キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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Still in Love -6-

1週間ぶりの第6話。
光一のリベンジの結果はいかに。


ようやくお嬢・祇条深月が登場。
そして明日夏が動き出す。




最近のBGMはもっぱら「どんなときも。’07」(槇原敬之)だったりします。
原曲好きと相まっていろいろありまして。
++++++++++


6月。
あと1ヶ月もすれば選手権大会の予選が始まる。
「大会まで1ヶ月だ。前も言ったが、サバイバルになるから気を抜くなよ」
「はいっ!!」
監督や主将はその先の最大目標に向かってチームの士気を上げようと躍起になっていた。
僕たちの気持ちも着々と夏に向けて整えられていった。
「今日も行くか」
「ああ」
あの日以来、柊と輝日南川の河川敷で自主練をする機会が増えた。
お前を放っておけない―――奴は薄暗くなったこの場所で、キャッチボールをしながら僕にこう言った。
心の中に居座っていた何かが氷解して、僕は柄にもなく泣いた。
投げられたボールがぼやけて見えず顔に当たって、二人で笑いあった。
痛かったけど、なんだか心地のいい痛さだった。


柊はデキる人間だから、誰かに妬まれる存在ではある。
でも、デキる人間と付き合うことは決して損ではない。
柊のいいところを学べば、自分自身のレベルアップにつながるのだ。
それが親友なら文句はない…つくづくいい親友を持ったと思う。


僕たちが輝日南川に着いたちょうどその時。
「なあ、相原」
「ん?」
「あっち、見てみろよ」
柊が指を差した先には、犬を連れた一人の女の子が河原を歩いていた。
細身の体に薄い黄色のワンピースをまとっている。
「あれって…」
「そう、“あの子”だ」
スラッとしたその肢体に目が釘付けになる。
輝日南では知らない人はいない、と言われる旧家・祇条家。
僕たちが目にしたのはその家の令嬢―――祇条深月だった。
こんな時間に彼女に会えるとは思わず、僕は興味本位で見つめてしまう。
彼女はその視線に気づいたらしく、僕のほうに顔を向ける。
(どういう反応が返ってくるのだろう…)
不安に思っている僕をよそに、彼女は僕に笑顔で会釈してくれた。
条件反射で僕からも会釈を返す。
すると連れていたドーベルマンが感づいたのか、僕たちとは反対側に祇条さんを引っ張った。
「どうやら犬に嫉妬されたようだな」
「…うるさいよ」
彼女がその犬に叱りつけているのを見ていると、冗談めかした言葉が耳元で聞こえた。
犬がおとなしくなると、祇条さんは申し訳なさそうな表情をしながら僕たちにペコリと頭を下げて去っていった。
「…あの子が同級生なんだよな」
「ああ」
姿が見えなくなった後で、柊と二人して余韻に浸る。
彼女と目が合った瞬間に感じた異次元にいるような感覚。
伸びた背筋。整った姿勢。ニコリとしたときの表情。
眩いばかりの透明感。
彼女の放つ何もかもが脳裏にはっきりと刻まれる。
「まあ、俺たち一般庶民には届かない高嶺の花さ」
「…そうだな」
柊の冷めた声が耳に刺さる。
“高嶺の花”という表現がこれほどまでに似合う人も珍しい。
同じ学校に通っていて同級生でもあるのに、ふだんは感じない距離を感じる。
彼女の存在そのものが“異次元”だからかもしれないけれど。
「さて、練習に入るか」
「…ああ、すまない」
また奴の声が聞こえて、現実に呼び戻される。
僕はここでうつつを抜かしているわけにはいかないのだ。
急いで鞄からグローブを取り出して、僕はフワフワしていた気持ちを引き締めなおした。


