キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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Still in Love -15-

お待たせしました。
2ヶ月半のロングランもこれで終結。


いつものように最終話は特別仕様の長さです(汗
神様に頼まなくても、きっと一緒にいられるから…結美。
++++++++++


1回戦。
相手は優勝候補と名高い広島代表の光陵高校。
ピッチャーは大会で五本の指に入る実力派ピッチャー。
地区大会のデータを見るとアベレージヒッターがズラリ。
明らかに格下の僕たちが勝てる相手ではない。
「間違いなく厳しい闘いになる。だが、ウチはウチの野球をするだけだ。初心を忘れるな」
試合開始を待つベンチ前。監督の言葉で自分たちの思いをもう一度咀嚼した。
やることは、自分たちの野球をすること。
そして、甲子園という舞台で悔いのないように走り回ることだ。
審判団がグラウンドに現れホームベースに向かって走る。
「行くぞ!」
それに合わせて主将は掛け声を出し、僕たちはホームベースに向かって駆け出した。


指のマメがすっかり治った柊が先発。僕はベンチスタート。
柊は1回を三者凡退に抑え、上々の立ち上がり。
2回、3回は走者を出したものの無失点で凌ぎきった。
「投げごたえがあるな」
噴き出す汗をタオルで拭いながら、エースは僕にポツリと呟いた。
一方の打線は相手エースの狙い球を絞らせない巧妙なピッチングに翻弄される。
試合の焦点が早くも見え始めた。
(出番はあるのだろうか…)
後ろのポケットに手を伸ばし、星乃さんからもらったお守りをポケットの中で握る。
彼女のためにも、絶対にマウンドに立ちたい。
アルプススタンドで一生懸命応援する彼女を思い浮かべながら、一方でエースの奮投を見守りながら、僕は出番を待った。
中盤。ふた回り目に入った光陵打線が柊をじわじわと攻め立てる。
5回裏。一死一・二塁。
下位打線に決め球をファウルチップでかわされ、次第に球数が増えていく。
「もう80球…」
記録員としてベンチ入りした摩央姉ちゃんが呟いた。
今日のグラウンドは拭いても拭いても汗が噴き出るほど暑い。となると、球数以上のスタミナを消費しているはず。
そしてこの攻め方をされ続けたら、次の回で100球は行く。
これだと継投があるかもしれない…と先読みした途端に鋭い金属音が僕の耳を襲った。
俯かせていた顔を上げて打球の行方を追うと、球は高い弾道を描きながらレフトスタンドの最前列に飛び込んだ。
銀傘に悲鳴と歓声が混じって反響する。
「……」僕は言葉を失った。
ほかのメンバーも同じ思いなのだろう。三塁側の輝日南ベンチだけが静まり返る。
「浜風、か」沈黙を破るように監督がぼそりと口にした。
ライトからレフト方向に吹く甲子園独特の風。
ちょうど5回途中から吹き始めたこの風に打球が乗った。
「何でこんなときに…」ペンを持つ摩央姉ちゃんの手が震えていた。
突然現れた3点ビハインド。
「なに、まだ追いつけるさ」
円陣で主将が発破をかけたにもかかわらず、6回表の攻撃はあえなく三者凡退。
一方の光陵打線は攻略法を見つけたかのように柊に連打を浴びせる。
2点追加で5対0。
「球数は?」
「119球です」
監督と摩央姉ちゃんの会話が耳に入る。
数字を聞いた監督が黙り込むのが見えた。
「…あと1回か」
歓声の合間から溜め息混じりの言葉が聞こえた。
試合は終盤。
このまま出番なく甲子園を去るのはごめんだ。
バッターボックスに立つ先輩たちに声援を送りながら反撃を願った。


