キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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Still in Love -7-

第7話です。
野球部にとって梅雨は天敵。


明日夏を筆頭に摩央姉、結美、なるみ、深月…。
光一のハーレム状態を打ち破るのはいったい誰か。
これが今後の展開を左右します。
何せ15話構成なもので。
++++++++++


翌日は土砂降りの雨。
その翌日も雨。
そのまた翌日も雨…。
『いよいよ梅雨前線が日本列島を…』
家に帰ってテレビをつけると、どのチャンネルでもニュースで同じことを言っていた。
どうやら奴の機嫌が悪くなってしまったらしい。
「あーあ、お前があんないいピッチングするから」
「お前が負け投手になってたら練習できたのにな」
梅雨入りした途端に野球部の奴らに散々皮肉を言われ、コケにされた。
まるで僕が梅雨を持ってきた、と言わんばかりの口調だからたまらない。
別に好きで2回をパーフェクトに抑えたつもりはないのにこの扱い。
あの日の褒めっぷりは何だったんだ、と心の中でツッコんでやった。
「しかし、これからって時にいつもこれだもんな」
その点、先輩は落ち着いている。
部活に行くと、更衣室前で恨めしそうな表情を浮かべながら練習用ユニフォームに着替えた主将が空を見上げていた。
梅雨は屋外スポーツにとってのまさに“天敵”。
それをもたらす“奴”、つまり梅雨前線は一度暴れだすとなかなか機嫌を直してくれない。今年は機嫌がよほど悪いのか、梅雨入りが発表されてから奴は一週間まるまる暴れてくれた。
練習試合はつぶれ、グラウンド練習も不可能…と見事なまでに予定が全部狂ったせいで、監督までもご機嫌斜め。
僕たちは練習メニューでそのとばっちりをもろに受けるハメになった。
「おい、これ見てみろよ」
「はぁ!?」
教官室前に貼り出された一枚のプリントにチーム全員が驚愕した。
『野球部:日曜午後のみ柔道場。日曜以外は30分走および他の部活と共同でトレーニングルーム使用』
この時期だけ、普段グラウンドを使う運動部員は肩身の狭い思いをする。
野球部も例外ではないが、地区大会で連続ベスト4のチームでもこの扱い。
しかも毎日雨の中で30分走とは…。
学校の設備の悪さを憂う以外にどうすることもできなかった。


日曜日。
夜明け前に雨は上がっていたけれど、グラウンドは水たまりだらけでとても練習できる状態ではない。
早出して学校に来たけれど、柔道場は午前中だけ柔道部が使うことになっている。
そこで僕たちは待ち時間を利用して、砂で水たまりを埋める作業をすることにした。
「本当なら今頃ここで試合してたはずなんだよなー」
「まったく、誰かさんがいらんことをしてくれたからだ」
「…まだ言うかよ、お前ら」
トンボを持ちながら仲間たちがこぞって僕を弄る。
いつまでも一つのネタを引っ張られるのもうざったいけれど、僕も含めて皆が笑っているのは冗談が通じ合っている証拠だろう。
砂を運ぶ組と水たまりを埋める組に分かれて作業を始める。
工事現場の作業員をマネて頭に鉢巻きを巻き、一輪車に積まれた真新しい砂を水たまりに撒いてゆく。時々水たまりを踏みつけてしぶきを食らいながら、僕たちはひたすらグラウンド整備に精を出した。
3年生が登校すると主将から集合がかかり、昼からの練習の準備に取り掛かった。
これから使う柔道場は男子の柔道・女子のダンスといった体育の授業で使われる。
いつも柔道をするわけではないから、必要なときだけ畳を敷く仕組みになっている。
畳を除けた床は体育館フロアと同じようにニスでコーティングがされていて、インシューズでも大丈夫なようにされている。
僕たちはインシューズを履き、フロアで使える道具一式を柔道場に持ち込んだ。
全員が集まってから円になって、体操とストレッチを丁寧に行う。
ストレッチをするためにかがんでみると、なにやらカワイイ柄をした袋が落ちているのを見つけた。
(柔道部の忘れ物か…)
僕が気づいたのと同じくらいに、引き戸のあたりからしおらしい女の子の声がした。
「すみません」
部員が振り向く。
その視線の先には少し面食らった表情をした女の子がいた。
―――栗生さんだ。
近くにいたチームメートがヒソヒソ話を始める。
「これ、栗生さんの?」
「あっ!」
僕が袋の紐を持って見せると、彼女は僕のところに飛んできて袋をかっさらった。
しおらしさは微塵もなくなっていつもの彼女に戻っていた。
「そんなにじろじろ見ないでよね」
「じろじろなんて見てないよ」
「嘘ばっかり」
憎たらしさ全開のツンツンした口調が腹立たしくうっとうしい。
「せめて『ありがとう』ぐらい言えよな」
「はいはい、ありがとう。これで十分?」
まったく憎たらしいったらありゃしない…僕が苦虫を噛んでいると、チームメートが冷やかしにかかった。
「へー、栗生もそんなもん持ってんだな」
「これはもらい物よ」
「それにしても似合わないもの持って…ぐはっ…!」
わずか数秒の出来事に柔道場が静まり返る。
冷やかしに耐えかねた栗生さんは、冷やかしていたチームメートを背負い投げた。
あまりの早業にだれも反応できず、言葉も出てこない。
「余計な口は聞かない。それにセクハラよ、今の発言」
部員みんなが唖然とする。
「まったく、野球部にはデリカシーってものがないのかしら」
皆を無視するようにプイ、とそっぽを向くと彼女は足早に柔道場を去っていった。
投げられた本人は打ち所が悪かったのか立ち上がることが出来ず、そのまま保健室行き。
投げられる元を作った人間が「暴力反対!」と担架の上で叫んでいたのが滑稽だった。