++++++++++


6月の半ば。
待っていたリベンジのチャンスが巡ってきた。
今回の相手は春の大会の準々決勝で勝ったチーム。
相手に不足はない。
「出番あるぞ。準備しておけ」
6回を終わって5対3。
ビジターの輝日南高校がリードしてゲーム終盤を迎えていた。
監督に指示された僕はブルペンに歩き、キャッチャーからボールを受け取った。
マウンドに上がる。
ホームベースの先にミットが見える。
(…あっ)
前回の悪夢を思い出して、手が震えだす。
ったく、こんなときに…。
「なあ相原、こんな言葉知ってるか」
「…えっ?」
緊張を鎮めようとやきもきしていたところ。
ベンチにいたはずの人の声がした。
「キャ、キャプテン…」
いつのまにか、主将がブルペンに来ていた。
「『緊張しない人間は大成しない』。ある人物の名言だ」
「……はい」
緊張が解けず、返事をするのが精一杯。
まだ指がプルプルと震えている。
「お前って奴は…」
「うっ!」
主将はあの日と同じように僕の尻を叩いた。
ムチで打たれたような強烈なビンタを食らって、ぶたれたところがヒリヒリする。
「痛いだろ」
「…はい」
「痛いと思えるならまだ大丈夫だ」
主将はニヤリと白い歯を見せ、今度は軽く腰の辺りを叩いた。
「前にも思ったが、お前の線の細さは目を見張るものがあるな」
「…それって皮肉ですか」
「そういうことが言えるなら早く練習を始めろ」
痛がる僕を見て、笑いながら主将は僕の頭をコツンと殴った。
僕もつられて頬が緩む。
―――そうか、そういうことだったのか。
主将がわざわざブルペンまで来た理由がわかった。
僕は主将に会釈して背を向け、再びブルペンのプレートに足をかけた。
ボールを握る手の震えはいつしか止まっていた。


「ピッチャー、相原」
5対3のまま8回裏を迎え、僕の出番が回ってきた。
ブルペンからマウンドに向かおうとすると、監督からの鋭い視線を感じる。
…もうミスは許されない。それは重々わかっているつもりだ。
『緊張しない人間は大成しない』
僕は主将との会話をもう一度頭で咀嚼しながら、ダイヤモンドの中心に登った。
登ったところで「緊張したっていいじゃないか」と開き直った。
ホームベースは遠くない。
キャッチャーミットもしっかりと見える。
一度振りかぶり、思い切り腕を振り抜く。
ボールを掴み取ったミットはいい音を立てた。
(…よしっ)
この一球で抱えていた不安が吹き飛ぶ。
きっとうまくいく。そう信じて投球練習を済ませた。


主審のプレイコールがかかり、一度大きく息を吸う。
キャッチャーからのサインに頷く。ミットを構えたのは右バッターの外角。
そのミットめがけて僕は力いっぱい腕を振った。
「ストライーク!」
主審の右手が上がるのを見て、さっきの自信が間違いではないことを確信する。
返ってきたボールに微笑み、「今日は大丈夫」と自分自身に言い聞かせる。
再び外に構えたキャッチャーミットをめがけて腕を振る。
バッターのバットが動く。
鈍い音を発して打ち返された球はファールゾーンに転がっていった。
2ストライク。
(あと1つ…)
ロージンを手に当て、キャッチャーからのサインを待つ。
キャッチャーは低めの変化球を要求する。
僕はそれに頷き、振りかぶる。
(うりゃぁっ!)
腕を思い切り振りぬいた。
バッターはピクリと動いたけど、バットは止まっていた。
「ストライク!バッターアウト!」
外角ギリギリに放った変化球が決まった。
初めての奪三振。
(やった!)
思わず拳を握り締める。
「その調子だ、相原!」
主将から飛んできた檄に笑顔で応える。
自然と頬の筋肉が柔らかくなっているのに気づいた。
気持ちが乗ってきた僕は後続も打ち取り、相手打線を三者凡退に切って取っていた。
今日は気持ちがいいくらいコントロールが定まっている。
この前の自分とは全く違う。
「なかなかやるな」
「前とは大違いだぜ」
バックを守ってくれている先輩たちに褒められながらベンチに戻る。
監督も拍手をして迎えてくれた。
「もう1回、行くか?」
「はい!」
今日は行ける気がする。
監督に二つ返事で続投を志願した。


