キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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Still in Love -5-

甲子園編第5話です。
いよいよヒロインたちが本格的に動き始めます。


今回は栗生さんが登場。(お嬢はもう少し後で…スミマセン)


ツイてないときはとことんツイてない。
でも、きっかけはどこかに転がっている。


しかしいい男過ぎるぜ、柊。
++++++++++


『相原君』
『何?』
『相原君って、好きな人…いるの?』
『…うん』
『私も…ね、好きな人、いるの―――』


「光一」
「……」
「光一」
「…んん」
「こ・う・い・ち・くん」
「…ほ…し…の…さ…」
「はよ起きんかい!」
「いてぇっ!」
星乃さんと友達になった翌日。
摩央姉ちゃんが家に来た。
「…おはよ……まお、ねぇ、ちゃ…」
「なーに寝ぼけてんのよっ。早く学校行くわよ」
機嫌の悪そうな低い声が僕を叱りつける。
ベッドの柵に肘をかけていた摩央姉ちゃんは、まだ寝ている僕からタオルケットを引っぱがした。
朝からビンタに布団の引っぱがしとは刺激の強い起こし方だ。
せっかくいいところだったのに…。
「人の部屋に勝手に入ってくるなよな…」
さっきまでの余韻に浸りながらゆっくりと体を起こす。
「起こしても起きてこないんだから仕方ないじゃなーい」
起こされたという覚えが全くない。
…寝ていたんだから当然か。
「でさ、光一。『ほしの』って誰?」
「え、あ、それは…」
「さっき口にしてたわよね」
起きたそばから摩央姉ちゃんに責められる。どうやら寝言に引っかかったらしい。
僕はすぐに返事が出来なかった。
摩央姉ちゃんが目前にいる手前、「好きな人の名前だ」と言いづらい。
寝起きの頭を働かせてどう言おうか思案していると、相手は何かを感じ取ったらしく表情を変えた。
「ふーん、光一にも好きな子はいるんだ…」
おちょくるような口調ではなく、切なさとか愁いといった類のものを感じさせる静かな口調。そこになんとも含みのある言葉と摩央姉ちゃんの勘の鋭さが加わって、僕は内心うろたえた。
しまった、という感情が体を覆う。
と同時に、あることが頭の中に浮かんできた。
それは摩央姉ちゃんが僕のことを好きである、という可能性。
まさか…とは思うけど、言葉に含みを持たせている理由がまさにこれで、しかも現実になろうものなら咲野さんとの一件どころでは済まされない。
何と言っても摩央姉ちゃんは学校中の男子の注目の的。
この人と付き合う、というのは学年を問わず学校にいる多くの男子の夢。
近い間柄の人間に向けられるプレッシャーはとてつもなくデカい。
…幼馴染、という立場は時に損をする役回りらしい。
「それにしても、摩央姉ちゃんが来るなんて珍しいな」
「えへへ、私が頼んだんだ~」
少し重くなった空気を換えようと僕が問いただすと、ドアのそばにいた菜々が事情を説明した。
試合のあった2日前の夜、摩央姉ちゃんと菜々は二人でヘコんでいる僕を励ますためにメールで打ち合わせをしていたらしい。
昨日決行する予定だったのが、摩央姉ちゃんが低血圧のせいで起きられずおじゃん。
今日はその仕切りなおしということだった。
最近はずっと部活だけの付き合いになっているから、たまには名前で呼びたい…という摩央姉ちゃんのわがままも理由に含まれていた。
確かに今は部活の都合でなかなか二人で過ごす時間がないから、昔のように名前で呼び合えるのは貴重な時間ではあるけれど…。
嬉しいというか残念というかびっくりというか、僕の中で感情が絡み合っている。
「そういえば、今…何時?」
一度伸びをしながら目をこすっていると、目の前に目覚まし時計が差し出された。
見ると時計の針は8時をとっくに回っている。
…これはマズイというレベルじゃない。
「下で待ってるから、早く朝ごはん食べて出てくるのよ」
「わかったよ」
寝癖でボサボサの髪を手グシで直しながら、制服をクローゼットから取り出す。
二段ベッドの柵に制服のかかったハンガーを引っ掛けてから、二人を外へ追い出しにかかる。
「じゃあちょっと外に…」
「ね、光一…」
「えっ?」
床に立っている僕に対して摩央姉ちゃんは指を差した。
その指の向く先を見た僕は思わずその部分を手で隠す。
とても異性に見せられる状態ではないことに気づくも、時すでに遅し。
「ま…ま、待ってるから早く着替えるのよ」
「あ、摩央姉ちゃん!」
顔を真っ赤にさせた摩央姉ちゃんが、状況を飲み込めていない菜々を連れて慌てて部屋から出て行った。
バタン!と強くドアを閉める音が耳に響く。
(…最悪だ)
朝特有の“分身”のしわざとはいえ、もうひとつマズイというレベルを通り越してしまった。そそくさと着替えて階段を駆け下りると、玄関にはすでに二人の姿はない。
せっかくの機会を台無しにしてしまったことが確定する。
それでもしょんぼりしている時間はないので朝食をパクついて歯磨きを1分で済ませ、僕はリビングの時計を見た。
―――8時20分。
家から学校までは歩いて15分。遅刻か否かのボーダーは8時半。
となると、手段は一つしかない。
僕は鞄を背負って30分走ばりのスピードで走った。
前に進むたびに胃が浮いてくるのがわかったけど、そんなことは気にしていられなかった。


