キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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Kiss in the Rain~後編・2~

後編・1の続き。


再び二見瑛理子の登場。
ちなみに夢オチじゃありませんよ?




これで心置きなく名古屋に行けるぜ俺。
++++++++++


「気がついたようね」
二見さんの声。
僕は理科室…ではなく、家庭科室の机の上に横たわっていた。
お湯の沸騰する音と、コーヒー豆独特の匂い。
僕を囲んでいたのはパーティに行く前と同じ光景だった。
(あれは、夢だったのか…?)
自分の服を見ていると、タキシードから制服に戻っている。
二見さんもドレスではなく、制服を着ている。
ただ、僕の手にはリボンのついた開けかけの箱が握られている。
ということは、夢じゃないってことか…?
「これは、一体…?」
何がなんだかわかっていない僕を見て、二見さんは腕を組みながら微笑した。
「どうやら実験は成功のようね」
「実験?」
「新しい薬の開発よ」
薬?開発?どういうことだ…?
二見さんに問いただそうとすると、タイミングよく準備室からあの男が現れた。
「やっとお目覚めのようだな」
「柊!」
目をこすり、柊の姿がぬいぐるみではなく人間であることを確認する。
「これはいったい…?」
「ありきたりな日常への刺激、ってところだな」
「ありきたりな日常?」
「ああ。君の最近の口癖、何か覚えてるかい?」
「いや、全然」
そう答えると、柊はやれやれ…と言わんばかりに腕を横に広げながら呆れたような素振りを見せた。
「『何か刺激がほしい』。毎日のように言ってるぞ」
「…よく覚えてるな」
「君の口からイヤというほど聞かされたからな。イヤでも覚えるってもんだ」
「……」
柊は見下すような視線を僕に送る。
やれやれ。この男にはいつもかなわない。
「そこでみんなに協力してもらって、君に非日常を味わってもらうことにしたんだ」
「それじゃあ僕は…」
「一言で言えば『ハメられた』ってことだ」
(……)
本来ならここで怒り心頭…となるところだけど、みんなにも自分にも呆れてその気も失せていた。
「しかし、二見さんが本当に日本に帰ってくると聞いたときは驚いた」
柊は続けた。
「まさか向こうの大学を飛び級に次ぐ飛び級で論文を次々と発表しているエリートが、輝日南に戻ってくるなんてな」
「私は好きで帰ってきたんじゃないわ」
「ああ、確かに呼んだのはこの僕だ」
柊が言うには、僕への誕生日プレゼントを考えたときに何かドッキリを仕掛けようと考えた。
そこで二見さんに連絡を取ってドッキリの話を打ち出したところ、彼女はあっさり承諾したらしい。
そして、「どうせやるなら」ということで論文で発表した薬を使うことになったという。
(どこから連絡先を手に入れたか気になったけど、聞くのも野暮だと思って止めた)
―――つまるところ、誕生日祝いという名目で僕は二見さんの実験台にされていた、というわけだ。
「僕はモルモッ…」
言いかけた僕の口を塞ぎ、二見さんは僕をジロリと睨みつけた。
「あなたなら恰好のサンプルになる、と思ったのよ」
「……」
言葉が出なかった。
いくらキスの実験を繰り返した仲である彼女でも、わざわざ他の人間を巻き込むなんてひどい話だ。
「でもよかったわ。副作用もないみたいだし」
「よかったとかそういう問題…」
「また薬を吸わされたい?」
半分ほど液体の入った瓶を揺らしながら、僕を脅す。
さすがに三度も同じ目に遭うのはこりごりだ。
僕は大きく首を横に振って、拒否する意思を伝える。
「そう」
二見さんはつまらなさそうに口を尖らせたけど、何度もされては心も体も持たない。


「ところで、このプレゼントはいったい…!?」
手に握っていた箱を2人に見せると、柊は教室のとある机を指差した。
そこにはいくつも同じ形をした箱が置かれていた。
しかも、全部同じリボンがつけられている。
僕の持っている箱はさっき持ってたものより軽いけれど、全く同じもの…。
「誕生日にそんなにプレゼントをもらえるなんて、幸せね」
「あ、うん…」
どうやらプレゼントはドッキリじゃないみたいだ。
「いつか誰かを泣かせることになるわよ」
「……」
ぎくり。
二見さんのもっともな指摘に、僕は返す言葉がなかった。


