キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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七夕特別編

7月7日。
せっかくの七夕だというのに、今日は朝からあいにくの天気。
雨は昼過ぎに上がったけれど、どんよりとした分厚い雲が空を覆っている。
「天の川が見られるといいね」なんて彼と話してたけれど、それは今年もお預け。
でも、この日のために母に買ってもらった浴衣だけは着ていくつもり。
浴衣を着た私を、彼に見てほしいから。


遠距離を始めてもうすぐ3年。彼は地元の難関大学に通い、私はこちらの看護学校に通っている。
高校時代から彼は私に会うためにバイトをして、休みのたびに会いに来てくれた。
会えない淋しさを、私は彼に会うたびに甘えることで表現してきた。彼はそれをしっかり受け止めてくれる。その優しさが辛いときもあるけれど、彼がいなかったらきっと私は知らない土地でもがき苦しんでいた。
だから彼には、いつも感謝している。
その彼と、今日は久しぶりに会える。春休み以来だから、もう3ヶ月ぐらい会っていない。
学校の授業が終わるのが2人とも7月7日だった、っていう偶然の一致で、私は彼と七夕のこの日に会う約束をした。
七夕に会うのは初めてだから、お互いにこの日を楽しみに待っていた。
この3ヶ月、2人で毎日のように電話をした。もちろん親には内緒で。
お互いの親が寝静まってからの電話だから、大きな声じゃ話せなくて、スリルばかり。でもそれが案外面白かった。
七夕が近づくと、織姫と彦星をお互いに重ね合わせて、電話越しに2人の世界にしばらく浸ってみたりして。今日が私が引っ越してから3年連続の雨だってわかったときも、彼は「織姫も彦星もきっと恥ずかしがり屋なんだよ」なんてキザっぽく笑い飛ばしていた。
「どんな天気だろうと、僕たちはいつも繋がっているんだから」って格好のいいことも言って、私のほっぺたが思わず緩んだり。
私の目の前じゃこんなこと言わないから、可笑しいのもあるんだけれど。


7時半。そろそろ彼の乗る電車が駅に着く頃。
浴衣に着替えて駅前に出た私は、改札のそばの待合室で彼が出てくるのを待つ。
電車が近づくことを知らせる「ピーッ!」という駅員の笛が、私の胸の鼓動を激しくさせた。
もうすぐ彼に会える…そう思った瞬間、右手に持っていた巾着からメロディが聞こえてきた。携帯の着信音。しかもそれは、彼にだけ設定してある私の大好きな曲。
(どうしたんだろう…)
巾着から携帯を取り、通話ボタンを押す。
「もしもし、星乃です」
「星乃さん?よかった、つながった…」
電話口の向こうの彼は、息を切らしながら喋っていた。
「どうしたの?」
「星乃さん、ごめん。7時半に着く電車に乗ろうと思ったんだけど、授業のあとで教授に呼び出しを食らって…」
授業が午前中だけのこんな時に限って呼び出しなんて。これは私たちに課せられたハードルなのだろうか。
「え…い、今どこなの?」
「今、そっちに向かってる。でも最終に間に合うかわからない…」
「そんな…」
「せっかく七夕に会おうって言ってたのに…ほんとにごめんっ!!」
その後何度も「ゴメン」を繰り返す彼。
普段なら謝ってくれる気持ちだけで十分だった。でも今日は…今日は特別な日。
悔しいけれど、謝っている彼の気持ちを素直に受け入れられなかった。
「せめて、最終には間に合うように来てほしい…」
私は彼に祈るようにこう告げた。今にも泣きそうな気持ちを、何とかこらえた。
2人とも楽しみにしていた初めての七夕デート。それが叶うかどうか、わからなくなってしまった。


待合室で1人ぼっちの私。
駅前の店は少しずつ光を落とし、店を閉めてゆく。時計を見ると、もう9時を回っている。
本当なら、今頃彼と2人っきりで腕を組みながら、彼に思いっきり甘えられたはず。
でも、今の私の隣には誰もいない。
あの電話から、彼からの連絡はない。電話も、メールも。何度も留守電やメールのチェックをしてみたけれど、何もない。
最終までに間に合ってくれるのかな…不安が頭の中を何度もよぎる。
私1人がソワソワしたまま、時間だけがいたずらに過ぎてゆく。
10時…11時…雨上がりの夜は時間が経つにつれて涼しくなり、浴衣姿の私にヒヤリとした風が当たる。時折口に手を当ててくしゃみをしながら、私はひたすら彼が来るのを待った。
きっと来てくれる。間に合うかわからないけれど、きっと来てくれる。不安と葛藤した末に出した答えだった。
私が出した答えは間違っていない。そう信じた。
11時半。もうすぐ最終の電車がこの駅にやってくる。この電車に乗っていなかったら、彼はもう…。
答えを出したはずなのに、また不安に襲われる。会えないのが悲しい。辛い。そして会えないことが怖い。

