡る。
「実は…摩央姉ちゃんだったら嬉しいな、って思ってたんだ」
「…光一…」
時計の長針がひとつ進んだころにようやく彼は言葉を口にした。
「本当に?」
念のため問いただす。
すると彼はひとつ小さく首を縦に振った。
全身から力が抜けた。と同時に、ふつふつと沸きはじめていた怒りの感情は喜びに昇華していった。
目の前で嬉しいことを言ってくれる光一が何だか愛おしかった。
「ありがとっ」
そう言って彼の首に抱きついた。その拍子にほっぺたにキス。
「ちょ…」とうろたえる彼を見て心の中でニヤリとする。
「ねぇ、少しだけこうしてていいかな」
「い、いま勉強ちゅ…」
振りほどこうとする彼の腕にしがみつく。
しばらく会ってないのにそっけない態度を取られるのは淋しいから。
淋しかったんだからね…そんな気持ちをこめて思いっきり腕を握り締めた。
「離してくれよ。勉強できないってば」
「…もうちょっと」
「家庭教師なんだろ、摩央姉ちゃん」
「んもう、しょうがないわね」
確かに私は恋人ではなく家庭教師としてここにいる。
それを忘れちゃいけないけれど、久しぶりに逢えたんだから少しくらいいいじゃない。
恋人に甘えられないのって、結構つらいんだから。
離れながら、胸に秘めていた想いが言葉となって次から次に浮かんできた。
「…コホン」未練を吹き飛ばすようにひとつ咳払い。
「今日からは『摩央姉ちゃん』じゃなくって『水澤先生』って呼んでよね」
「…プッ」
「何よぉ、吹き出すことないじゃない」
彼の頬を指でつつきながらわざと甘ったれた声で怒ってみる。
すると彼は「あ、いや…」と視線をあちこちに逸らしながらおろおろしていた。
(…相変わらず、こんなところは変わらないのね)
変わらない恋人の姿を見てホッとする。
「まあいいわ。そろそろ始めましょ」
自分を取り戻し始めた私は、家庭教師としての初仕事に取りかかった。


彼に苦手な分野を聞いて私が解説し、問題を解いてもらう。
それを繰り返しているうちに、もう2時間が経とうとしていた。
時間が進むにつれ、家に入ってきたときに感じた違和感はなくなっていた。
いつも見る光一の部屋。雰囲気も、匂いも、何もかも。
感覚を刺激するすべてがいつもと同じ。
つまり、立場を変えた私が周りまで変わったと錯覚していただけ。
恋人と家庭教師。立場は違うけれど、私は私。彼は彼。
(何かしこまっちゃってたんだろ、私)
問題を解いている光一のすぐそばで、私はクスリと微笑んだ。
「終わったー」
彼は大きな仕事を終えたようにひとつ伸びをして、ずっと握っていたシャーペンを机に放した。
「お疲れ様。ぴったり2時間ね」
壁にかかる時計を見て、あっという間だった二人きりの時間の余韻に浸る。
2時間じゃなくて、もっと長い時間いられたらいいのに―――我儘なのはわかっていて、ポツリと呟いた。
「何か言った?」
「ううん、何でもない」
さっきの言葉、ちゃんと聞こえてくれてるといいな。
今度は胸の内で呟いた。
スポンサーサイト

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

こんにちは。新しいss楽しみにしています(^^♪
ソフトバンクのアプリでも早くキミキス登場しないかなぁ、ドコモだけとかずるい(泣)

よいお年をお迎えください。   
                   雷
【2007/12/30 18:53】 URL | 雷 #-[ 編集]
新年早々いい感じのSS
ありがとうございます。
この続きが楽しみです。
【2008/01/02 21:13】 URL | 子龍 #V4rYaZBU[ 編集]
>雷さん
お返事遅れて申し訳ないです。
新作SS公開させていただきました。今年もよろしくお願いします。


>子龍さん
ありがとうございます。
続編もぼちぼち書いてますので、しばしお待ちを。
【2008/01/02 22:08】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

当室はリンクフリーですが、ご一報いただけると幸いです。
御用の方はメールフォームからどうぞ。

来訪者数

最近の記事

カテゴリー

プロフィール

星乃裕一

Author:星乃裕一
SS書き5年目。

『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
『アマガミ』の二次創作もぼちぼちと。


mixi参加してます。
下記メールリンクより管理人宛にアド添付してメールをいただければご招待させていただきます。
あわせて感想などもありましたらどうぞ。

管理人メール

リンク

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。