キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Still in Love -9-

第9話です。
アニメ放映までに10話まで公開する予定。
いろいろと明らかになってはきてるんですが、まだ全体像が見えない…。




結美の一途な恋が加速する。
++++++++++


梅雨明けを予感させる強い日差しがグラウンドに降り注ぐ。
グラウンドでは色とりどりのユニフォームが舞っている。
ついに地区大会が始まった。
シード枠に入って1回戦のない輝日南高校は、練習の後で2回戦で対戦する高校の試合をベンチ入りメンバーだけで見に行った。
僕は列になったメンバーの一番端に陣取り、試合を見ているフリをしながら星乃さんとの会話を思い出していた。
星乃さんはどういうつもりであんなことを言ったのだろう。
あのときの淋しそうな表情は何を物語っていたんだろう。
これから先、僕たちはどうなっていくんだろう…。
答えの出ない堂々巡りの状態になっても、僕の頭は答えを導き出そうと心血を注いでいた。
彼女のことに比べれば、対戦相手のことも、試合のことも、どうでもよかった。
「相原、次の試合はリリーフ…」
僕が彼女にできることは果たして何なのか…。
また何をすれば、このモヤモヤは晴れるのだろうか…。
「おい、相原!」
「は、はいっ!」
何ボーっとしてるんだ、と僕の元に寄ってきた監督から檄が飛ぶ。
「2回戦まであと何日だ」
「はい、2日ですっ」
「お前は本当にそれを自覚しているのか」
一転して穏やかな口調。
ただ、それは監督自身が包んだオブラートに過ぎなかった。
「…すみません」
「悩みがあるなら言ってもらってもいいが、グラウンドにいる間はそれは持ち込むな。みんなの迷惑だ」
「…はい」
叱られてようやく自分の前に立ちはだかる現実と対面する。
予選は7月の中盤から2週間で行われ、甲子園に出るためには7回勝つことが条件。
大目標のためには2週間を乗り切る集中力がモノを言う―――僕にはその心構えが抜けていた。
「相原、次の試合はリリーフで出てもらう。わかったな」
「はい」
監督の強い言葉でさっきまでの雑念を無理やり振り払い、僕は終わりかけの試合を凝視した。
「ちょっと寄っていかないか」
「ああ」
試合後。
球場を後にした僕は、集中力を切らさないために柊を誘って輝日南川の河川敷に出向いた。
「君から誘ってくるとは珍しいな」
輝日南に向かう電車の中で、珍しそうな視線をまじまじと見せ付けながら柊は話し始めた。
「なんか文句あるかよ」
「いや、何もない。ただ…」
「ただ?」
「…君に何かあったというのはわかった」
まったく、相変わらず勘の鋭い奴だ。
僕はコウベを垂れるような仕草を見せながら、親友に心の中で礼を言った。


++++++++++


試合まで残り24時間。
今までにない張り詰めた空気がグラウンドを覆い尽くす。
初めて感じるその空気の中で、僕は明日の出番に向けてブルペンで調整を進めた。
「ふぅ」
テンポを取り直すためにマウンド上でひとつため息をする。
(いよいよ明日か…)
実感が湧かない、というのが本当のところだけど、そんなことも言っていられない。
僕は足をプレートにかけ、再びミットを見据えた。
「柊、お客さんだ」
練習も終わりに近づいたころ。
腕組みをした監督が隣のマウンドにいた柊を呼んだ。
「すまない、練習が終わったら先に行っててくれ」
「ああ、わかった」
監督に付き添われて、親友は校舎のほうへ去っていった。
僕は練習から上がると後を追うようにゆっくりと校舎に向かって歩き、グラウンドの前にあるベンチに座って奴を待った。
「すまない。待たせたな」
「誰だったんだ?」
「…こういう人だ」
数十分ほど待っただろうか。
戻ってきた柊から名刺を見せてもらった。
“○○球団 編成部”で始まったその名刺が何を意味しているか、僕はすぐに理解した。
「『明日は期待してるよ』だそうだ」
どんな大きなことでもまるで他人事のように言うのが柊らしい。
編成部―――つまるところ、スカウトと言われる人物が輝日南高校を視察に訪れた、ということだった。
そのスカウトが輝日南高校を地区大会連続ベスト4に導いた柊を追ってもなんら不思議はない。
「すごいじゃないか」
「上には上がいる。まだこれからさ」
スカウトに目をつけてもらえるのは高校球児でも一握り。
その中に入ったとなっても、あくまで冷静を貫く柊の性格が羨ましかった。