踏切の音が鳴り響く。最終電車が来た。
駅員がホームに出る。私はいてもたってもいられず、ホームで電車を、そして彼を待った。
2両編成の電車。私が見る限り10人も乗っていない。その中に彼は…?
電車が止まり、静かにドアが開く。
降りてくる乗客の中に彼は…いなかった。
万事…休す。七夕デートは夢に終わった。私はその場に立ち尽くしたまま、しばらく動くことができなかった。
(ブルルルルル…)
巾着から何かが震える音がした。震えの元は私の携帯。
(相原…君!?)
急いで巾着から携帯を取り出す。彼からのメールだ。
「後ろ、振り返ってみて」
え…後ろ…?半信半疑で私は彼の言うままに振り返った。
振り返ったすぐ前に、彼はいた。その顔は汗で溢れ、首にはタオルが巻かれている。
「…間に合った」
「相原君…」
「遅くなってごめん」
「ばか…」我慢できなかった。もう無理だって思ってた。
私は彼の胸に飛び込み、泣いた。彼はそんな私を見て「ごめん…」と一言だけ呟いて、私の髪を撫でた。一回一回撫でられるたびに、私の涙がとめどなく流れてゆく。
「ずっと待ってたんだから…」彼に向かって、思いの丈をぶつけた。
すると、彼はそっと私の肩を持ち、おもむろに唇を私の唇に重ねた。
(あ…)
彼との久しぶりのキス…。私に拒む理由はなかった。むしろキスしてくれなかったら、待たされ続けた私の心は満たされなかったに違いない。
不安から解き放たれた私は、感情の趣くままに彼と唇を重ね続けた。彼を求め続けた。ずっと、ずっとこうしていたい…そんな願いを込めながら。


どれくらい経ってからだろう。どちらからともなく重ねていた唇を離した。
キスの余韻が体中を巡っている。とろけそうな感覚が、唇にしっかりと記憶されている。
余韻に浸る私に、彼は私の目を見つめながら言った。
「星乃さん、一緒に行きたいところがあるんだ」
「…どこ?」
「ちょっとついてきて」
彼に手を引かれて改札を出た先には、1台の車が置かれていた。
「さあ、乗って」
助手席のドアを開けた彼に誘導され、私は助手席に座った。
「どこに行くの?」
「まあいいから」
運転席に座った彼は、行き先を言わないままアクセルを踏んだ。
(どこなんだろう…?)
10分ほど行ったところで、私の疑問は解決した。
「もしかして…展望台?」
「そう。展望台」
そう言うと彼はおもむろにブレーキを踏み、「着いたよ」と言ってドアを開けた。
「上、見てみてよ」
車から出た私は彼の言うとおりに上を見上げてみると、そこには紛れもなく天の川が夜空にかかっていた。
「キレイ…」
「きっと、織姫と彦星は1年に1度のデートを楽しんでるよ」
「そうね、きっとそう」
「そして僕たちも、こうやって2人で会えたんだ」
「ええ」
肩を寄せあって、2人で天の川を見つめた。


「星乃さん」
「何?相原君」
「星乃さんに話したいことがあるんだ」
「え…何?」
彼は車に戻り、何かを取りに行った。
(どうしたんだろう?)
状況が読めていない私をよそに、戻ってきた彼の顔は暗くてもわかるほどものすごく真剣な表情をしている。
「星乃さん…いや、今だけは名前で呼ばせてほしい。結美」
「え…」
名前で呼ばれてたじろぐ私に、間髪入れずに彼は続けた。

「僕と、結婚してほしい」

差し出されたのは、あの群青色のケース。
彼からの突然のプロポーズに、私はうろたえた。
プロポーズされるなんて全然思ってなかったから、どうしていいかしばらくわからなかった。
…でも、名前で呼ばれたの、嬉しかった。大好きな彼に、「結美」って呼んでもらえて、嬉しかった。
それに、結婚したら…大好きな彼とずっと一緒にいられる。2人離ればなれで苦しんだり悲しんだりしなくていい。
拒む理由なんてない。


私の答え。
「よろしくお願いします」
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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