キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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記憶の鍵 -1-

初のTLSS短編をお送りします。
主人公・森崎勇太とその姉・森崎るりの幼少時代にあるヒロインが絡みます(全2話)。


幼い頃の記憶って、案外残っていたりしませんか?
++++++++++


夏休みに入ってから、僕たち3年生は早朝補習に呼び出された。
一応“進学校”の面目がある久夏高校のお上は、今年も生徒たちを有名大学に入学させるために躍起になっているらしい。
僕自身、進学を希望はしているけれど、どの大学に行きたいかなんてまだ決まっていない。
オープンキャンパスがいつどこの大学である、とクラスの女の子たちがしきりに話すことも他人事としかまだ考えていない。
「あー、眠いなぁ」
太陽が真南に位置するころになって、ようやく僕は教室から解放される。
かったるい授業をしっかり子守唄にした僕は、寝ぼけまなこをこすりながら緋菜ちゃんの待つ正門に向かった。
「今日も補習大変だったね」
「そうでもないよ」
「目はそんなこと言ってないよ?」
「…よく気づくなぁ」
「えへへ」
駅に向かって歩きながら、舌をぺろりと出して笑う彼女のしぐさが可愛い。
いつもこんな何気ない会話を交わすけれど、今日はそのいつもとは違う感じがする。
というのも、今日は緋菜ちゃんと終業式以来1週間ぶりに一緒に帰る日。
引退した後もテニス部の後輩指導をしている彼女は、夏の新人戦を間近に控えた後輩につきっきり。
終業式の日から昨日まで合宿にまるまる同行していたこともあって、僕たちはその間ずっと会話ができなかった。
2人が付き合い始めて以来、1週間も言葉を交わさないなんて日はたぶんなかったと思う。
―――だから、会話が特別なように感じられるのかもしれない。


これから緋菜ちゃんの家に行って受験勉強。
受験勉強とは名ばかりのデートじゃないか…と言われれば言い訳が思いつかないけれど、やることはもちろんやる。
好きな人が同じ空間にいてやる勉強は普段の数倍集中できる、というのも確かだし。
「ただいま~」
「あら、森崎君」
「あ、おじゃまします」
玄関で偶然居合わせた彼女のお母さんに迎えられ、僕たちはリビングでお茶しながら談笑する。
去年の暮れに初めて彼女の家に来た時は、あまりの緊張にトイレの番人状態だった僕。
最近になって、やっとこの家の雰囲気にも慣れてきた。
「私の部屋で待ってて」
キッチンに向かう緋菜ちゃんに促されて僕は彼女の部屋へ行き、壁に立てかけられている折りたたみのテーブルを組み立てた。
僕が鞄から勉強道具を取り出していると、彼女はバタバタと足音を立てて階段を上ってきた。
彼女は何もないところで転ぶようなドジなところがあるから、大きな足音がするとコケたりしないかとハラハラする。
「きゃっ」
つまづきそうになって、お盆の上のコップに入っているお茶が波打った。
慌てて僕は彼女の体を支え、被害を最小限に食い止める。
「ごめんね」
「いつものことだから、別にいいよ」
「…もうっ」
耳まで赤くした彼女に腕をはたかれるけれど、不思議と痛くない。
これが恋って奴だ。
「勇太くん」
「どうしたの?」
「これなんだけど…」
お盆に載っていたコップをテーブルに置くと、彼女が僕に大きな冊子を差し出した。
(アルバム、か…)
どうやらお盆と一緒に下から持ってきたものらしい。
「これって、まだ見せてなかった?」
「うん」
「やっぱり…」
少し黄ばんで年季の入った表紙は、見るからに昔のアルバムだとわかる。
その表紙をめくると、彼女らしき女の子の幼少時代の写真が1ページに4枚、とても丁寧に収められていた。
「懐かしいなぁ」
「でしょう?」
写真のバックには、ところどころで僕の記憶をくすぐる風景がある。
ページをめくっていくと、その分だけ記憶が色を伴っていく。
―――小一時間。
とりつかれたように夢中になって見ていると、いつのまにかアルバムの半分あたりまで行っていたことに気づいた。
「あ、この森…」
ちょうど開いたページで、僕の手は止まった。
「やっぱり、覚えていてくれたのね」
「…うん」
見覚えのある風景をバックにした写真が、ある記憶を鮮明に呼び起こした。