「しっかし意外だったなー。栗生があんなの持ってたなんて」
「ああ」
「普段があまりに女っぽくねぇからな」
栗生さんの意外な趣味を知った僕たちは、帰り道でああだこうだと答えの出ない推論を重ねた。


++++++++++


やっと晴れたと思ったら次の日は雨。止んだと思ったらスコール。
梅雨前線の相変わらずの機嫌の悪さに辟易しつつ、僕たちは7月を迎えようとしていた。
雨が続く間に予選の組み合わせ抽選も行われた。
僕が2イニングを完璧に抑えた相手とは準々決勝で、春の大会で負けた選抜大会出場校とは準決勝で当たることに。
しかし、不安要素が拭いきれていないのが現状。
練習試合はまともにできず、グラウンド練習もできないために実戦練習が不足している状態。
これで上位に食い込めるのか、チームの間でも不安が募り始めていた。
唯一練習試合が出来たのは6月の終わり。
輝日南高校にとっては宿命のライバル・輝日東商業が相手だった。
予選で順当に勝ち進めば決勝で対戦することになるであろう相手。
しかし結果は0対4で完封負け。
僕はベンチ入りせずに試合を見ていたけれど、試合に出ているレギュラー組の動きは明らかに鈍かった。
チームは翌日に緊急ミーティングを開き、春の大会後にやったミーティングの復習を重ねた。
「予選まであと2週間だ。雨が続くだろうが、集中を切らさないように」
監督の言葉が重く響いた。