「相原、準備だ」
7回表の攻撃が2アウトになったところで、僕は監督に呼ばれた。
5点差をつけられての登板。
モチベーションを保つのは楽ではないけれど、1回戦で負けるわけには行かない。
もう一度後ろのポケットに手を忍ばせてから小走りしてブルペンに向かう。
(えっ?)
ブルペンで肩慣らしを始めようとしたとき。
攻撃中でもないのに大きな歓声が三塁アルプスから聞こえてきた。
―――輝日南高校のラッキーボーイ。
雑誌のフレーズが頭をよぎる。
柊と同じくらい、自分が期待されている…そう気づかされて、点差の意識がなくなった。
僕が勝ちを呼び寄せればいい。点差は関係ない。
準備のための一球一球に力を込め、監督の指示を待った。
練習の合間に試合の動向を見つめる。光陵打線がエースを苦しめている。
「相原」
ちょうど肩が出来上がった頃、相方を務める先輩キャッチャーが僕に近づいて後ろを指差した。
その先で監督がマウンドを指差している。
「輝日南高校の選手の交代をお知らせいたします」
7回裏の途中。テンポのいいウグイス嬢の声が歓声で喧しい球場に響く。
―――いよいよだ。
「ピッチャーの柊君がレフト。レフトの飯島君に代わり、ピッチャー…相原君」
マウンドに駆ける僕の背中を押すように、背後から大歓声が聞こえた。
輝日南側のアルプス全体から大きな「相原」コール。
それが球場全体から聞こえているようで、思わず身震いした。
「相原、後は頼んだぞ」
「ああ」
ボールを渡しレフトのポジションへと去ってゆくエースナンバーを見送ってから、僕は銀傘を見上げた。
約束を果たす時は、やってきた。


ここは、甲子園。


僕が立っているのはその中心。憧れ続けた甲子園のマウンド。
身をかがめてロージンを取るついでに、土に人差し指と中指を触れさせた。
柔らかい。
スパイクでその土の感触を再び味わい、投球練習にかかる。
「今日は大丈夫みたいだな」
「ええ。おかげさまで」
歩み寄ってきた主将に気づかれないように、もう一度後ろのポケットに手を伸ばした。
僕には応援してくれる人がいる。その人のために、僕は投げる。
緊張を解くようにお守りに念を込め、僕はセットポジションを取った。
一死一・二塁。ランナーを背負いながらのピッチング。
これ以上の点は与えられない、というプレッシャーが自分の肩に圧し掛かる。
それでもできるだけ意識せずに光陵打線に立ち向かった。
「代わり端にずいぶん粘ってきたわね。2つアウトを取るのに25球も投げさせるなんて」
摩央姉ちゃんがスコアブックで球数を数えて驚いている。
確かに楽ではなかったけれど、点を取られることなく7回を凌ぎきった。
『投げごたえがあるな』―――柊の言葉を思い出して実感する。
8回表、輝日南打線は粘りを見せ始めた。
相手のお株を奪うように相手ピッチャーの決め球をファウルし、球数を稼いて甘い球をヒッティング。
2点を返し3点差に迫る。
「この回だけで35球投げさせてるわ。いい感じよ」
摩央姉ちゃんの言葉に象徴されるように、俄然ベンチのムードもいい風に変わってきた。
まだ諦められない。諦めてはいけない。
9回にビッグチャンスを作るためにも僕が踏ん張らなければ。
8回裏のマウンドでも、僕は気持ちを前に前に出して相手打線に向かっていった。
地区大会の決勝戦とはうって変わって球が走る。変化球も切れる。
肝心なときに実力を出せるようになった自分に確かな力を感じる。
相手打線が手も足も出せないように、持ち球すべてを駆使して投げ続けた。
8回裏を三者凡退で切り抜け、あとは9回表の攻撃を残すのみとなった。
自分のピッチングで流れは作った。
点差を考えれば、勝てるチャンスはまだ残されている。
勝てることだけを信じて、ベンチ全体がひとつになって打線を応援した。
3番からの攻撃は相手エースを攻め立て、連打で2点。
なおもランナーは一・二塁に残っている。
あと1点。アルプスの応援ボルテージも上がっていた。
バントで1アウト二・三塁。
普通に考えればスクイズ。あわよくば2ランスクイズも狙える状況にある。
もしヒッティングを取るなら犠牲フライでもいい。
この試合で一番ともいえる緊張感を感じながらネクストバッターサークルを立った。
「相原、四球でもいい。とにかく塁に出るんだ」
「はい」
監督は打席に向かう僕に耳打ちした。
マウンドでも打席でも、役目をしっかり果たすことが僕に課せられた使命。
「こいっ!!」
8回の打席では凡退した僕。
打席で声を張り上げて、自分の気持ちを昂ぶらせた。
一球目。内角低め。ストライク。
二球目。内角高め。ボール。
三球目。変化球が抜けて真ん中に入ってきた。
(今だ!)
バットを思い切り振り抜くと、打球は浜風に乗って左中間のまん真ん中を抜けた。
ベースを回りながら、歓声でランナーがホームに還っているのを確かめる。
逆転。
二塁ベースの上でアルプスに向かって…否、星乃さんに向かって大きくガッツポーズをとった。
そしてベンチにもひとつ拳を上げた。
僕に向けられているのであろう大歓声が気持ちいい。
手袋を外しながら、優越感に似た何かを感じていた。


