キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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Still in Love -10-

中盤終了。
最近読んでいる村山由佳女史の影響をモロに受けてる気がしなくはない第10話。
ゲームとは一味違うんだぜ。




大阪ではアニメがもうすぐ始まるけど間違いなく寝てるんだぜ。
DVD録画予約してるからいいんだけどねっ。
++++++++++


試合は輝日南高校が序盤から攻める展開になった。
3回を終わって6対1。
この展開なら出番はないかもしれない…ベンチの中でほっとしたような、がっかりしたような気分になっていた。
「相原」
4回表。
輝日南高校の攻撃中に相手投手が交代した。合間を縫って、監督が僕を呼んだ。
「はい」
「気持ちは整理できてるか」
地面すれすれの低い声が、僕の耳に響いた。
言っていることは遠まわしでも、何を言おうとしているのか僕にはわかった。
いきなりの登板宣告。
「…まだ驚いてるようだな」
僕が何を考えていたのか見抜いていたのだろうか。
監督は戸惑う僕をあざ笑うかのような視線を浴びせながら、ニヤッと薄笑いを浮かべた。
「6回から行くぞ。準備しておけ」
「はい!」
ちょっと無理して元気よく返事をした。
敢えてすぐに迎える5回ではなく6回、という設定にしたのは僕に対する監督の意図だろう。
僕はグローブを持ってブルペンに向かった。
マウンドに登ると、練習試合で投げた二日のことを思い出す。
極度の緊張でどうにもならなかった自分。
主将のおかげで緊張がほぐれて何とかなった自分。
今の自分はどっちなんだろう…。
確かめるために前科持ちの右手を見る。軽く震えている。
その手を左の胸に当ててみる。心臓はいつもより速く動いている。
「…ふぅ」
緊張している自分を受け入れるため、僕は上を向いてひとつため息をした。
そのままスタンドに目を向ける。
(星乃さん…)
姿を確認することはできなかった。
でも、今日は彼女がいる。彼女のためにも、今日は頑張らないといけない。
動機付けの存在をマウンド上で確認して、僕はブルペンキャッチャーのミットを睨み付けた。 
5回に輝日南高校は追加点を挙げ、スコアは8対1。
6・7回をしっかり抑えればコールド勝ちが決まる。
上位を狙うためにも、チームの流れを作るためにも、僕の責任は大きい。
気合を入れるようにぎゅっ、とひとつ拳を握って、僕はグラウンドへ駆け出した。


6回裏。
「ピッチャー、相原君」
アナウンスに乗ってマウンドに登った僕は、再び襲ってきた緊張の波に飲まれようとしていた。
天に向かってふーっと息を吹く。
目に映るのは雲のない真っ青な空。
その真っ青なキャンバスに、この試合を見ているであろうあの子の顔を浮かべた。
「公式戦は初めてだろ。力抜けよ」
「はい」
主将の言葉で視線を下に戻し、震える右の拳をもうひとつ握り締めた。
そのまま肩を何度か回してリラックスを試みる。キャッチャーのマスクを睨む。
そして、もう一度上を向いてからバックネットの向こうをちら見した。
(…あ)
まったくの偶然だった。
視界に入ったのは指を組んで祈るような仕草をする女の子。
その人は紛れもなく、星乃さんだった。
―――僕の目の前に彼女がいる。
それだけで力がみなぎってくるような気がした。
(…よし)
一気に緊張が解けた気がした。
僕は主将の出すサインに従い、ミットめがけて球を投げ続けた。


++++++++++


待ち合わせ場所には、もう彼女が待っていた。
「お疲れ様」
「ありがとう」
球場前で解散した野球部のメンバーの目をかいくぐるように、僕は彼女に会った。
駅に向かって下り坂を歩きながら、鞄のポケットから試合前にもらったものを取り出す。
「これのおかげだよ」
「そんなことない。相原君が頑張ってたから…」
さりげなく否定していたけれど、少しつぶれた“これ”を作ってくれたその人は頬をほんのりと赤く染めていた。
その姿を見せられると、僕もなんだか照れくさい。
「ありがとう」
「ううん、いいの」
首を小さく振りながら謙遜する彼女の顔はさらに赤みがかっていた。