―――2回戦当日。
目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
思ったよりぐっすり寝られたみたいだ。
「行ってきまーす」
輝日南駅で他の部員と集まり、柊の追っかけの子たちに囲まれながら改札を抜けていった。
30分ほど電車に乗ってたどり着いた戦場は、前の試合の応援がやかましく響いている。「柊君」
「昨日はありがとうございました」
「頑張ってくれよ」
「はい」
柊は昨日会ったスカウトらしき人物と挨拶を交わしていた。
少しぽっちゃりしていて、貫禄を感じさせる険しそうな顔をしたその人に臆することなく話す柊。
そのそばで僕はただ萎縮していた。
「相原、今日は君にもお客さんのようだな」
「えっ?」
肩をすぼめながら選手出入り口に向かう直前。
柊は入場口前のベンチで本を膝に置いてひとり佇む女の子を指差した。
(星乃さん…)
『たとえ遠く離れたとしても』…あの日の言葉が脳裏によみがえる。
時計を見る。集合まではあと5分。
ちょっとだけでも話はできるはずだ。
「ちょっと行ってくる」
「すぐ戻ってこいよ」
「ああ」
バッグを柊に預け、僕は彼女の元に駆け寄った。
「星乃さん」
「あ、相原君…」
「どうしたの?」
「え、うん…ちょっと…」
野球に興味がありそうには見えない彼女がわざわざ球場に来るということは、何か理由があるのだろう。
ちょっと…と煙に巻いているあたり、真意がどこかにあるはずだ。
「これから、中…入る?」
僕がスタンドめがけて指を差すと、彼女はひとつこくりと頷いた。
野球を見に来たことは確かなようだ。
じゃあ、前に言っていた「好きな人」がこの球場のどこかにいるということか…。
「よかったら、今日一緒に帰れないかな?」
「えっ?」
彼女の考えていることが気になる僕は、彼女に問うために誘いをかけた。
僕の言葉を予想していなかったのか、彼女のつぶらな瞳がより円くなる。
「もし、いい結果を残せたら…だけどね」
「でも相原君、試合の後って疲れてるんじゃ…」
気を遣ったのであろう言葉を、僕は柔らかく首を振ってやんわり否定した。
「試合が終わったら、またここで待ち合わせしたい」
「で、でも…」
時計を見る。
もう行かないといけない時間だ。
「ごめん。じゃあ、また試合が終わってから」
「あ、相原君…」
今までより声がかなり上ずっている。
「何?」
「手…出してくれる?」
その言葉に従って右手を出す。
彼女はその手を両手で挟み込み、手の平に何かを落とし込んだ。
「そ、それじゃ…頑張ってね!」
「あっ、星乃さ…!」
僕が言葉を返そうとする前に、彼女は切符売り場のほうへと走っていってしまった。
(……)
星乃さんの姿が見えなくなって、僕はぎゅっと握られた右手を見つめた。
彼女のぬくもりを含んでいるその手をゆっくりと開け、手の平に置かれたものを見る。
開いて見えたのは、野球帽をかぶった男の子の小さなぬいぐるみ。
笑顔を湛えたそれは、鞄につけられるように頭に紐が縫い付けてある。
背番号も17番になっている。
きっと僕に似るように作ってくれたのだろう。
「いい試合しようぜ、相原」
「…ああ」
一部始終を見ていた柊の言葉に応える。
彼女がここに来た意味を、この場で胸にしっかりと刻んだ。
僕はそのぬいぐるみをわざと鞄のポケットに忍ばせ、ロッカールームで待つチームメートと合流した。
スポンサーサイト

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

当室はリンクフリーですが、ご一報いただけると幸いです。
御用の方はメールフォームからどうぞ。

来訪者数

最近の記事

カテゴリー

プロフィール

星乃裕一

Author:星乃裕一
SS書き5年目。

『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
『アマガミ』の二次創作もぼちぼちと。


mixi参加してます。
下記メールリンクより管理人宛にアド添付してメールをいただければご招待させていただきます。
あわせて感想などもありましたらどうぞ。

管理人メール

リンク

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。