++++++++++


「ゆうたぁ~!まてぇ~!」
僕たち家族は夏になると、母さんの田舎に里帰りしていた。
里帰りして最初にやるのは、いつも鬼ごっこ。
じゃんけんがめっぽう強かったるり姉。
でも、たまに僕がじゃんけんに勝つと、全速力で追っかけてくる。
だから僕はじゃんけんに勝ったとわかるとすぐに駆け出し、るり姉が追いかけてくるのを必死でかわそうとした。
「うわぁぁぁ」
「ゆうた、にがさないわよ」
僕が後ろに気を取られ躓いた隙に、背中に馬乗りになって覆いかぶさる。
そして僕の背中にどっかりと腰を下ろし、高らかに勝ち鬨を挙げる。
じゃんけんに勝っても、結局いつもと同じ構図になっていた。


「あっ!ひなちゃん!」
「こ、こんにちわ」
るり姉の下敷きになっているところに、きまってタイミング悪く緋菜ちゃんは現れた。
馬乗りされているのが恥ずかしくて、緋菜ちゃんの顔をまっすぐ見ることができない。
「ゆうたくん、だいじょうぶ?」
「う、うん…」
「あたしのおとうとだし、これくらいなんのことないわよー」
満面の笑みで話するり姉につられて、僕もぎこちなく笑ってごまかす。
でも立ち上がってみると、そうでもないことがわかる。
こけたときに膝を打ち、打った箇所に100円玉くらいの大きさの擦り傷ができていた。
「い、いたいよ…」
「あ…ちがでてる」
緋菜ちゃんは心配そうに僕の膝を見る。
「じゃあ、ちょっとまってて」
砂混じりの傷口を見た緋菜ちゃんは一目散に走ってどこかに消えていった。
―――数分後。
緋菜ちゃんはツインテールを揺らし、両手に何かを抱えて戻ってきた。
「ひざをちゃんときれいにしないとね」
しゃがみこんだ彼女は持ってきた箱を開け、ついていた砂を払いながら僕の膝に赤チンを塗り始めた。
自分の血と液体の色で傷口が真っ赤に染まる。
「うん、これでだいじょうぶ」
一緒に持ってきたガーゼとテープで傷口を覆って、緋菜ちゃんは立ち上がった。
「あ、そうだ。ひなちゃん」
「なに?」
「いっしょにあそぼうよ」
「うん」
「じゃあ、さっきのつづきやろうよ」
年長者のるり姉が仕切る。
緋菜ちゃんは持ってきた救急箱を置きに帰り、また走って帰ってくる。
「せーの、じゃんけん…」
三人が輪になって、掛け声とともに一斉に手を出す。
「ぽ~ん!」
「…あ」
「……」
ほんの一瞬、場が凍りついた。
僕と緋菜ちゃんが勝ち、るり姉は鬼。
これは大変なことになった―――彼女と僕は二人して目を合わせた。
「にげろ~~!!」
「にがさないわよ~~!」
表情を少しゆがめたるり姉は、先に駆け出した僕たちを全速力で追いかけてきた。
また舗装されていない土手道を手をつないで駆け上がり、河原を越えていく。
「ねぇ、ゆうたくん」
「なに?ひなちゃん」
「ひみつのばしょをみつけたんだけど、いっしょにいかない?」
「いくいく!」
追いかけてくるるり姉の気配を感じながら僕たちは二言三言言葉を交わし、るり姉に気づかれないようにこっそり横道にそれた。
隠れた僕たちに気づかず、るり姉は僕らを探すためにどこかに走っていってしまった。
「…もう、だいじょうぶかな」
姿が見えなくなったことを確かめて、再びもとの道に出る。
「それじゃ、いこっか」
「うん」
僕は緋菜ちゃんに連れられ、“ひみつのばしょ”があるという鎮守の森―――「あの森」へと向かった。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

新作、早速拝見さしてもらいました。TLSSは自分もYouTubeでアニメを見たことがあります。設定は多少違いますけど、キミキスと同じように甘酸っぱい物語ですよね。自分もあの中で一番気に入ったヒロインは緋菜です。後半も楽しみにしてます
【2007/08/01 23:02】 URL | Kein #sa7XU41w[ 編集]
ありがとうございます。
TLSSのアニメを見たとはなかなかの猛者ですね(笑)
もし機会があればTLSSもプレイしてみてください。キミキスの絵師さんの原点が見られますので。
【2007/08/02 23:10】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]
こんにちは。久しぶりにTLSSプレイしちゃいました(笑)キャラも久々に見て新鮮でしたよ(笑)
【2007/08/03 22:19】 URL | 雷 #-[ 編集]
どもです。
TLSSやりましたかぁ。キミキスとは画風が違う分また新鮮に見えますよね。
私もうちのPS2のご機嫌が直ればプレイしたいです。
【2007/08/04 00:59】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]

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