キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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Still in Love -8-

第8話をお送りします。
いよいよ分岐ルート突入。
(ほんとはもうちょっと後の予定だったんですが)


ここではいつものようにあるヒロインのルートを公開していきます。
その他のヒロインルートは時間差でおまけ図書室に公開していきます。
ごめんなさい。


いよいよ予選まであと少し。
恋も待ったなし。
++++++++++


野球部が梅雨に悩まされている間にも、期末テストは刻々と迫ってきていた。
例のごとく学校からの部活中止令が下されると、僕たちは頭のスイッチを切り替えなければならなくなった。
中間テストでとんでもない目に遭った僕は、今回も柊の力を借りて図書館に篭ることにした。もともとはあんな噂を立てた人間が悪いのだけれど、元を辿れば先輩に行き着くだけにうかつなことは言えない。
「相原、今日は星乃さん来るかな」
「どうだかな」
毎度の茶々をさりげなく受け流し、僕は必要なものを鞄から取り出した。
彼女とのその後といえば、ちょくちょく教室で挨拶することはあったものの大きな進展はなし。
僕は部活。彼女は図書委員。
意図しない限り、共通点のない二本の線がいきなり急カーブを描いて交わるなんて事はない。その線を交わらせるために僕から話しかけてもよかったけれど、例の噂が頭を掠めて一歩を踏み出せずにいた。
一方で彼女からも話しかけてくることはなかった。
『男の子と話したことなんてないし…』と言っていたのだから、僕に会ったとして何を話していいのかわからないのかもしれない。
詰まらない距離に苛立ちは感じるけれど、きっかけもなかなか得られない。
星乃さんとの関係が進展しない間に、咲野さんや摩央姉ちゃんたちとは距離が縮まっている。
星乃さんが好き。でも他の異性との距離も気になる…僕は一人で微妙な心理状態に陥り始めていた。


「ごめ、ちょっとトイレ行ってくる」
勉強のはかどり具合が一段落したところで、僕はトイレに向かった。
ちらりとカウンターを見る。星乃さんはやっぱりいない。
少しがっかりしながら廊下に出る。
「あ、相原君」
「え?」
背後から僕を呼ぶ声。
振り返ると、赤い髪留めをした女の子がそこにいた。
「あれ?図書委員は?」
「今日は当番の日じゃないの」
「あ、そうなんだ…」
今日が当番の日じゃないとわかって、またがっかりする。
じゃあ、どうして星乃さんはここにいるんだろう。
「どうしてここに?」
「借りてた本を読み終えたから、返しに来たの」
「へー」
さっと視線を落とすと、確かに彼女の手にはちょっと厚めの本が携えられている。
図書室の貸し出し期間は2週間なのに、この本を全部読みきったのか…。
自分では到底考えられない芸当に心の中で感嘆した。
「相原君はどうして図書室に?」
「期末の勉強のためなんだ」
「もうそんな時期だものね」
「星乃さんは勉強しないの?」
「家でやってるわ。家のほうが集中できるし」
「僕なら絶対に寝るな」
「ふふっ。私も時々ウトウトするのよ」
「そうなんだ?意外だなー」
思わぬ形で舞い込んできた会話のチャンス。
当初の用事も忘れて、僕は彼女と廊下で立ち話を繰り広げていた。
時々見せてくれるはにかんだような笑顔が、僕には魅力的に映った。
「あ、これを返さなきゃ」
「うん」
「じゃあ、またね」
会話が途切れたところでキリがよくなり、僕たちはそれぞれの用事のために別れた。
催していたものを我慢していたことも忘れるほど彼女との時間は濃密だった気がする。
…そのかわり、目的地まではダッシュしないといけなかったけれど。


++++++++++


テスト前々日。
開会式を翌日に控え、野球部全員が体育館に集められた。
誰もがその目的を感じ取っているから、空気は異様なほど張り詰めている。
隣にいる先輩が、同級生が、後輩が、みんながライバル。
誰も口を利かなかったし、僕自身も利こうという気がしなかった。
「さて、今回の大会に登録するメンバーを発表する」
監督が現れて話し始めると、全員が息を呑む。
「まずピッチャー、柊!」
「はい」
落ち着いた口調で親友は背番号を受け取った。
奴をはじめとする春のレギュラー陣が順当に呼ばれ、マネージャーから背番号が渡される。
僕の名前は呼ばれない。
「次に控え。10番―――」
続いて控えメンバーが読み上げられる。
控えでベンチ入りできるのは9人。
練習試合で結果を残したんだから、監督はきっと選んでくれる。
顔の前で祈るように両手を組んだ。
「続いて13番、14番…」
続けて3年生が選ばれる。2年生の出番はまだない。
それでも一人、また一人と呼ばれるたびに焦りを感じる。
残る枠が少なくなるにつれて、心拍数はピークに達し始めていた。
16番が呼ばれて、いよいよ枠はあと二人。
「17番…」
相変わらず静まり返っているフロア。
監督に残った選手が飢えたような視線を注ぐ。
「相原光一!」
「はい!」
緊張を振り払うかのように、僕は大きな声で返事をした。
他の選手の突き刺すような視線を感じながら、監督のもとへ歩く。
「頑張れよ」
「はい!」
マネージャーから受け取った背番号を力いっぱい握り締め、僕はその手でガッツポーズを取った。