++++++++++


「おい、また記事になってるぜ」
「さすがだな」
前日の試合を報じる全国紙の高校野球欄。
チーム全員でその記事に見入った。
ことスポーツ紙では僕の名前が大きく載っていた。
『輝日南のラッキーボーイ、ここにあり』
勝てたのは自分だけの力ではないから、なんだか照れくさい。
でも、次が待っている。あまりうかうかもしていられない。
僕は部屋に帰って練習の準備を一足先に始めた。


1回戦の勢いに乗った輝日南高校は2回戦・3回戦も逆転勝ちし、準々決勝で光陵と両翼をなす東蔭学園と当たることになった。
広島の光陵が西の横綱なら神奈川の東蔭は東の横綱。
再び手ごわい相手と当たる。けれど、優勝候補を破ったという自信がある。
それに、宿舎の空気が開会式前とはまったく違っている。
慢心かどうかは別としてもどこにも負ける気がしない、という雰囲気なのだ。
「相原」
「はい」
「次の試合、お前が先発だ」
「わかりました」
前日のミーティングで指示を受け、部屋で気持ちの整理をする。
強いチームを相手に先発登板。こんな舞台はそうそうない。
自分の力を試すまたとない機会だし、何より最初から星乃さんの目の前で投げられる。
浮かれる気持ちと冷静な気持ちが入り混じって、次第に落ち着かなくなっていた。
(…そうだ)
鞄にしまっていたお守りを右手に、ポケットに入れていたお守りを左手に乗せてみる。
原点回帰。まだ、輝日南に帰るわけにはいかない。
「相原」
「ああ、柊か」
両手を上に上げてベッドに寝転がっていると、親友が近づいてきた。
「また彼女のことか」
「…まあな」ゆっくりと体を持ち上げる。
「星乃さんのことさ。きっと君を見つめていてくれるはずだ」
「……」
開会式前に交わしたキスを思い出す。
明日にも離れ離れになるかもしれない僕たちは、甲子園という空間でだけ一緒にいられる。
同じ空気を吸い、同じ風を感じ、同じ歓声に囲まれる。
それが幸せなんだ―――あの日の姿で応援している彼女を思い浮かべながら、両手をぎゅっと握り締めた。


++++++++++


甲子園に来て4度目の試合は、雨の中で始まった。
ぬかるんだマウンドが僕を苦しめる。
滑り止めのはずのロージンが効かず、変化球は抜けてストレートは低めに決まらない。
結果、四球でランナーを出し、決め球が甘く入って点を失う。
余計な球数を消費したことで、雨がやんだ3回ごろには今まで感じたことのない疲労感に襲われていた。
3回を終わって3対0。自滅したことで東蔭にリードを許してしまった。
「水澤さん、球数は?」
「72球ね」
予定外のペースを知らせる摩央姉ちゃんの声が重い。
「くっ…」
悔しさが滲んだようなびしょぬれのアンダーシャツを脱ぎ捨て、新しいものに着替える。
「今は焦んな。晴れるのを待つんだ」
後ろから主将の言葉が聞こえてくる。
その言葉に乗るようにひとつ大きく息をして、気持ちを立て直そうとした。
一方の東蔭はエースが登板。
プロ注目の豪腕、という評判に恥じないピッチングで僕たちを手のひらで弄んだ。
柊より速いストレートに切れのある変化球が僕たちを惑わせ、3回までパーフェクトピッチングを許した。
「やっぱ強えぇな…」
感心する声がベンチのあちこちで聞こえる。
4回が始まる頃から、雲の隙間から青い空が見え始めた。
太陽が見えると瞬く間に陽射しは強くなり、マウンドの水を乾かし始める。
おかげで苦しめられたマウンドコンディションからようやく抜け出した。
抜けていた変化球が徐々に決まりだすと、自分のリズムを掴めるようになった。
6回まで3対0で切り抜ける。ランナーを背負いながら何とか無失点。
まだ相手に利があるとはいえ、攻撃はあと3回残っている。
打線が頑張れば、そして僕が頑張れば流れを引き寄せるチャンスはある。
「このまま引き下がるわけにはいかねぇ。絶対勝つぞ!」
円陣で主将から発破がかけられる。
何とか反撃の糸口を作りたい僕たちは、狙い球を絞って攻めることにした。
でも相手エースは完全にペースを掴みきっていて、打ち崩そうにも簡単にはいかない。
6回までとは攻め方を変えられ、それに対応できない。
ことごとくバットは空を切り、ランナーすら出せない。
バットとともに僕たちの気持ちも空回りするようで、もどかしさがベンチを覆う。
「ちくしょう…」
主将がいつにもまして感情をあらわにする。
(ダメだ、このままじゃ…!)
刺激を受けて7回裏のマウンドで意気込んでみる。
けれど、心の底では空回りしているような気もしていた。
その予感は悪い方向で的中する。
球が指にかからない。それも、雨が降っているときとはまったく違う感覚。
変化球が棒球になってそれを外野に運ばれる。
あっという間に2失点。5対0。
ちらりとベンチを見る。監督が動いた。
「もう、限界だろう」
「……っ」
主将の言葉は当たっていた。
もう握力がない。だからこれ以上、投げられない。
悔しさを噛み殺して、僕はマウンドを降りた。