道中で人混みや信号に前を阻まれてイライラしながら、一度も歩くことなく学校まで来た。
が、正門近くの信号が青になる瞬間に無情にも正門が閉じられてしまった。
「相原君」
朝からこの声を聞くことになろうとは。
まったく…今日もツイていない。
声の主は栗生恵。
僕のクラスの風紀委員で、火曜と金曜は遅刻チェックのために正門前に立っている。
風紀委員にぴったりの勝気な性格で、正義感と気の強さは男子顔負けだ。
実家が道場を営んでいるために柔道の腕前は相当だから、下手にからかうとぶっ飛ばされる。
僕も廊下で遊んでいて大外狩りの“被害”に遭ったという苦い経験を持つ。
「今何時か知ってる?」
わざとらしく腕時計を見せてくるあたりが嫌味ったらしい。
「…8時31分」
「どういうことかわかってるわよね?」
この遠回しな言い方がもっと嫌味ったらしい。
遅刻よ、と素直に言ってくれたほうがよほど嬉しい。
「で、何回目?」
「今年初めて」
「初犯ね…仕方ない、今回は見逃してあげる。次やったら容赦しないんだから」
名簿にチェックを入れた栗生さんは校門を開け、僕を中に招き入れた。


++++++++++


試合でのミス。居眠り。そして今日の朝…。
何でこうツイてないんだろう。
今日は居眠りしなかったけれど、一日じゅう摩央姉ちゃんは口を利いてくれなかった。
試合のことでただでさえ練習に身が入らないのに、摩央姉ちゃんにこの扱いを受けるとキツイものがある。
そして、今日もグラウンドにいるあの子の姿を見てしまった…。


通常練習を終えた僕は自主練を省き、一人で「里なか」に来た。
「…はぁ」
「先輩、ため息ばかりじゃわかりませんよ?」
「ん、ああ…」
なるみちゃんに言われることももっともだ。
それなのに出てくるのがため息ばかりで、どう言葉にしていいかわからない。
片想いしている女の子と知り合えたことで、野球以外の日常生活に刺激は生まれた。
でも、野球のこととなると未だに気が進まない。
練習に身が入らないし、このままなら甲子園なんて夢のまた夢―――ずっと抱いていたたった一つの目標が遠のいてゆくのを止められない。
それに加え、咲野さんにこの先どう接していけばいいのかわからないまま。
萎えかけた野球への想いと異性間の友情が生み出した苦痛を抱え、「里なか」でひとり肉うどんをすすっていた。