今日の結果は2回を投げて3安打、1失点。
6回に直球を狙われて1点を失ったけれど、打線が7回表に3点を取ってくれたおかげで気持ちが楽になった。
残るイニングでしっかりと仕事をこなし、輝日南高校の3回戦進出に役立つことができた。なんとか自分に課した彼女との待ち合わせ条件をクリアし、こうして二人並んで歩くことができた。
彼女と話しながら、いろいろと思案をめぐらせる。
お守りを渡してくれたときの星乃さんの姿。
マウンドにいたときに見た手を組んでいた星乃さんの姿。
お守りのことを話すと顔を赤く染める星乃さんの姿。
(ひょっとして、星乃さんは僕のことが好きなのか…?)
にわかには信じられない。
単なる僕の一方的な思い込みかもしれない。
それをはっきりさせたくて、僕は彼女に聞いた。
「星乃さん、どうして球場まで?」
「輝日南高校が出るって聞いたから」
「そっか」
そりゃそうだよな、と自分を説得する。
「でも、それとは別に理由があるの」
「何?」
さりげなく聞くフリをして、どういう答えが返ってくるか期待した。
「ここね、私が住んでる街なの」
「あ…そうなんだ」
「昔は輝日南に住んでたんだけど、お父さんの仕事の都合でこっちにきて」
「そうだったんだ…」
本当に聞きたい答えではなくてがっかりした。
けれど、彼女のことを少しだけ知ることはできた、と考えることにした。
「じゃあ、電車で通うのも大変だね」
「初めは辛かったけど、今は大丈夫。これもあるし」
そう言って、彼女は鞄からブックカバーのついた文庫本を取り出した。
本が本当に好きなんだな、と感心する。


「ここって、見覚え、ない?」
「ひょっとして、丘の上公園…」
「そう。丘の上公園」
駅に向かう途中で彼女は立ち止まった。
高台にあるこの公園はなだらかな斜面上に造られていて、展望台のそばにきのこのような屋根がついたベンチがある。
それが輝日南にある馴染みの公園みたいな雰囲気を醸していた。
こっちに来て、という彼女の誘いに乗って展望台に登ってみた。
足元に荷物を置き、柵に肘をついて二人並んで景色を眺める。
「風が気持ちいいな~」
そう言いながら星乃さんの隣で僕は深呼吸をした。
でも、彼女は何も言わない。
似たような風がもう一度吹く。
その風で彼女の髪がなびく。
なびいたときに彼女の表情がかすかに見えた。
笑顔とは程遠い、何か思いつめたような表情だった。
「星乃さん?」
「え?」
「どうしたの?そんな顔して」
「う、ううん、なんでもないの」
深刻な表情をしていたのに「なんでもない」なんてことはないはず。
でも、問い詰めたらやっぱり「なんでもない」と返ってくるかもしれない。
少し頭をひねって、僕は遠回りな会話を切り出した。
「こうやって話すのって、あの日以来だよね」
「うん」
「あの日はずいぶん雨降ったよね」
「ええ。びっくりしたわ」
何気ない会話を繋ぐことで、僕は本題を切り出すタイミングを計ろうとした。
彼女の硬い表情を和らげるため…という理由もつけて。
本題とは関係のない雑談をそのまま何分かほど続けたところで、急に会話が途切れた。
二人の間に言葉のない静かな時間が訪れる。
「そういえば…」
核心に迫るために、話しながら気持ちを整理する。
「星乃さんさ、こうやって手…組んでたよね」
彼女がやったように両手の指を絡ませる。
「あれって、何か意味あったの?」
「輝日南高校が勝ちますように、って祈ってたの」
「それだけ?」
「…うん」
頷いた彼女の頬は、また紅く染まり始めていた。
その反応が僕の好奇心を掻き立てた。
「他にはない?」
「……うん」
さっきよりも遅い反応。
それとは反比例して、頬の色は夕焼けに溶け込みそうなほどになっていた。
「相原君」
「何?」
「少し、質問してもいい?」
「うん」
そのままの表情で、彼女は僕に顔を向けた。
もう一歩、というところで主導権を持っていかれたけれど、彼女からの質問なら大歓迎だ。
どんな質問が来るのか楽しみに思いながら、それが飛んでくるのを待ち構える。
星乃さんは少しばかりまごまごしながら、ゆっくりと口を開いた。
「相原君は、ずっと野球をやってるの?」
「うん。小学校のときから」
「ずっと続けてるのね」
「うん」
「嫌いになったことってない?」
「んー、あったけど気がついたら好きなほうに戻ってたなぁ」
「ふふっ」
もみあげを掻きながらとぼけるように答えると、ようやく彼女の顔から笑みがこぼれた。
つられて僕も吹き出す。
ちょっとだけ安心した。
「それじゃ、次の質問ね…」
「うん」
次の言葉を言いにくそうにしていて、もじもじしているのがいじらしい。
「相原君って…どんな女の子が好み?」
こういうことを聞くことには慣れていないけれど、頑張ったんだろう。
今ももじもじしている。
彼女の精一杯の質問に僕はこう答えた。
「おとなしくて、優しそうな子だなぁ」
それはつまり、目の前にいるその人自身のこと。
果たして自分のことだとわかってくれているだろうか…と気になって星乃さんの表情を見る。
「そ、そうなんだ…」
答えを聞いた彼女は嬉しいような驚いたような、複雑な表情を浮かべていた。
彼女の胸の内にはどういう思いがあるんだろう、とまた疑問が増えた。
「じゃ、じゃあね…」
言いかけて、彼女はいったん間を置いた。
