キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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Still in Love -12-

またまた10日ぶりの甲子園編12話。
明日にはアニメの感想に埋もれますが(爆


二人きりの約束。
++++++++++


準々決勝はベンチを外れ、僕はスタンドで試合を見守った。
試合は柊の緩急をつけたピッチングが冴えて5対0の完封勝利。
輝日南高校はベスト4に名乗りを上げた。
「お疲れ、柊」
「サンキュ」
試合後の集合でエースとハイタッチを交わし、勝利を祝う。
ベンチに入れなかったことが悔しくはあったけれど、望みが残されていることが僕にとっては何より嬉しい。
訪れるであろう次のチャンスに目標を定め、僕は気持ちを昂ぶらせていった。
翌日。準決勝。
予想通り春の大会の再戦となった。
もう一度投げる姿を見て欲しくて、僕は星乃さんに連絡を取った。
球場に来ていれば、おそらく今頃はスタンドで試合を見守っているのだろう。
出番があることを信じて、僕はベンチで試合を見守った。
序盤は投手戦。相手ピッチャーの変化球が冴え、輝日南高校は5回までランナーを出せなかった。
「あれで控えなんだよな」
「ああ」
ベンチではスタメンや先輩たちの嘆きが聞こえる。
一方の柊もコースを突くピッチングで相手打線を翻弄。
ヒットを打たれても長打にはさせず、三塁を踏ませない。
中盤に入っても均衡は破れないまま。
手に汗を握る展開に、ベンチの空気は緊張ともどかしさが混ざりあっていた。
しかし7回表、連投の影響で球速が落ちてきた柊がついに捕まった。
連打で2点を奪われ、なおも一死二・三塁。
均衡が破れてざわつきだすベンチ。
「ブルペンで準備だ」
地を這うような声がする。
声のしたほうに顔を向けると、お前の出番だと言いたげに監督が僕を見ていた。
来るべきときが来た―――僕はベンチから駆け出した。


親友は7回のマウンドを乗り切ると、ベンチで汗だくの顔を思いっきりタオルで拭いた。
奴らしくない険しい表情を浮かべているのがブルペンから見てもわかった。
7回裏。
完璧に抑えられていた輝日南高校の打線が相手ピッチャーを捕らえだした。
ヒット、バント、ヒットで一死一・三塁。
ランナーが三塁に達すると、スタンドからひときわ大きな歓声が聴こえた。
時を同じくしてベンチの空気も一変する。
4番のひと振りでまず1点。スタンドとベンチの期待に主将が応える。
変化球を鋭く打ち返し、一人がホームを踏む。
さらに一死二・三塁。一打逆転のチャンスに柊に打順が回ってきた。
見るからに苦しそうな表情が痛々しい。
「相原!」
大声がして振り向くと、ベンチから手招きを受ける。
呼ばれた僕は監督のところに歩み寄った。
「お前ならわかってるよな、あの表情」
「…はい」
柊が険しい表情のまま打席に立っている理由。
スタミナ切れだけではなく、手のマメがいくつも潰れたからだろう。
昨日ハイタッチを交わしたときに、僕は奴の手の感触がおかしいのに気がついていた。
ということは…!?
「あとは頼んだぞ」
ポン、と尻を一発はたいて監督は背を向けた。


++++++++++


「お疲れ様」
いつかと同じように、星乃さんは球場の外のベンチで待っていた。
また野球部のメンバーから隠れるように抜け出して、二人で戦地を後にした。
唯一違ったことは、彼女が制服ではなく濃い紫のノースリーブを着ていたことだ。
「やっぱり呼んで正解だった」
「ふふっ」
出番が来る保証はなかったのに彼女を呼んでいた自分が拍手ものだ。
あの後、柊が長打を放ち逆転。
「抑えなければならない」という命題に身震いしながらマウンドに登った僕は、ランナーを出しながらかろうじて反撃を振り切った。
3対2。あの時打たれていたら、と思うと今にも震えが起きそうだ。
今頃こんな悠長なことはできちゃいないだろう。
柊は案の定、マメがつぶれて指に力が入らなくなっていた。
すみません―――柊はベンチ裏で監督やメンバーに向かって頭を下げた。
監督は頭を掻きながら何も言わず下を向いていた。
決勝に進んだはいいけれど、これで先発が誰になるかわからなくなってしまった。
「どうしたの?」
「ん?ああ、なんでもないよ」
「そう…何だか妙な表情をしてたから」
甲子園まであと1つ。相手は甲子園の常連・輝日東商。
その肝心な試合でエースが投げられない。
最大のピンチを目前にして、僕の中に生まれたモヤモヤは膨らむばかり。
「あと、ひとつね」
「…うん」
壁はあと一つ。
でもその壁はとてつもなく大きく、厚く、堅い。
「相原君?」
「……」
「相原、君?」
「あ、ああ、ごめん…」
頭が切り替わっていない。
せっかく星乃さんと一緒にいられるというのに。
…やれやれ。


