キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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Still in Love -13-

甲子園編13話。


負けられない光一。その結末はいかに。
結美の秘蔵ショットもおまけつき。
++++++++++


先輩たちの“策略”は見事にハマった。
緊張で狭くなっていた視界が刺激によって広げられ、ビクビクしていた肝が幾分か落ち着きを取り戻した。
すっかり頭から抜けてしまっていた星乃さんの存在も思い出させてくれた。
(あとで謝らなきゃ…)
彼女に申し訳ない気持ちが生まれたと同時に、だてに僕より一年多く生きてないな…と投げながらマウンドの上で感心した。
序盤は思いのほか順調。
相手は先発が柊だと踏んでいたのだろう。ほとんどノーマークだったであろう僕の球に対して、気持ちのいいくらいに凡打を続けてくれた。
僕は僕で球は走らないなりに、制球を意識して主将のミットめがけて腕を振った。


4回を終えて両チーム無得点。
相手はエースを拵え、力で輝日南打線を封じ込めていた。
エース格、それも甲子園常連校のエースとなると雰囲気から球の醸し出す重みから何もかもが違って見える。
それが僕の気持ちをかえって燃え上がらせた。
折り返しの5回も状況は変わらず。
この調子でどこまで行けるか。
あまりに順調すぎて、自分を試してみたくなった。
「キャプテン、あの球を使いたいんですけど」
「あの球って、お前…まさか」
以前柊に教えてもらっていた変化球。
縦に落ちるスライダー。柊が高校入学以来、一度も使ったことのない球らしい。
それを僕に伝授してくれた、というのに深い意味があるかはわからない。
でも変化球の少ない自分には必要な球だと思って、僕は密かに練習を続けていた。
「この試合の意味、わかってるよな」
苦虫を噛むような表情を浮かべ、主将が諭そうとする。
失投してみろ。お前の責任だけじゃねぇんだ、とプロテクターの奥から声が聞こえる。
「わかってます。あの球にリスクがあるのもわかってます。でも、使いたいんです」
僕は反発した。
言われなくてもわかっていることを指摘されるのが好きな人なんてそうはいない。
主将の顔を睨みつけ、自分の固い意思を視線に閉じ込める。
今ここで引き下がるわけにいかないんだ。
「お前もギャンブラーだな」
観念したのか、主将は腕組みをほどいた。
「キャプテンほどじゃないですよ」
「言ってくれるじゃねぇか」
「事実を言っただけですよ。事実を」
「…ったく、いつからそんな馬鹿エースみたいな口を利くようになった」
試合が始まる前とは違う丸みを含んだニヤニヤ顔をして、主将は僕の胸元をミットで小突いた。
「サインは俺が出す。あの球を使うかどうかは俺が判断する。サインを出す可能性を1%だけはくれてやるよ」
「…はいっ」
1%なら上等だ。
限りなくゼロに近い可能性に大きな期待を込め、6回のマウンドに臨んだ。
が、期待という名の自惚れは現実に撥ね返る。
一つアウトを取った後ヒットでランナーを出し、送りバントとヒットでそのランナーを三塁に進ませてしまった。
二死一・三塁。最初のピンチ。
それも、相手バッターは4番。
前の打席では二塁打を打たれている。
勝負か、敬遠か。
頭を整理しようといったん上を見上げ、息を吐いてホームベースに向き直る。
空からかんかん照りの太陽が僕らとグラウンドを照らす。
照らされた焦げ茶色の土は光を反射してモザイクのような熱気を生み出す。
作り出された自然のモザイクは18メートル先の五角形をぼかしていた。
一刹那目を瞑り、修正が入った視界を洗いなおす。
ごちゃごちゃしている気持ちも整理する。
(よし、行くか)
再び目を開けると、今度は五角形をしっかりと捉えていた。
その先にある主将の右手を見る。要求は敬遠気味の外寄りのカーブ。
ミットめがけて投げ込む。ボール。
二球目、敬遠気味のストレート。2ボール。
三球目、ストライクゾーンギリギリの外角低めにストレート。ファウル。
四球目、チェンジアップ。バットが沈みかけの球を捕らえる。
しまった―――とヒヤリとしたものの、打球は三塁側のスタンドへ。
(ふぅ…)
額に感じる脂汗とも冷や汗とも取れる汗を二の腕で拭う。
2-2。平行カウント。
あの球を使うならここしかない。
主将のサインを待つ。要求は再び敬遠気味のカーブ。
勝負しない、という意思が見えた。
僕の本意じゃない。サインに初めて首を振った。
次に示されたのはチェンジアップ。首を振ると今度はストレートを求めてきた。
当然首を縦に振ることはしない。残された球はあと一つ。
『まさか、これか…!』
出されたサインに頷くと、主将はマスク越しに目を見開いたような表情を見せた。
ここで勝負しなくてどうする。
チームのため。そして、星乃さんのためにここまでやってきたんだ。
腕にありったけの思いを込めて、僕はあの球を投じた。
しめたとばかりにバットが反応する。バットの手前でボールが変化する。
ボールはバットの下をくぐり、キャッチャーミットに収まった。
「やったぁ!!」
最大のピンチを凌いで、グラブを右手で叩きながらベンチに戻った。
捕らえたと思っていたのだろう。打席で相手バッターがキョトンとしている。
してやったり。
「お前、今日はツイてるな」
「ええ、まあ」
ツイている。
その理由は、恐らく一塁アルプスにある。
このまま完封を狙ってやろう。
運だけじゃなく、30分走で鍛え上げたスタミナには自信がある。
次なる野望に向けてますます気合が入った。