さっきと同じように言いにくそうにしている。
「相原君は、好きな人とはいつもそばにいたい?」
ひとつ深呼吸を済ませた星乃さんは、真剣な目で僕を見つめてきた。
その視線で、僕はあの日の言葉を思い出した。
『たとえ遠くに離れてしまっても』
きっと、彼女は近く好きな人と離れ離れになるんだろう。
「僕は、できればそばにいたいな」
「そう…」
ささやくような声だった。
僕の耳には安心したような、またがっかりしたような声に聞こえた。
「ありがとう」
彼女は緊張から解放されたように、ふぅとひとつため息を漏らした。
そしてそのまま鞄を持ち、ベンチにちょこんと座った。
僕はその後を追ってベンチに座った。
対面位。お互いがお互いの顔を見られる位置に二人が座った。
「星乃さん」
「何?」
僕にも、訊きたいことがある。
「星乃さんは、好きな人と離れたくない?」
「…ええ。できることなら」
「でも、離れなくちゃいけないんだよね?」
「え?」
「この前、『たとえ遠く離れてしまっても』って言ってたから」
「……」
彼女は顔をこわばらせ、それを隠すように俯いた。
それでも僕は続けた。
「あの日の夜、いろいろ考えたんだ。そして出てきた答えが二つ。ひとつは星乃さんの好きな人が星乃さんの元から離れる。もうひとつは…」
「…相原君…」
僕が言おうとするのを彼女は止めにかかってきた。
それ以上言わないで、という意味だろうか。
両手を伸ばして僕の口を塞ぐようなジェスチャーを見せた。
「それ以上、言わないで…」
僕を見つめる彼女の瞳から、訴えるようにポロリと雫が落ちた。
その光景を見せられた僕は、これ以上何も言えなくなった。
「…ごめん」
「いいの、気にしないで…」
力のない声が星乃さんの口から発せられた。
そして彼女はまた俯いた。
「でも、確かめたいんだ」
「え…?」
俯いていた顔がわずかに僕のほうを向く。
「星乃さんは、僕のことをどう思ってるのか」
「……」
「わざわざ僕のお守りを作ってくれたり、試合を見に来てくれたり…どうしてそこまでしてくれるのか、僕は知りたい」
わずかだった僕への視線がだんだんと強くなる。
「何があるの?」
「……」
返事をためらう彼女は視線を横に逸らして、言葉を探しているようだった。
それを見つめて、僕は答えを待ち続けた。
「…今は、言えない…」
やっと導き出された言葉が、これだった。
どうして、どうして…!やり場のない感情が今にも爆発しそうだった。
彼女を好きだからゆえの荒れ狂う感情は止められなかった。
「相原君…」
「何?」
「ここに、きて…」
感情的になっている僕に、彼女は自分の真横に来るように言った。
その理由がわからないまま彼女の言葉に従い、指定された場所に腰を下ろす。
二人の間には何も遮るものはない。
「相原君、キス…して…」
「えっ?」
あまりに唐突だった。
激しく沸きあがっていた感情が尻をすぼめた。
「言葉では伝えられないけど…こうすれば、伝わると思うから…」
小声でたどたどしく話す星乃さんの言葉が感情の壷に入り込んだ。
途端に“キスをする”という行為がどういう意味を持つのか、頭の中で反芻させられた。
「本当に、いいの?」
星乃さんは小さくこくりと頷いた。
周りを見る。もう子供たちは一人もいない。
誰もいないことを確認して彼女に近寄る。
呼応して彼女が目を瞑る。
その表情を間近で見つめながら、ゆっくりと距離を縮める。
そして、彼女の薄めの唇に僕の唇が触れた。
(んっ…)
初めて感じる異性の唇の感覚。
すぼまっていた感情が再び膨張して壷を占領した。
自分の腕を彼女の背中に這わせ、そのまま彼女をベンチに押し倒した。
腕にありったけの感情を込めて彼女を抱きしめた。
薄目を開けて彼女を見ると、彼女は泣いていた。


もう、この時点でどういうことか気づいてしまっていた。
星乃さんはもうすぐ輝日南から離れてしまう。
だから彼女は好きになった人に「好き」と言えないのだと。
そしてその好きな人が、紛れもなく“僕自身”なのだと。


離れたくない。離したくない。
僕の気持ちをより強く腕に伝えた。
彼女を抱きしめている腕をほどきたくなかった。
抱きしめている間、自分がいる場所がどこなのかさえ忘れていた。


起き上がって公園を見回す。
もう街灯が点いて僕たちを催促していた。
「そろそろ行かなきゃね」
「…うん」
押し倒したときに少しだけ乱れた制服を直しながら、星乃さんはハンカチで濡れた頬を拭いていた。
僕は彼女の手を取り、薄暗くなった坂道を時間をかけて下っていった。
二人の時間を、少しでも長く作れるように。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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 ギャツビー氏は変わった人だと思う。一途な恋心を持つことはあると思うが、その想いを尋常でない方法で適えようとしている。気が小さい人であると思う。もっと他のやり方があったのではないかと思う。 トム氏の人間性を好きになれない。卑しい感じがする。トム氏とギャツ ななのblog【2007/10/08 01:12】
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