「さ、外に出てみるといいわ」
「とっておきのプレゼントが待ってるぞ」
2人に促されて家庭科室を出る。
いつの間にか外は雨が降り出して、その脚はみるみる速くなっていく。
僕は折りたたみ傘を持って玄関に走った。
玄関から正門に向かう途中、校門そばの壁にもたれている肩まで髪を伸ばした女の子らしき姿が見えた。
「……!!」
近づいてみると、その姿に見覚えがある。
僕が近づけば近づくほど、姿ははっきりと見えた。
ドッキリかもしれない…というのも頭には浮かんできた。
でも、このまま放っておけば彼女が風邪を引いてしまう。
「星乃さん!!」
大声で呼ぶと、その子は振り返って僕のほうへ体を翻した。
見ると、全身ずぶ濡れになり、前髪がおでこに張り付いてしまっている。
急いで傘を彼女の頭上に差し、持っていたハンカチを渡す。
「あ、ありがとう」
「どうしたの?傘もささないで」
「うん、ちょっと…」
何かを隠すような遠まわしの言葉遣い。
こういう口ぶりのときの星乃さんは、本当のことを言えないときだ。
「傘、持ってないの?」
僕が訊くと、彼女は首を横に振った。
くしゅん、とひとつくしゃみをして、体を震わせる星乃さん。
たっぷり雨水を含んだ服が体に張り付いて、体のラインがくっきりと浮かび上がっているのがわかる。
(……)
「そんなに…見ないで…」
「ごっ、ごめん…」
恥ずかしそうにする彼女を見てハッと我に返り、自分でほっぺたにビンタを一発食らわせた。
それを見て星乃さんはクスリと笑う。
「今日は学校ないの?」
今日はまだ平日。普通の学校なら創立記念日でもない限り休みにはならないはずだ。
彼女は申し訳なさそうに首をヨコに振り、そのまま話を始めた。
「実は、今日も学校を休んだの」
…どうして、といつもなら訊いていた。
でも、彼女から先に理由を教えてくれた。
「もう一度、あなたの顔を見ておきたかったから…」
「…ありがとう」
昨日のことがあるから申し訳がない。
それになんだか照れくさくて、何と返せばいいかわからない。
「誕生日、おめでとう」
そう言って星乃さんがびしょ濡れのカバンから取り出したものは、昨日受け取ったものとは違っていた。
本の形に似たような、少し左右の辺が長い長方形の包装。
表面が雨にやられてしまっている。
「昨日も渡したけど、本当はこれを渡したかったの」
「ありがとう」
「ごめんね、こんなになって…」
「ううん、いいよ」
精一杯の言葉をかけて僕は受け取ると、傘を持っていないほうの手に抱え込んだ。
その瞬間。


「…んっ」


星乃さんは背伸びして僕の唇にキスをした。
雨で滑り、少しよろけて僕のほうに倒れてくる彼女をかばおうと、僕は持っていた傘を放す。


土砂降りの雨が僕の体に容赦なく打ちつける。
その雨粒から守るように、僕は星乃さんをできるだけ包むように抱き締めた。
冷たい感触が僕の腹の辺りに充満する。
その後で、星乃さんの体のぬくもりが時間差でやってきた。


体を離すと、雨粒と涙が混ざったものが彼女の頬を伝っていた。
「星乃さん…」
昔の内気な彼女では考えられなかった行動に、僕は驚いていた。
「ごめんなさい」
「謝らなくたっていいよ」
「でも私、相原君をそんなに濡らして…」
「気にすることないよ。そのうち乾くから」
すっかり水浸しになった僕を見て、彼女は気を遣ってくれたのだろう。
でも正直言って、そんなことはどうでもよかった。
彼女と触れ合えた時間のほうが、僕にとっては何倍も大事なものだった。


「風邪、引くよ」
「…うん」
帰り道、偶然持ち合わせていたブレザーを彼女の肩に乗せ、僕の家へ向かった。
僕の家で星乃さんの服が乾くのを待つ間、星乃さんは菜々と久しぶりの再会を喜びながら時間を過ごした。
「ごめんね、迷惑かけて」
「いいよ、そんなこと。菜々も喜んでたし」
「…うん」
星乃さんを駅に送るころには、もうすっかり雨が上がっていた。
まだ分厚い雲を帯びた夕焼けが空を彩っている。
「もう、行かないといけないのね…」
寂しそうに呟く星乃さん。
憂いを帯びた表情が、僕を切なくさせる。
「来たくなったら、また来ればいいと思う」
「…うん、そうよね」
「僕たちはいつでも待ってるからさ」
「ありがとう」
駅の改札に着き、彼女は切符を買いに並ぶ。
並んでそう経たないうちに、彼女の乗る電車がホームに滑り込んできた。
星乃さんが切符を手にすると、二人横並びになって改札に向かう。


「じゃあ私、行くわね」
「うん」
別れ際の改札前。


今度は僕からキスをした。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

ケインから改名しました。

久々の新作読ませてもらいました。さてさて、今回は何とも不思議な作品でした。結局の所、天才・二見の薬の効果で光一の夢の中で起きたことは彼が意識を失っている間に現実に体験したということですよね?それに恐らく日付も変わって、約24時間経っていたという事でよね?そして今回の話は星乃さんの転校から1年が経った頃ですよね?いずれにせよ、少し解説があると嬉しい作品です。
登場したキャラクターは皆個性が出ており、楽しめました。

最後に批評ばかりでスミマセン……

【2007/07/21 00:17】 URL | Kein #sa7XU41w[ 編集]
コメントありがとうございます。
不思議な作品、というのは確かにそうです。不思議な作品になったがためにずいぶん遅れてしまいましたし…。
でも、夢はこれっぽちも関係ありません。すべて現実の光一の目の前で起きたことです。(夢オチじゃない、と書いてますしね)
光一が家庭科室で起きたときの柊の台詞をいま一度読み直してみると、その真意がわかると思います。
解説は後ほど執筆後記にて書かせていただきます。
【2007/07/22 20:40】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]

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