続く9回も三者凡退に抑え、輝日南高校の勝利に貢献することが出来た。
「相原、ナイスピッチング!」
「成長したな、お前」
試合の後、チームメートから次々と言葉をかけられた。
前回のことがあったから、こうやって言ってもらえるのが嬉しかった。
そして、何よりリベンジを果たせたことが嬉しくて仕方なかった。
2回を走者も出さず完璧に抑えるなんて、予想以上だ。
「これなら合格点だな」
監督からも褒められたことで、失っていた自信を取り戻した。


++++++++++


「相原君?」
試合の後、気分よく輝日南に帰ってきた僕はチームメートと別れた後で咲野さんに会った。
駅前で見かけた彼女は部活帰りらしく、スポーツバッグを肩にかけていた。
「咲野さん」
「なんだか嬉しそうだね」
「うん。試合でいい結果が残せたんだ」
「それはよかったね」
近くのベンチに向かって歩きながら言葉を交わす。
満面の笑みを浮かべる彼女を見て、ホッとする。
「でも、ね」
「ん?」
ベンチに腰を下ろすと、二人の間の空気が変わった。
彼女を見ると、さっきとは違って寂しそうな表情に変わっていた。
「ずっと心配してたんだ。なんだか最近、様子が変だったし…」
「えっ?」
「私と最近話してくれないし、自主練も別のところで始めたみたいだし…」
「……」
『いい加減噂になってることに気づけよ』―――飛んでいたあの日の言葉が鮮明に蘇る。咲野さんと会えば、また噂が広がる。それは僕にとっても彼女にとっても不本意だ。
そう思って距離を取っていた。
本当の理由を、本人を目の前にして簡単に言えるわけがない。
「何か、あったの?」
「いや、別に何もないよ」
「本当に?」
「うん、本当に」
「そっか。それならいいんだ」
でも噂はただの噂に過ぎない。僕と彼女は友達。
自主練だって一人でやっていたのが柊と一緒にやることになっただけ。
それが真実じゃないか。そう言い聞かせた。
「じゃあ、明日からまた会えるよね」
「…うん」
「よかった~」
何かから解放されたように、咲野さんはのけ反るようにひとつ伸びをした。
僕も気が少し楽になったので、彼女の真似をして伸びをする。
「ねえ」
「何?」
彼女が伸びをする僕の手を握ってきた。
「こうすると、何かを分かち合った気分にならない?」
「…そうだね」
何かのスポーツであった、選手全員が手を組んで観客に礼をするシーンを思い出す。
「僕たちは何を分かち合ってるんだろうね」
「そうだなぁ、スポーツをする人間同士の友情かな」
「友情…か」
僕と咲野さんの間に芽生えている友情を、彼女の体温で確かめる。
いつも交わす手の平タッチとは違う感じがして新鮮だった。
「実は、ね」
「ん?」
互いに手を握ったまま、咲野さんは言った。
「相原君と会えなくて…すっごく寂しかったんだ」
「……」
「いつも会って話してたのに、それが突然なくなって…。いつも一緒にいる人がいなくなるのって、こんなに寂しいんだ…って気づいたの」
話すにつれてどんどん哀しげな表情と口調になるのが見てわかった。
「サッカーをしているときは集中してるのに、終わったら何か物足りなくて。何か違う感情が私の中で……ごめんね。私、何言ってんだろ」
「咲野さん…」
ひょっとして、彼女は僕のことを…。
今まで思いもしなかったことを頭に思い浮かべる。
「…もう、何で赤くなるの?」
「えっ?」
慌てて頬に空いているほうの手を当てる。
…妙に熱い。
「相原君のバカ…」
絡まっていた指がほどかれ、彼女が離れる。
僕と彼女の間にわずかながら距離が生まれる。
「…ごめん」
自分のとんだ勘違いだったらしい。
でも、彼女の頬も見るからに真っ赤になっていた。
それを見て吹き出す僕。
すると彼女もふくらせていた顔を次第に緩め、最後には笑みを見せてくれた。


彼女との距離を元に戻すことは出来た。
いや、それ以上の展開が生まれたのだと僕はわかった。
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