「多分ここだろうなと思ったよ」
「…柊」
いつもと違うメニューを平らげた僕のところに、自主練を終えたらしい柊が帽子をかぶったまま近づいてきた。
なんだか気まずくて空のどんぶりに顔を埋めたくなる。
「今日も自主練しなかったんだな」
「……」
「まあ、あんなピッチングをしたんじゃ監督にきつく当たられても仕方ないだろう」
「……」
「でもな、相原。俺の初登板を忘れたのか?」
「……」
「その様子だと、忘れていたようだな」
奴の一言で、忘れていたあの日の記憶がふっと呼び起こされた。
柊の初登板は1年前の夏の予選。
3回戦まで進んだ輝日南高校は、その3回戦で背番号15をつけた1年生の柊を先発マウンドに送った。
入部当時から「輝日南きっての逸材」と言われた存在だったから、監督も期待していたのだろう。
…ところが3回で7失点。
ストライクが入らず、カウントを取りに行った球を打たれる―――という僕と全く同じミスだった。
試合後半に打線が爆発してうちのチームが勝ったものの、試合後の奴は珍しく感情を爆発させていた。
その日だけは、端正な顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。
柊がその後先発することはなく、ベスト8を賭けた試合でコールド確定後に投げただけ。
不動のエースも今では考えられないほどの扱いを受けていた。
「そういえば…そうだったな」
今の柊がどうしてここまで冷静でいられるのか、僕はわかったような気がした。
「俺だって完璧な人間じゃない。たまにはミスもする。でも、そのミスを生かすも殺すも自分自身なんだ」
「柊…」
『生かすも殺すも自分自身』。奴はミスを糧にしてエースにのし上がった。
片や僕はどうだ。
ミスにくじけ、練習をおろそかにし、あろうことか噂にまで振り回されていた。
しまいには一人で何もかもを抱え込んでいた。
最も頼れる親友を持ちながら。
「監督はお前にもう一度チャンスをくれると言ってるんだ。それに応えるのが、君のなすべきことだと俺は思う」
この親友は僕が躓いた問題で憎らしいまでに完璧な解答を示す。
こいつが親友でよかった―――今更だけど、確信した。
さらに柊は続ける。
「そして、君が自主練に来ない理由はもうひとつあるよな」
「……」
やっぱり奴は気づいていた。
「これは俺も立ち入れない領域だ。でも、逃げていても何も解決しないんじゃないのか?」
「……」
全くその通りだ。
僕は『いい加減気づけよ』という一言に囚われて、ただ逃げていただけだった。
「君が前言ったように彼女のことを本当に友人だと思うのなら、胸を張って会えばいい。仮に下心があっても、な」
僕の肩を叩きながら、諭すような口調で柊は話してくれた。
…もし下心があったとしても、僕は彼女のことを友人と思っている。
だったら、やるべきことはただひとつ。
自分から離していた彼女との距離を元通りにすることだ。
「今から輝日南川まで行くか」
「ああ」
やるべきことが見えた僕は、さっきまでの僕ではない。
僕の中でくすぶっていた火が、炎となって燃え上がった。
再び、夢のために立ち上がると決めた。
「先輩、これ持って行ってください」
「え?」
勘定を済ませようとすると、なるみちゃんが厨房から三角の包みを持ってきた。
「私からの気持ちです」
「…ありがとう」
「それは柊先輩と練習が終わってから食べてくださいね」
持っていたお盆で顔を隠したなるみちゃんは、お代を取るとそのまま厨房に走っていった。
(何だろう…?)
ぬくぬくとした感触がする。
中に何が入っているのか、形と温度からなんとなく見当はついた。
「モテモテだな、相原」
柊の余計な一言に苦笑いしつつ、実はなるみちゃんの気遣いがすごく嬉しかった。
僕はその包みを鞄にしまいこんで、柊とともに輝日南川に向かった。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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