ピンチをきっちり抑えたことで、流れは輝日南高校に傾きつつあった。
8回裏にようやく試合が動く。
輝日南打線のクリーンアップが甘い球を逃さず、連続長打で2点先取。
僕に残された残り1イニングに重すぎる意味を含ませてくれた。
「これに勝てば、甲子園なんだよな」
「…そうですね」
「甲子園、行きたいよな」
「ええ」
マウンド上。
一塁アルプスに耳を傾けると、僕を応援する声がした。
あの中に、星乃さんがいるかもしれない。
彼女を甲子園まで連れて行ってみせる。
そのために、踏ん張るんだ。僕はボールに願をかけた。
(絶対に、負けない!)
向かってくるバッターに対し、ありったけのスタミナを込めて一球一球投げ込んだ。
先頭打者を直球で内野フライに仕留め、次の打者には変化球を打たせ内野ゴロ。
あと一人。自然と指に力が入る。
「ボール!」
力みすぎてランナーを出してしまった。
二死一塁。
まだ慌てない。次のバッターを抑えれば勝てる。
小さく白煙を上げるロージンを土に落とし、セットポジションを取った。
1-2からの四球目。
力なく空に上がった打球は、バックネット手前で主将のミットに収まった。
―――勝った。
マウンドに選手全員が集まり、中心にいた僕はもみくちゃにされる。
17人分の圧力が自分にかかって息ができない。
でも苦しいという感情と同じくらい、嬉しかった。


+++++++++


「甲子園出場おめでとうございまーす!」
「かんぱーい!!」
輝日南に帰ってきた僕たちは、なるみちゃんと軍平爺さんに無理を言って「里なか」を貸切にしてもらって祝勝会を催した。
試合の後だというのに、誰も疲れた様子を見せないのは甲子園効果といったところだろうか。
「まさか俺たちが甲子園に行けるなんてな」
「まあ、運を味方につけたってやつでしょうね」
「途中で“マメがつぶれて投げられませーん”なんて言った奴は誰だよ」
「ええと、そんな不埒な奴がこのチームにいましたっけ…」
得意げに話しながら、自分が責められるととぼける柊に総ツッコミを入れる光景もなんだか微笑ましい。
笑顔の絶えない空間が自然に作り出され、店の中を丸々とした空気が覆う。
僕は星乃さんのことが気になって…否、彼女に会いたくて仕方がなかった。
いつ抜け出そうか。それだけを考えていた。
「今日はこいつがヒーローだぜ」ある先輩が僕を指差す。
「そういやそうだった」
「ひどいですよ、その言い方」
「ひどいも何も誤算だらけだったからな。“誰かさん”のおかげで」
僕に集まっていた視線が再びエースに向けられる。
奴は見ているこっちが吹き出しそうなほど、どうしていいのか思慮に困っている様子だった。
「そういや相原、お前に妙な噂が立っているんだが…」
そんな中で、主将が僕に声をかける。
「噂、ですか?」
「お前、試合の後で女の子と会ってただろ」
「えっ?」
「え~!!先輩、そういう人いたんですか!?」
なるみちゃんが間近で哀しげな表情を見せる。
「ちょっと聞き捨てならないわよ、光一」
摩央姉ちゃんも鬼気迫る表情で絡んでくる。
つられてみんなの視線がまた僕に集中する。
タレこんだのは誰だ…まったくもう。
「ちゃんと情報も仕入れている。嘘をついたらただじゃおかねぇぞ」
「…わかりましたよ」
こうして、星乃さんの存在を言わされる羽目になってしまった。
今までの密かな積み重ねが台無しだ。
「ったく、モテる奴はいいよな~」
下衆と化したメンバーがヒューヒューと空の口笛を吹いて僕の神経を刺激する。
店にいる二人の異性からは言葉にしがたい圧力を感じる。
ああ、もう。