この前来た公園にまた立ち寄って、僕たちは前と同じベンチに腰掛けた。
「私、甲子園で相原君が投げてるところを見たい」
星乃さんは唐突に切り出した。
「言おうかずっと悩んだけれど、今言わなかったらずっと言えないままだから…」
「……」
来るべきときが来た―――直感がそう示した。
「私…転校するの」
「…うん」気付いていた。
「それで、いつ引っ越すの?」静かに訊いた。
「8月の終わり。向こうの学校の2学期に合わせるためだって、お父さんが言ってたわ」
「8月の終わり、か」
ちょうど甲子園の決勝が終わるころだ。
「私、何か相原君にできることをしたいの」
「えっ?」
「相原君に『何かをしたい』って言われたとき、私…嬉しかった。だから私も、何かできないかな…って」
「……」
「私、変わりたいの」
何かを懇願するような、でもキスを求めてきたときとは違う表情。
“転校”の二文字を聞いたこともあって、きゅっと胸が締め付けられる。
僕は頭の中で時間をかけて言葉を探した。
「どうかしたの?」彼女が訝しげに僕を見つめる。
「ううん」
大きく息を吸って、頭の中の散らばった言葉を吐く息に固めた。
「星乃さんは、そのままでも魅力的だと思うよ」
「…えっ?」
目を丸くしていたけれど、僕はそれ以上言わなかった。
本心。
「今言った言葉が、そのまま僕の本心だから」
「相原君…」
「この前言ったよね。『おとなしくて優しそうな子』がタイプだって。あれはそのまま星乃さんのことなんだ」
「あ…」
彼女の顔がほころんだ。
「だから、僕はそのままでもいいと思う」
「相原君…」
「でも、どうしても変わりたいって言うなら応援するよ」
僕の前ではそのままでいてほしい―――本当に言いたいことは胸の奥にしまっておいた。


「あさって、決勝なのよね」
「うん」
「また、観に来てもいい?」
「もちろん」
「…ありがとう」
「星乃さんのために、なんとしても甲子園に行ってみせる」
「…うんっ」
あの時と同じベンチで、僕たちはキスをした。
ここで交わした約束を絶対に果たすために。
これを最後のキスにしないために。


++++++++++


そして、決勝当日―――。
先発メンバーが発表されたとき、ベンチ裏はざわついた。
5番レフト、柊。
8番ピッチャー、相原。
先輩ピッチャーを差し置いて自分が地区予選の、しかも決勝の先発マウンドを任されるとは思いもしなかった。
「相原、『補填』を頼んだぞ」
「…はい」
保健室で言われたあの言葉が、現実になった。
それがよりによってこの試合とは…。
「これはウチにとっても相手にとってもサプライズだ」
冗談に聞こえない主将の言葉が耳の中で反響する。
覚悟していなかったわけじゃないにしても、出し抜けを食らった気分で驚くばかり。
「おい、早く行くぞ!」
「は、はいっ!」
まさか、という気分が抜けない。
緊張の波に早くも飲み込まれそうな自分がいた。


「お願いします!」
重責をどっかりと肩に乗せたまま、僕は1回表のマウンドに上がった。
初めて投げたときの何倍もの緊張が押し寄せる。
右手が震える。呼応して体も震える。
腕を振ろうにもうまく力が入らない。投球練習の球がすっぽ抜ける。
「頭からそれでどうする。まるで葬式じゃねーか」
「…すみません」
「こう見えても、俺だって今日は緊張してるんだ。勝てば甲子園だからな」
作り笑顔とは思えないニヤニヤした顔を浮かべて、主将は声をかけてきた。
「みんな、準備はいいか」
「あんまりそんな顔ばかりしてると、相手にナメてかかられるぜ」
「いたっ!!」
主将の号令で内野を守る先輩たちみんなが僕の尻をつねった。
4人分のつねりが末梢神経を鋭く刺激する。
「どうだ。ちょっとは気楽になっただろ」
「気楽も何も…」痛くて言葉が出てこない。
「どうして僕がこんな目に…」
「お前をダシに使ったんだよ。みんなの緊張を解くためにな」
「ひどいこと考えるな、お前も」
まったくだ。


「さ、これで試合開始だぜ」
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