キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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Still in Love -4-

甲子園編第4話です。
実は3話で取り上げる予定だったネタだったり。


我らが結美が再登場。トモちゃん初登場。
あとはお嬢と栗生さんだ。


mixiでは1話ごとのちょっとした解説&ネタバレをやっています。
参加されている方で興味のある方は右部プロフィールにリンクを張っていますので覗いてみてくださいませ。
++++++++++


部活中止令の中でも僕は勉強の合間を縫って自主練を重ねた。
誰もいないグラウンドで、自分のスパイクだけが砂を蹴る音を響かせる。
その音を聞くと、グラウンドが自分だけの空間になったみたいで心地がいい…はずだった。
それがあの日を境に、そういった気持ちを持てなくなってしまった。
『いい加減噂になってることに気づけよ』―――チームメートの一言は僕に重くのしかかる。
自主練を終えると、必ず咲野さんがグラウンドの端で練習しているのを見かけた。
でも、あの一言を意識してしまって声をかけられなかった。
出会ってからというもの、自主練の後は必ずと言っていいほど会って話していたのは事実。
だから勘違いされても仕方ない。
二人が男と女である以上、頻繁に会っている人間が「下心がない」と言ったとしてそう簡単に理解されるはずはないのだ。
あの日は何とかみんなをごまかしながら説き伏せたけど、「全然下心がないか?」と聞かれて「ない」と断言できる確信はない。
ただ実情に合わない噂を立てられて不快なのも、また否定しようがない。


気分がすぐれないまま、僕はテスト用紙とにらめっこする生活に突入した。
何日も同じことで悩んでいると、心が少しずつ荒んでいくのがわかる。
いつしか勉強に集中できなくなり、テスト週の後半では途中でテストを投げ出して机に突っ伏していた。
自主練の集中力は落ち始め、モチベーションも確実に下がっていた。
そんな中。
中間テストが終わった日、監督は僕たちを体育館に招集しミーティングを開いた。
「来週からの練習試合では夏で使えそうな奴をどんどん使っていく。学年が何年だろうが関係ないので心得ておくように」
ミーティングの冒頭でこう言った後、監督は意味ありげにチラリと僕を見た。
―――何かある。
その僕の直感はズバリ当たり、ミーティングの後で僕だけが監督に呼び出された。
「監督、何でしょうか?」
「まず来週だが、お前にチャンスをやる。だからちゃんと調整しておけよ」
「は…はいっ!」
やっと来た。
練習でのアピールがようやく実り、僕は相手が格下ながら練習試合で登板する機会を与えられた。
やっとのことで掴んだチャンス。
抱えていた心の中のモヤモヤが飛んでいった気がした。
「相原、顔がにやけてるぞ」
「えっ?」
嬉しくて拳を握りながら教官室から出てきた僕を待っていたのは、先輩からの冷やかしだった。
「ついにコイツもデビューか」
「ったく、ちょっとは出番のない先輩に気を遣えよな」
「ほんっとだよ」
「ま、30分走で俺らを差し置いていつもトップならしょうがねぇけどな」
冗談っぽく皮肉を言われながら、僕は先輩たちに頭をポコポコと叩かれた。
監督に呼ばれる―――このチームでは、良い兆しがあったときにだけ起こる出来事。
先輩からこういう洗礼を浴びるのは当然かもしれない。


実際、そのときは自分でもわかるほど顔がニヤついていた。
それでも自分はいつもの自分でいるつもり…だった。


++++++++++


1週間後。輝日南高校のグラウンド。
練習試合は4回を終わって6対0。輝日南高校のペースで試合は進んでいた。
柊が相手打線をパーフェクトピッチングに抑える、というおまけつきらしい。
5回の途中から僕はブルペンで肩を作るように言われ、出番に向けて最終調整をする。
「とりあえず俺のミットだけ見ておけ」
今日はベンチスタートの主将が、レガースをつけてブルペンキャッチャーをしてくれることになった。
「…はい」
返事はするけど、主将の言葉が頭に入ってこない。
ボールを握ろうとすると指がプルプルと震えている。
(おかしいな…)
どことなくいつもと違う感覚が僕の身に襲い掛かる。
その指を見て、主将は僕の尻をミットで一発ぶった。
「次の回からは俺もマスクをかぶる。だからその練習だと思え」
「…わかりました」
主将の言葉で自分を説得しながら、僕はスパイクでブルペンの土をならした。


