キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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Still in Love -11-

10日ぶりの甲子園編11話。


「SS図書室」って書いてるのにアニメネタばかりなのも何なので。
縮まりそうで縮まらない結美と光一の距離。
++++++++++


輝日南を含む地域に梅雨明けが発表され、ついに“夏”がやってきた。
初戦をコールド勝ち、とこれ以上ないスタートを切ったおかげで、チームは雰囲気がとてもいい。
その雰囲気と勢いに乗っかって輝日南高校は続く3回戦、4回戦もコールド勝ち。
柊と先輩ピッチャーだけで事が足りてしまって、いつ出番があるか、と心待ちにしていた僕は肩透かし状態。
「出番はまだある。焦るなよ」
「…わかりました」
監督にはやる気持ちを察せられるほど、僕は試合に出たくてたまらなかった。
その気持ちの底には、もちろん“あのこと”がある。
自分のために。
そして彼女―――星乃さんのために。
彼女が輝日南を離れることに対して、ショックがないとは言えない。
でも離れるまでに、絶対いい思い出を作ってあげたい。
自分もかっこいいところを見せたい。
そのためには、自分が頑張るほかにない。
試合に出られなかった日も、星乃さんのことを思いながら一人で練習にひたすら打ち込んだ。
「お疲れ様」
準々決勝を控えた練習を終えた後。
ベンチに戻ると、摩央姉ちゃんがタオルを手渡してくれた。
「どうしたの?最近顔色よくないわよ」
近くに聞こえないように、僕たちは小声で話す。
「…なんでもないよ」
「なんでもなかったらこんなこと訊かないわよ」
そう言って摩央姉ちゃんは唇を尖らせる。
「寝不足でしょ。最近」
「……」
「黙ってたってわかるんだからね。摩央チェックは厳しいんだから」
「…はいはい」
「で、その原因は何?緊張してるから?」
「……」
「じゃあ、こんな時期に夜更かししてゲームしてたとかテレビ観てたとか?」
「……」
「ひょっとして、恋患い?」
「……っ」
的外れな質問に半ば呆れていると、摩央姉ちゃんはここぞとばかりにいきなり核心を突いてきた。
悲しいかな、だんまりを決め込んだはずなのに頬がピクリと動いてしまっていた。
それに僕も気づいていたからなお悔しい。
対照的に、僕の反応を見て幼馴染がニヤリとする。
「どうやら図星だったみたいね」
「水澤!」
「は、はい!…ったく、いいところだったのにぃ」
(ふう、助かった)
主将が摩央姉ちゃんを呼びつけてくれたおかげでこの場を凌ぐことができた。
危うく理由を言わされそうになったけれど、今回ばかりはいくら相手が摩央姉ちゃんでも言うことはできない。
今持っているこの想いだけは密かに抱いていたい。
持っているタオルをぎゅっと握り、自分の想いをそれにぶつけた。
「俺は明日のためにもう少しやっとくよ」
「わかった」
居残りを決めた柊をグラウンドに残して更衣室に戻ろうとすると、グラウンドでは見慣れない制服姿の女の子を見つけた。
他の部活のマネージャーかな、と思って見てみると。
(あ…)
相手の去り際に目が合って、それが誰かを知らされた。
どうしてここに…?と頭に疑問符を残しながら、僕は彼女に近づこうと小走りをする。
グラウンドにいる手前、ダッシュするわけにも「星乃さん!」と叫ぶわけにもいかない。
声に出したい気持ちをぐっとこらえて走っていると、いきなり体が宙に浮いた。
(えっ?)
膝が地面に叩きつけられた瞬間、僕の意識はどこかに飛んだ。