その帰り、玄関から帰ろうとすると上から綺麗な音が聴こえてきた。
(何だろう…)
ロッカーに戻って上靴に履きなおし、音のする部屋に向かって走った。
その音は階段を登るにつれて鮮明な音になり、やがてピアノの音とわかった。
僕が音楽室の引き戸の前に立つと、奏でられていた音がピタリと止んだ。
疑問に思った僕は戸を開け、中に入る。
中に入ると、ピアノの前で女の子がぽつんと立っていた。
「どなたですか?」
「あ、いや…すごく上手なピアノだなと思って」
「ありがとうございます」
もう少し警戒されると思っていた僕は、相手の反応に拍子抜けした。
近づいてみると、いつかの河原で見た彼女だとわかった。
相手もそのいつかを思い出したらしく、軽く口元を緩ませた。
「あ、先日の…」
「2-Aの相原です」
「私、2-Bの祇条深月と申します」
頭を下げるとふわりと髪が揺れる。
「この前は申し訳ありませんでした。うちの犬が機嫌を悪くしてしまったもので」
「いやいや、気にしないで。ああいうのには慣れてるから」
「本当ですか?」
「…ウソ」
「フフッ、面白い方ですね」
口元を押さえながら控えめに笑う祇条さん。
そのしぐさが前にも感じた“異次元”という感覚を喚起させる。
「そういえば、ピアノ弾いてたよね」
「ええ」
「いつも弾いてるの?」
「はい。音楽室の先生に許可をいただいて」
音楽室のある棟からグラウンドまではそう遠くない。
なのに全く聴いたことがない、というのはどういうことなんだろう。
練習に集中していたのか、はたまたグラウンドで飛び交う声が奏でられた音をかき消していたのだろうか。
「そっか。僕は今まで一度も聴いたことがなかったから」
「そうだったんですか…あ、ひょっとしたら」
彼女は事情を飲み込んだのか、窓に向かって歩いた。
「いつもは窓を閉めて弾いているんです。でも、今日はなんだか窓を開けて弾いてみたくて…」
ピアノの音は窓を閉めていても聴こえるけど、開けているときと閉めているときとでは当然音の響きも違ってくる。
相原さんが聴いたのは窓を開けていたからだと思いますよ―――そう彼女は説明した。
「今日は開放的な気分だった、とか?」
「まあ、そんな感じです」
彼女はまた控えめにクスリと笑った。


雑談を交わしながら時間は過ぎ、気がつけば夕日は地平線に沈もうとしていた。
そろそろ帰ろうという話になり、僕が先に教室を出た。
「きゃぁっ!」
「危ないっ!」
後発した祇条さんがドアのレールのところで躓いた。
慌てて振り向いて彼女の体を支えようとする。
でも支えきれず、僕の背中が床に叩きつけられた。
背が違った分だけ不意打ちのキスは免れたものの、彼女に覆いかぶさられて至近距離で見つめ合っている状態。
しかも抱き合っている…。ドキドキはすぐさま最高潮に達した。
「ご、ごめんなさい…」
慌てて彼女は立ち上がり、僕に手を差し伸べる。
「あ、ありがとう」
速まる鼓動に気づかれまいと平静を装いながら、僕は彼女の手を取って立ち上がった。
「お怪我はありませんか?」
「ああ、これくらいなら大丈夫」
心配そうな視線を向ける彼女に、僕の心臓がより速く反応する。
「すみません、私が不注意だったばかりに…」
「いやいや。祇条さんこそ大丈夫?」
「私はだいじょ…うぶ、です…」
彼女は一度しゃんと立ち上がったけれど、次の瞬間には足首をかばうようなしぐさを見せた。
歯を食いしばったような表情だから、痛みをこらえているというのが見てわかる。
「ちょっと保健室まで行こう」
「は、はい…えっ!?」
僕は彼女を背負い、階下の保健室まで走った。
普段から鍛えているおかげで、彼女ぐらいの女の子は軽々と背負うことが出来た。
保健室に着くと、帰り支度をしていた保健室の先生に無理を言って処置をしてもらった。
「本当にすみません」
「別にいいよ。僕も悪いから」
「いや、そんな…」
僕は何も言わず、唇に人差し指を立てて当てて見せた。
「…はい」
観念したようにようやく彼女は微笑んだ。
祇条さんは誰かを思いやる気持ちを常に持っている人だ。
今日会って、彼女の一面を知った。
「気が向いたらでいいから、グラウンドを覗いてみて」
「ええ、そうさせていただきますね」
帰り際に僕が野球部であること、晴れている日はグラウンドで練習していることを伝えた。
すると、次の日にはさっそく彼女の姿を音楽室につながる外階段の踊り場で見つけた。
「どうしたんだ?祇条さん。ずっと野球部の練習ばかり見てるんだが」
ランニングをしながら、柊が勘のよさを働かせて彼女の存在に気づく。
「…さあな」
僕は何も知らないフリをしながら、昨日の出来事を思い出していた。
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