キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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Still in Love -1-

甲子園編をお送りします。


ヒロインは栗生さん含む7人のうちの誰か。
どうせなら7人分書いてやろうじゃねーの、と画策中だったりします。
2話の公開は諸事情により週末か来週になる予定。
ちなみに10~15話と長めのSSになる予定でもあります。
++++++++++


見上げればかんかん照りの空。
足元には色褪せたアスファルト。
聞こえるのは、それを踏みつけるスパイクの鈍い音。


気温は32度。
まだ5月だというのに真夏並みの暑さだ。
異常気象もここまでくると苦痛でしかない。
それなのに、よりにもよってこんな日に30分間走とは…。
自分たちで決めたメニューだから誰にも文句は言えないのが辛いところだ。
「ラスト10分!」
ストップウォッチを持ったマネージャーの甲高い声が耳に響く。
僕は駆動させているギアを最速モードに持って行き、イーブンペースを崩す。
後続との差を広げ、遅れるチームメートを次々と周回遅れにする。
「おい、ちょっとぐらいゆっくり走れよ」
汗だくになったチームメートの冷やかしにも耳を貸さず、僕はただ前を向いて走った。
「相原、今回も1位か」
グラウンドでのクールダウンを終わらせた後。
声をかけてきたのは主将だった。
「あ、キャプテン」
「相変わらずスタミナだけはあるんだな」
皮肉っぽくニヤリと白い歯を見せる主将が憎らしいが、事実だけに反論しようがない。
いくらスタミナがあっても、僕は控えに過ぎない存在なのだ。


もちろん、努力をしていないわけじゃない。
レギュラーになるために僕は練習で猛アピールを試みている。
投げ込みでも、シート打撃のバッティングピッチャーでも、走り込みでも。
特に得意の30分間走は絶好のチャンスだと考えて、今日もアピールのために頑張った。
…でも、そのアピールはなかなか監督や主将に届かない。
その理由。
僕がレギュラーを狙っているポジションには、大きな大きな存在がいる。
―――柊明良。
僕のクラスメートであり、2年生でありながら野球部のエース。
クリーンアップまでこなすこの男の存在は、チームにとってあまりに大きすぎる。
「柊、肩を動かしとくか」
「そうですね」
30分間走をゆっくり走った柊は、このためにまだ余力を残していたらしい。


グラウンドの端にあるブルペンで正捕手の主将と対等に話せるのは、あの男ただひとり。僕たち2年生だけでなく控えの投手全員にとって、柊の背中はもはや手の届かない位置にある。
あいつさえいなければ―――新チームになってからしばらく、控え投手の間でそんな空気が漂っていた。特に先輩は当時まだ1年生だった柊にエースナンバーを取られたことが気に入らず、ロッカールームで毎日のように柊の陰口を叩いていた。
クラスメートとして、チームメートとして柊の味方をしていた僕も、巻き添えを食らいかけた。
そのどす黒い空気をまとめて追い払ったのは、柊本人だった。
飄々としているように見えて努力家。
楽に練習をこなしているように見えて、少しでも上を目指そうと高いところに目標を置いている。
学校での練習では物足りず、輝日南川の河原で黙々と自主練習をしている。
(クラスメートのよしみで僕はその練習を時々手伝わせてもらっている)
その努力の成果は「秋の県大会ベスト4」という輝日南高校野球部にとって初めての結果として現れた。
この結果を見て、足を引っ張ろうとしていた先輩たちは恥じ入っていた。
「じゃあ、軽くいきますね」
振りかぶり、いつものように飄々と球をキャッチャーのミットに投げ込む。
ほっそりとした体からは想像もつかない鋭い球が、いい音を立ててミットに吸い込まれる。
「調子よさそうだな」
「ええ、いい感じですよ」
投げたときに少しずれた帽子をかぶり直し、またプレートに足をかける。
柊の持ち球は140キロ台のストレートにカーブ、スライダー、チェンジアップ。
そして高校生ではなかなか投げないカットボールを最近覚えたという。
球種の豊富さでは控えの誰もかなわない。
無論、僕もだ。


僕の見ているそばでひとつ、またひとつ“バシーン!”という威勢のいい音をさせる輝日南のエース。
“軽く”と言いながらスピードガンに何度も140キロ台を計測させているのを見ると、もう言葉がない。
「よし、こんなもんだろ」
「ありがとうございました」
50球も投げ終わらないうちに、柊は早々と投球練習を終わらせた。
先輩に一礼したエースは、振り向きざまに僕のほうへ歩いてきた。
「相原、待たせたな」
「別に気にするなって」
二人してロッカールームに向かう。
目的地に着くまでの会話はもっぱら変化球の投げ方。
柊は持ち球の少ない僕がひとつでも変化球を覚えるように気を遣ってくれているのだ。
「二人ともおつかれさま」
歩きながら話し込んでいると、誰かが僕たちに歩み寄ってきた。
少し短めのスカートに三つ編みにした淡色の髪。
野球部のマネージャー・水澤摩央。僕の幼馴染だ。
「摩央姉ちゃん」
「相原君、ここではそう呼ばない。何回言わせるつもり?」
「…ごめん」
「ふふっ」
普段と部活とを区別するため、グラウンドでは「水澤さん」と呼ばせている。
変に親しい呼び名を使うと緊張感がなくなってチーム全体に影響が出る、というのが主な理由。
だからどれだけ親しくても摩央姉ちゃんのことは名字で呼ぶことになっている…が、僕自身はいまだに慣れない。
「はい、これ」
「ありがとうございます」
僕らにネーム入りのボトルを手渡すと、摩央姉ちゃんは第一校舎の屋上を指差した。
「相変わらず柊君は人気高いわねー。女子がこぞって見に来てる」
指差されたほうを向くと、こっちに向かって腕を振る何人もの女子の姿が見える。
うちの学校とは違う制服の子もいるから、他の学校の子も来ているらしい。
柊くーん!という黄色い歓声がこっちに向かって飛んでくる。
「…やれやれ」
その黄色い声に対して柊はふぅ、とひとつため息をついた。
「この歓声だけは慣れないな」
「どうして?」
摩央姉ちゃんが首をかしげると、奴はこう答える。
「ああやって応援されるのって、あまり好きじゃないんですよね」
「いいじゃない。注目されてる証拠よ」
「注目されすぎるのも、いい気分じゃありませんよ?」
「あんまりモテるからってそんな言い方しないほうがいいぞ」
冷やかしの意味を含めた言葉で僕が割って入る。
「…モテる?俺がか?」
「ああ。他に誰がいる?」
僕はわざと周りを見渡して、再び柊の目を見る。
すると男はこう言ってのけた。
「君は俺を買いかぶりすぎだ」
驚いた僕は摩央姉ちゃんと二人して顔を見合わせた。
当の柊は、頭を掻いて苦笑いしながら先にその場を去っていった。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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SS書き5年目。

『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
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