++++++++++


「相原…君」
「……?」
誰かの声で目を開けると、そこは一面の白い空間だった。
正面はのっぺらぼうの壁。
声をかけてきた人の後ろには波を打った白いカーテン。
寝起きで視界がぼやけていても、色だけは認識していた。
(ここは…?)
顎を引いてみると、僕の体には布団がかけられている。
手を頭にやってみると、少し硬めの枕が置かれている。
その枕の先には金属の柵。
―――そういうことか。
自分がベッドの上に寝かされていることにここで気がついた。
ベッドのそばに視界をやり、ついさっき声をかけてきた人の存在を探す。
「…あ」
心配そうに眉を下げて僕を見つめる女の子が、そこにいた。
「よかった…意識が戻ったみたいね」
「どうして、ここに?」
「大きな音がして振り向いてみたら、相原君が倒れて気を失ってて…」
気を失った…?
ついさっきまでの自分の記憶を急いで追いかける。
確か星乃さんの姿を見つけて、追いかけようとして…。
(うーん…)
途中までは思い出せるのに、そこから先がまったく思い出せない。
星乃さんが言う「気を失っていた」というのはどうやら間違いないようだ。
「私が急いで保健の先生のところに走って知らせて、野球部の人たちがここまで運んでくれたのよ」
「えっ?で…その人たちは?」
「練習があるからって戻っていったわ」
「え、あ、そっか…」
星乃さんが先生を呼んで、野球部の人間がここまで連れてきたということは…。
誰かに彼女との事を気づかれちゃいないだろうか、と不安になってうまく返事ができなかった。
「でも、本当によかった…」
一方で、ほっとした表情を浮かべる彼女。
その姿がとても愛おしく思える。
「…ありがとう」
お礼を言うのもなんだか気恥ずかしくて、彼女と目を合わせるのも精一杯だった。
保健室で二人きり。間近に自分の好きな子がいる。
こんなに幸せなことはないな…と雰囲気にうつつを抜かしていると、シャーっとカーテンの滑る音が僕を現実に呼び戻す。
いいところごめんね、と保健室の先生が割って入ってきた。
せっかくの雰囲気を壊さないでくれよ…と思わず舌打ちをしそうになる。
「どうやら過労と貧血ね。部活の後、ちゃんと寝てる?」
「いや、あんまり…」
「それじゃあ無理もないわね」
キスした日からずっと、星乃さんのことを考えていた。
練習中でも、試合中のベンチでも、家に帰ってからも。
どうしたらいいだろう―――。
そう遠くない未来に輝日南を離れてしまう彼女のために、何ができるだろう―――。
ない知恵を絞りに絞って自分なりの答えを見つけようとした。
悩みに悩んで答えを見つけることはできた。
それでもなお、寝る前には「彼女が輝日南高校からいなくなってしまう」という現実を思い出して眠れなかった。
くじけそうになるのを無理やり叩き起こして、を繰り返しているうちに起こったこの結果。
結局、自分の心は迎えるべき現実をまるっきり消化できていなかった。
「一言で言うと無理のしすぎ。体が悲鳴を上げてたことに気づかなかったの?」
保健室の先生に尋ねられて、ようやく自分の体の状態に意識が向いた。
起き上がろうとしても体が思うように動いてくれない。
(あれ?)
100kgは軽く超えるバーベルを上から乗せられているような感覚。
よほど体に負担がかかっていたんだな…と思い知らされた。
「そのだるさはじきにマシになるわ。それまで休んでいきなさい」
「…はい」
先生はカーテンを閉め、コツコツと足音を立てて去っていった。
(過労…か)
ホッとしたようながっかりしたような複雑な気分を紛らわせたくて、天井に向かって大きく息を吐いた。
「“過労”って…どうか、したの?」
「…んー、まあ、ちょっと頑張りすぎたみたい」
こうなった原因が目の前にいる人のことだから、本人の前で口を割ることなんてできはしない。
でも、何か言ってあげないとかえって彼女を不安にさせてしまう、と思ってとってつけたような言い訳をした。
「ひょっとして、私の、せい…?」
「どうして?星乃さんは全然悪くない」
「でも、私…」
「ちょっといいか」
「か、監督っ」
星乃さんの言葉を遮って、監督はカーテンの隙間から顔を見せた。
監督はカーテンを開け、貫禄のある体をベッドとカーテンの間に潜り込ませた。
そしてカーテンを閉めるとガラガラと椅子を引き寄せ、僕の枕元に座った。
「すみませんでした」
「何、気にすることはない。しかし…」
監督はひとつ咳払いをして間を取ろうとする。
でも払い方が悪かったのか、もう一度ゴホンと大きく咳払いをしてから話し始めた。
「明日の先発はお前で行こうかと思っていたんだが…この状況では無理だな」
「そんな…」
監督の言葉に反発するように、重かった体がピクッと反応する。
「上を目指すために体をいじめることは決して悪くない。だが、体のキャパシティを無視し続けた結果がこれだ」
「……」
「ここでいったん頭を冷やせ。明日はベンチ入りしなくていい。その代わり、今回の補填はしっかりとやってもらうからな」
「…はい」
「俺からはこれだけだ。しっかり体を休めろよ、相原」
「ありがとうございました」
「それから、保健室に連絡したこの子にもちゃんと礼を言っておけよ」
「は、はいっ」
「せっかくの機会だ。仲良くやっとくれ」
意地悪そうにニヤリとした監督は椅子をもとあった位置に片付け、カーテンを素早く開けて体を外に持ち出すとすぐに閉めた。
それからまもなく声が聞こえなくなったあたり、保健の先生に状況を聞いてすぐ出て行ったらしい。
「……」
「……」
監督の“余計”な一言に反応したのか、彼女の顔はすっかり上気していた。
僕もこっ恥ずかしくてどんな言葉をかけていいかわからない。
あの言葉が冷やかし含み、というのが丸わかりなだけにタチが悪かった。
そんなこんなでできあがったのは、互いに言葉を発しない静かな空間。
「…ふぅ」
僕はわざとらしく溜め息をついて、気分を変えてみた。
星乃さんの顔をちらちらと見ながら、監督の言葉をもう一度咀嚼する。
『補填はしっかりやってもらう』―――つまり、まだチャンスを与えてもらえる。
悔しい気持ちがあるその一方で、監督から直々に次の可能性があることを言われて安心した。
次のチャンスは準決勝か決勝。
星乃さんに観に来てもらう舞台は揃っている。
「星乃さん」
途切れていた会話を再び繋ぐため、僕は彼女に話しかけた。
「何?」
「次に投げるとき、観に来てくれないかな?」
準決勝に進んだわけでもないし投げると決まったわけでもない。
仮に進んだ場合、当たるであろう相手は今までのように楽に勝てる相手ではない。
でも準々決勝は勝つ。そして残り2試合のどこかで僕の出番があるはずだ。
監督の言葉を信じた。
「…うん」
気恥ずかしそうに俯きながら、彼女はこくりと頷いた。
「ありがとう」
僕にとっての動機付けは、彼女の存在。
それを改めて確認した。
「それから、さ」
僕にはまだ確かめたいことがある。
―――あのキスのこと。
「あの時言いたかったことは、何?」
「えっ?」
「僕は、もう気づいたんだ」
何を言いたいのかわかったらしく、彼女の表情がこわばるのがわかった。
「星乃さんの口からは言えないことだってわかって、僕もショックだった。でも、」
「…もう、言わないで」
「……」
「我慢してたものが、我慢できなくなっちゃうから…」
軽率だった。
苦しんでいるのは僕だけじゃない。
彼女だって苦しんでいる。いや、彼女は僕よりもずっとずっと苦しんでいる。
それにどうして気づいてやれないんだ。
いまさらながら、自分の浅はかさを責めた。
「ごめん」
「…ううん、気にしないで」
泣きそうになりながら無理やり笑顔を作っている彼女が見ていて痛々しかった。
そんな笑顔を作らせてしまうなんて、僕は何て奴なんだ…。
ここまで情けない自分を知って、初めて自分自身を殴ってやりたいと思った。