好投した柊の打順のところで代打が送られ、いよいよ自分の出番が回ってきた。
「相原、頑張れよ」
ベンチに下がったエースの励ましに無理やり笑顔を作って、僕は6回表のマウンドに向かった。
少し小高い丘の上に立つと、いつもとはまったく違う空気と距離を感じて身震いする。
(…ふぅ)
ピッチャープレートの上で大きく息を吐いて、投球練習を始める。
一球、また一球。
ブルペンで覚えた違和感が、投げれば投げるほど大きくなる。
…こんなに、こんなにホームベースが遠いなんて。
『自信持って投げて来い』
主将は拳でミットを鳴らしてジェスチャーをする。
けれど、距離感を失った僕にはもはやそれも届かなくなっていた。
相手の攻撃は9番打者から。
その打者への初球。
(…あっ)
投げた瞬間ボールとわかるほど大きく逸れた。
バッターがいるから力んだのかな―――ロージンバッグを手に当て、再びプレートに足をかける。
キャッチャーからは落ち着け、というジェスチャー。
それに形だけ頷いて投げ込んだ2球目。


ど真ん中の棒球。


キーンという金属音とともに打ち返された打球は、ライナーでレフトフェンスの向こうに運ばれた。
打球を目で追っていた僕は、打球の行く先をただ呆然と見つめていた。
マスクをかぶっている主将が慌てて僕のところへ駆け寄ってくる。
「おい相原、緊張しすぎだ」
「は、はい…」
この一言で、いつもの自分ではないとようやく思い知らされた。
僕は自分を失っていることを忘れるほど、いつもの自分の“フリ”をしていたのだ。
「1点はしょうがねぇ。だがこれからだ」
僕を囲む内野陣全員が頷く。
頑張れよ、と主将はミットで僕の尻を再び叩き、ポジションに戻った。
「打たれても俺らが守ってやるから、キャプテンのミットだけ見てな」
「…はい」
バックを守る先輩にも尻をポンポンと叩かれ、僕は再びバッターと向き合った。
…でも、制球が定まらない。
1番打者に四球を与えたあとはかろうじてバントで1アウトを取ったけれど、3番・4番には四球、四球…。
1アウト満塁。自分でピンチを広げてしまった。
(…くそっ!)
自分自身に苛立った気持ちをロージンを握る右こぶしに込める。
マウンドにその握っていた小袋を叩きつけ、上を向いて大きく息を吐いた。
そしておもむろに正面に向き直って5番打者を迎えようとしたとき。
(あっ…)
見覚えのある顔がバックネット裏に見えた。
―――星乃さんだ。
見ると、週末なのに何故か制服姿だった。
鞄の紐を肩に掛けた彼女は、僕の視線に気づいたのか少し俯いていた。
(このマウンドで、彼女の前で、いいところを見せたい)
僕の中にある一つのスイッチが反応する。
僕はキャッチャーのサインに頷いて、一球目を投じた。
…でも、その球が向かったのはまたもストライクゾーンの真ん中だった。
カキーン!と快音を響かせて伸びた打球は左中間を破り、塁にたまっていた走者がホームに還ってくる。
一人、また一人。
バックアップでキャッチャーの後方に回っていた僕は、還ってきた走者がチームメートとハイタッチを交わす光景を間近に見せられた。
さらに三人目の走者が還ってくるところで、外野からの返球がキャッチャーに送られてくる。
「…セーフ!」
審判の判定を聞いた僕はその場でうなだれた。
星乃さんとこの日おそらく一番近い距離にいたであろう瞬間の僕は、この日で一番カッコ悪かった。


結局、どのくらいの時間マウンドにいたのだろう。
3つアウトを取ってベンチに戻ると、けだるさだけが身体を覆って何も口にできなかった。
柊の好投を不意にするような投球をしてしまったことが悔しい。
でもそれだけじゃなくて、星乃さんの目の前でみっともない姿を見せてしまったことが悔しかった。
7回も連打を浴びて1点を失った僕は、その回を投げ終えると交代を命じられた。
―――2回、5失点。自責点5。防御率22.50。
敗戦投手にはならなかったものの、自分の不甲斐ない成績に愕然とした。
ショックで試合が終わってからスコアブックを見ることもできなかった。
格下なのにコントロールは定まらず、変化球は決まらず、ストライクを取りにいった球を痛打。
緊張して自分を失っていたということを抜きにしても、ピッチャーとしてやってはならないことを簡単にやってしまった。
試合の後「これで甲子園のマウンドを踏むなんて一生かかっても無理」と監督に突き放された。
「次でダメだったらピッチャーを辞めろ」とまで言われた。
その日は悔しくて眠れず、その影響で寝不足。
翌日の授業で、僕はまたやってはいけないことをしてしまった。
「…くん」
「………ぐぅ」
「相原君」
「………ぐー」
「相原君!!」
「は、はいぃぃっ!」
先生の怒鳴り声が教室中に響き、ようやく僕は置かれている状況を把握した。
よりによって学校で一二を争うほど厳しい川田先生の授業で寝てしまうとは…不覚だった。
クラス全員に笑われ、授業の後で先生に絞られ、クラスの野郎たちには後でネタにされる始末。
しかも先生からは放課後の補習を言い渡され、予定していた自主練をキャンセルせざるを得なくなった。
踏んだり蹴ったりとはまさにこのことだ。