僕が次にグラウンドに顔を出したのは、輝日南高校の負けが決定した瞬間だった。


++++++++++


夏が、終わった。


負けることがこんなに悔しいなんて、思わなかった。


「初出場校が優勝候補に大健闘」―――テレビや新聞でこんな言葉が羅列されていたらしい。
「ラッキーボーイ、雨に泣く」と僕を記事にするメディアもあったらしい。
でも僕はこれらの言葉を一切無視した。聞くことを拒んだ。
負けた原因は僕にある。それがはっきりしているのだから褒め言葉は聞きたくない。
しかも一発勝負なのだから勝てなければ意味がない。
そして何より、星乃さんとの約束を果たせなかったのだから…。


応援団が輝日南に帰った、という一報で僕は完全に意気消沈した。
もう、甲子園にいても仕方がない。
荷造りに入り、部屋に散らかしていたものを全部鞄にしまいこんだ。
「相原様、いらっしゃいますでしょうか?」
片付けもあらかた終わったところで、部屋の電話が鳴る音が聞こえた。
「はい、僕ですが」
「相原様宛てにお電話がかかってきているのですが、お繋ぎいたしましょうか」
「…はい、お願いします」
誰からだろう。
訝しい感情を抱きながら繋がるのを待つ。
「もしもし、相原ですが」
「…相原君?」
この声…もう聞けないと思っていた声だ。
「もう帰ったって聞いたけど」
「実はね、団長さんに無理を言って残らせてもらったの」
「え…大丈夫?」
「最初はいろいろ言われたけど、最後にやっぱり相原君に会いたくて…」
「……」
僕のために残ってくれた。
それがとても嬉しくて、胸が締め付けられる思いだった。
「甲子園で、待ってるわね」
「…うん」
「それじゃ、また後でね」
「うん」
電話が切れてからも、すぐに僕は受話器を置くことができなかった。
星乃さんと会えるのも、これで最後…。そう思うと心細くて、また支えを失って弱くなっていく自分を見せられているようで辛かった。
でも、会えるなら会いに行かなければ。
(…そうだ)
僕は鞄の中から袋を取り出し、持ち合わせていた手提げにそれをしまい込んだ。