「星乃さん」
再びの沈黙の後、僕はまだ重い体をゆっくりと起き上がらせて彼女の正面を向いた。
「僕は、星乃さんのために何かをしたい」
「相原君…」
「だから、甲子園に行くまで見守っていてほしい。星乃さんがいたら、頑張れるから」
「う…うんっ」
彼女の頬に、一本の筋が水を帯びて通っていた。
「今日はありがとう。きっと、いい思い出を作ってみせる」
だいぶマシになった体を反らせてカーテンを開けると、窓から夕日が射し込んでいた。
星乃さんの頬に伝う涙はその光に反射して輝き、僕の胸を締め付けた。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

こんにちは。
キミキス甲子園編、最初はどうかなぁと思っていましたがドップリ浸かってしまいました(^^♪続きも楽しみにしていますね。
話題は変わりますが、星野さんは『キミキスverious-heroines』買いましたか? 自分は2巻とも買ってしまいました。
久しぶりにキミキスをプレイして、深月にやられてしまいました(笑)こりゃ3巻も買いだな(笑)
【2007/10/17 19:54】 URL | 雷 #-[ 編集]
ありがとうございます。

「various heroines」は2巻とも持ってますよー。摩央と明日夏の両巨頭に悶えました(笑)
3巻の深月編ももちろん買います。
【2007/10/19 00:05】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]
私は日本橋のとらのあなとアニメイトですよ。特典がつくときはとらのあなに行きます。
【2007/10/19 22:24】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]

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