++++++++++


「終わったー!!」
テストが終わると僕たちはすぐにグラウンドに駆け出した。
カラカラに乾いたグラウンドにスパイクの音。
この感覚は本当に久しぶりだ。


夏初戦を直前に控えた最終調整。
梅雨で溜まりに溜まった鬱憤を晴らすように、僕たちは縦横無尽に動き回った。
しばらく休ませていた肩を柊や先輩ピッチャーとともにブルペンで温めなおし、実戦モードに心も体も切り替える。
僕の隣で投げている柊は、いつものように飄々としながら力強いピッチング。
僕も負けじと練習に力がこもった。
春に比べると日が暮れるのが遅くなったことで、練習量も今までより多くなった。
投げ込みも春よりかなり時間をかけて行われた。
ブルペンを出ると、心地のいい疲れが体全体を覆う。
「さて、軽く自主練やって終わるか」
「そうだな」
柊に誘われて軽い運動程度の自主練を終わらせ、僕は手洗い場で顔を洗った。
「お疲れ様」
「あ、咲野さん」
咲野さんもちょうど練習が終わった様子。
こうやって二人で話す、という以前あった光景が戻っている。
噂のことは気になるけれど、自分の中で頑とした気持ちがある以上は心配することもない。
「今日も頑張ってたね」
「大会が近いんだ」
「そっか…頑張ってね。応援してる」
「うん、ありがとう」
「じゃあね」
「うん」
いつものように手の平タッチを交わす。
するとポニーテールを揺らしながら、彼女は先に更衣室に走って行った。


「うわっ!」
更衣室を出ると、そこはさっきまでとは別世界だった。
急に降り出した雨はあっというまに霧と水たまりを作り出し、僕の行く手を遮った。
遮られた僕は急いで玄関に走る。
(あれ?)
玄関に着くと、見覚えのある子が雨宿りをしていた。
こんな時間まで何の用事だろう。
「星乃さん」
「あ、相原君」
「どうしたの?こんな時間まで」
「夏場は図書館の開館時間も延びるから」
「そっか」
土砂降りの雨をBGMにして、僕たちは濡れないように壁に寄り添って話した。
「傘、持ってないの?」
「ええ。まさか雨が降るなんて思ってなかったから」
確かに、部活を上がる前はまだ雲なんて見えなかった。
着替えているほんの10分程度でこの状態。こんなことになるとは思いもしなかった。
けれど、かえって僕には好都合だった。


ロッカーに二人きり。
初めて話したときとは全く違う雰囲気を感じて、妙に緊張する。
「雨、止まないね」
「…うん」
雨はさらにボリュームを上げ、さっきよりも勢いを増していく。
霧を作っていたそれはさらに水のすだれを作り上げ、3メートル先が見えなくなるほどになった。
「星乃さん」
「え?」
止む気配がないと感じた僕は、彼女に胸の片隅で引っかかることを尋ねた。
「星乃さんって、どんな男がタイプ?」
「どうしたの?急に」
「……」
何か言いかけて、僕はそれを飲み込んだ。
頭に浮かんだことは、今の空気で言うことじゃなかった。
言おうとする気持ちを口を真一文字にすることでこらえた。
だんまりを決め込んだ僕に何かを察したのか、彼女はようやく答えを口にした。
「私は、雰囲気のいい人がタイプかな」
「雰囲気のいい人?」
「ええ。特に優しそうな雰囲気の人が好き…かな」
(優しそうな雰囲気か…)
自分はどうなんだろう…と自問自答してみながら、僕は続けて訊ねた。
「そういう人に出会ったことってある?」
彼女はすぐに答えず、数秒置いてコクリと頷いた。
僕の中の何かが少し壊れた気がした。
彼女は続ける。
「…その人と想いを通じ合えたら、私はそれで幸せなの」
「そっか」
「たとえ、それが遠く離れてしまっても…」
「…えっ?」
一瞬、耳を疑った。
小さな声だったけれど、はっきりと聞こえた。
「ううん、なんでもないの。気にしないで」
「…わかった」
そう返事したのとは裏腹に、「気にしないで」という一言がとても重く感じられた。
この言葉の裏に何があるのか。いったい彼女は何を言おうとしているのか。
興味は瞬時にそこに集まっていた。
もう一度彼女の顔を見る。俯き加減のその表情は淋しそうだった。
―――やっぱり、何かある。
視線を元に戻し、僕は星乃さんの隣で一人思案していた。


「あ、雨…上がったみたい」
彼女の声。
「…本当だ」
空を見上げる。
どれくらい考えていたのだろう。
彼女が想っている人は誰なのか。
彼女はいったい何を伝えたいのか。
「遠く離れる」とはいったいどういうことなのか。
言葉の真意が見えず、一人だけで真っ暗闇に放り込まれたような感覚だった。
一方で雨が上がった空は、何事もなかったように茜色に染まっていた。
僕たちは立ち上がり、水たまりがまだ残る校門までの道を並んで歩いた。
「それじゃあね」
「…うん」
そのまま校門を出たところで、僕たちは別れた。


『たとえ、それが遠く離れていても…』
ベッドの上で腕枕をしながら天井を見上げる。
星乃さんが小声で言った一言が、耳の中で雨よりも何よりも大きく響いた。


この日の夜は、ほとんど眠れなかった。
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