星乃さんが指定してきたのは、球場そばにある神社前だった。
彼女は制服を着て、大きな鞄を持ちながら待っていた。
「星乃さん」
声をかけると彼女は小走りをした。
制服のリボンが軽く跳ねる。
「…くしゅんっ」弾みでもう一度リボンが小さく弾む。
「あっ…」
たぶん風邪を引いてしまったのだろう。
無理もない。雨の中で応援していたのだから。
(雨に濡れた星乃さん……はっ)
何て奴なんだ、僕は…。
こんなときにあらぬことを想像してしまう自分が情けなかった。
「どうかした?」
「い、いや、なんでもない」
雰囲気をぶち壊しかねないことを考えて狼狽する。
僕という奴は…と無理やり気持ちを戒めて、彼女を球場前の空いているベンチに誘った。
「…ごめん。約束、守れなかった」
一言め。彼女との約束を果たせなかったことを詫びた。
「ううん、いいの。相原君の頑張ってる姿が見られて、私…嬉しかったから」
静かに、でも本当に嬉しそうに話す彼女を見ると愛おしくなる。
「ありがとう」
「そんな、私…」
「僕が甲子園で投げられたのは星乃さんのおかげ。だから、感謝してる」
「相原君……」
「これ、大事に持っていてほしい。僕からの感謝の気持ち」
取り出したのは来る途中で見つけた小瓶。
中に入っているのは、二人が過ごした思い出の土。
試合の後ですくった土を彼女にあげようと思い立ったのだ。
「…ありがとう」
「今までもらってばっかりだったから、今日は僕が星乃さんに何かをあげる番」
「……」
照れる顔がいつもの赤面顔とは違って、どこかにこやかな顔をしていた。


ツタの茂るスタンドをバックに二人。
つい数日前まではこの中に二人がいたなんて、信じられない。
「そういえば…ツタの花言葉って、知ってる?」
「『誠実』とか『勤勉』とか、よね」
「うん。でも、まだあるんだって」
「えっ?」
「『いつまでも愛し続ける』」
「……」
彼女の表情が変わった。
きっと僕が継ぐであろう言葉を感じ取ったのだろう。
「星乃さん。僕は、星乃さんが転校しても君のことをずっと好きでいる。だから、僕のことを忘れないでほしい」
「相原君…!」
「ダメ、かな?」
潤んだ瞳を見ると、何をしていいのかわからない。
「そうじゃ、ないの…」一粒一粒、雫が彼女の頬を伝っていく。
「とっても、とっても、嬉しいの…」
それを拭うこともせず僕を見つめてくれる。
その気持ちが僕を切なくさせた。
「私も相原君のこと、ずっと忘れない」
「うん。ありがとう」
ひと仕事終えたように、彼女はようやくハンカチを取り出して目頭を押さえた。
僕も波打つ感情をなだめようと何度か深呼吸をする。
「実はね、私も見せたいものがあるの」
涙が乾いてきたところで星乃さんは言った。
そのまま彼女は僕の手を引いて神社の境内に連れてきた。
こんなところで?と訝る僕を尻目に、彼女はおもむろに奉納場所で絵馬を探し出し、一番前にかけられていたものに触れた。
「相原君の知りたかったこと」
「えっ?」
五角形のそれには、綺麗な字が縦に整列していた。


“相原君とずっと一緒にいられますように 
              輝日南高校2年A組 星乃結美”


僕は周りも気にせず、その場で彼女を抱きしめた。
そのそばでは僕たちを追うように、決勝の試合開始を告げるサイレンが鳴った。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

待ちに待った最終話。
感動しました。ちょっと目頭が熱くなってしまいましたよ……。
尺が長くなってしまうと言っていましたが、『そんなの関係ねぇ!』ウワァアアアン!
【2007/12/11 19:18】 URL | Kein #sa7XU41w[ 編集]
ありがとうございます。


実を言うと、もうひと月早く終わらせたかったんですよね。
ブランク開くとよくないですねぇ(笑)
【2007/12/11 21:57】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]
そういえば、他のヒロインのフラグ破壊がありませんでしたね。
それに少し、中途半端な終わり方な気も。図々しいですね、ゴメンなさい。まぁ、その先は読み手の想像に任せるという意味なら問題ないですけどね。

今日、本屋で限定版を注文しましたよ。楽しみ~~!
【2007/12/11 22:09】 URL | Kein #sa7XU41w[ 編集]
えらく冷静な分析ですね(笑)
確かにフラグ破壊は完全にはできてません。かろうじて摩央となるみはつぶしましたが。
瑛理子はもともとの接点が少ない時点でフラグなんてないですし(結美ルートに限った話ですが)、恵もフラグはなく、破壊できなかったのは明日夏と深月だけ。


今回の場合はもともと明日夏メインで考えてたので、結美ルートではかなり苦戦しました。
そのあたりはまたネタバレで。
【2007/12/11 23:33】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]

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