「聞いたわよ。昨日の試合で散々だったんでしょ?」
「誰からですか?」
「監督からよ」
補習の時間、川田先生は僕の前の席の椅子に座って僕に話しかけてきた。
「試合に出るのは初めてだったんでしょ?初めは誰でも失敗するものよ」
「…はい…」
「もちろん、スポーツだから一回で結果を出そうとする心がけも必要。あなたはそう心がけていたから、悔しがっているんでしょう?」
「先生…」
水泳部の顧問を務める先生だからこそのアドバイスだと思った。
心を見透かしたような先生の一言一言が僕の身に沁みた。
僕が大きく頷いて返すと、先生はホッとしたような顔を見せた。
「相原君が野球に熱心なのは私も知ってるわ。でも、だからって私は授業で手を抜くつもりはないの。次は気をつけてね」
「…はい」
「それじゃ、今日の補習はここまで。気をつけて帰るのよ」
「はい」
頑張ってね、と先生に笑顔で励まされて僕は席を立った。
先生に会釈して教室を出て、玄関に向かう。
ロッカーに上靴をしまい込み革靴を取ろうとしたとき、女の子が僕に近づいてきた。
「…あ」
向かい合った二人が同時に声を発する。
通路を挟んで向かいにあるひとつのロッカーに彼女が手をかける。
「…や、やあ」
昨日のことが尾を引いている僕は、その子…星乃さんにぎこちなく言葉をかけていた。
「あ、相原君」
彼女が返事をしてくれた。
顔を見ると、ほんの少し…頬が赤いような。
「昨日、学校に来てたんだ」
「…うん」
「何か…あったの?」
「図書委員の仕事が入ってたの。午前中だけ」
「…そっか」
そういや、彼女は図書委員なんだったっけ。
僕の応援じゃなかったんだ…とわがままながらがっかりする。
内心落ち込みながら靴を履き終えてロッカーの扉を閉めると、数秒遅れて星乃さんも扉を閉めた。
「あ、あのさ…」
「何?」
「昨日は…か、かっこ悪いところ見られちゃったな…」
玄関前での会話。
好きな子の前で緊張しているのとカッコ悪い自分が恥ずかしいのとで、話し方がしどろもどろになる。
それが気になってあはは、とわざとらしく笑ってごまかす。
でも、彼女はそんなことは気にしていなかった。
「ううん、相原君…頑張ってたと思う」
「…ありがとう」
川田先生に叱咤されたのも効いたけれど、片想いしている子にこんな言葉をもらうのもジワリとくる。
嬉しいやら照れくさいやらで、いろんな感情が湧いてきた。
「……」
「……」
続けて僕から何か言いたいけれど、頭の中で焦ってしまって思うような言葉が出てこない。
彼女も何かを意識しているのか、会話がつながらない。
交わすのは微笑とも取れる互いの苦笑い。
何か言いたくても言えないもどかしさがおかしな空気を作る。
(…あっ)
その空気の中、僕はあることを思い出した。
「あ、あのさ」
「何?」
「よかったら、その…友達になってくれないかな」
「えっ!?」
星乃さんは目を見開いて僕を見つめた。
つぶらな瞳がより大きく見える。
「あ、ありがとう…。でも私…友達少ないし、男の子と話したことだってないし…」
「僕は星乃さんと仲良くなりたいんだ」
彼女が好きだ、という想いはある。
ただほんの数分前に初めて会話したばかりなのだから、それをこの場で打ち明けられるはずもない。
その代わり、前段階である“友達”にはなっておきたい。
「…私で、いいの?」
「もちろん」
答えを渋っている彼女に念を押すように、僕は言った。
それに対して彼女は何か戸惑っているようだった。
まるで告白の答えを待っているかのようなシチュエーション。
数秒間の沈黙の後、彼女はゆっくりと言葉を紡いだ。
「…実はね、私も相原君と仲良くなりたいなって思ってたの」
「えっ!?」
星乃さんからこんなことを言われるなんて意外だった。
「び、びっくりした?」
「え、ああ…」
まさか、としか言いようのない展開に言葉が出ない。
一方の彼女も僕の驚きように目を丸くしていた。
「じゃ、じゃあ、今度から話しかけてもいい?」
すっかり脈が速くなった僕は、思うように口が動かせない。
そんな僕に対して、星乃さんは「うん」とただ頷いて答えてくれた。


「それじゃ」
「ええ。さよなら」
途中まで一緒に歩いた僕たちは、向かう方角が違うということで校門を出たところで別れた。
(…やった!)
希望の灯がひとつ消えそうになっている僕の目の前に、別の灯火が現れた。
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