僕への集中砲火が止んで、ようやくまったりとした時間が訪れた。
座敷に座っていた主将がむくっと立ち上がり、入り口前に立って話し始めた。
「ともあれ、俺たち3年にとって…いや、お前ら全員にとってかけがえのない夏になる。絶対にいい思い出を作ろうぜ」
「キャプテン、今日はいつもにましてキマってますね」3年生たちが冷やかす。
「お前らうるせぇよ」
普段は冷やかす側の主将の顔が真っ赤になるのを見て、みんなでゲラゲラ笑う。
守りの要なのに、こういう場面での守りは弱いというギャップが滑稽だった。


++++++++++


決勝から3日。
甲子園行きを星乃さんに直接伝えられないまま、甲子園に向かう日を迎えてしまった。
電話で話はできたけれど、顔を見て話したかったというのが正直な思いだった。


出発前、チームメートに誘われて体育館でやっているチアリーダーの練習を覗きに行く。
「あの子可愛いよな」
「ほら、あの子もなかなかだと思うぜ」
傍目では野郎が集まったときはお決まりの見た目評定が始まっていた。
チアの中には教室で見たことのある顔もちらほらいる。
その中でひときわ僕の目を引いた子がいた。
(あ…)
踊りに合わせて躍動している少し茶がかったセミロングの髪。
目の辺りの髪を赤い髪留めで止め、クリーム色のノースリーブと赤いプリーツスカートを着けた女の子。
「ひょっとして、星乃さんのこと見てなかったか?」
「……うるさいな」
「ははっ。わかりやすいんだよ、君は」
彼女に真っ先に気づいたのは柊だった。
自ら内気だと言っていた星乃さんが、まさかチアリーダーだなんて。
『私、変わりたいの』準決勝の後に聞いたあの言葉を頭の中でまた反芻する。
彼女に何か思うところがあってこれに参加しているのだろうか。
もしかしたら、これが『私も何かしたい』ということの表れなんだろうか。
嬉しい反面、彼女が転校とは違う意味で離れてしまいそうな気がした。
「それにしても星乃さん、なかなかいい体してるじゃないか」
「お、お前…」
「冗談だ、冗談」
「…びっくりさせんなよ」
確かにポンポンを持って腕を上げているときにノースリーブの隙間から見えるアレとか、おへそとか腰のラインとか…。
ジャンプしてスカートがひらりと舞ったときに見えたほっそりとした脚…。
今まで知らなかった星乃さんの魅力を見せられて、「冗談」で流せそうにもなかった。
これが健全な高校生男子の反応なんだ、と本人の前で言えるわけはないけれど。
「でも、君にとってはいい気付け薬にはなるんじゃないのか」
「…まあな」
柊も気付いている。
星乃さんが甲子園のスタンドで応援してくれる―――彼女が好きな僕にとってこんなに嬉しいことはない。
それに、彼女にとって輝日南高校での最後の思い出になる。
その思い出は、絶対に無意味なものにしてはいけない。
彼女のために僕は頑張ってみせる。
改めて心の中でそう誓った。
「野球部、集合!」
背中から声がした。
「いよいよだな」
「ああ」
グラウンドまで戻りバスに乗った僕たちは、夢にまで見た大舞台に思いを馳せた。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
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