キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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桜の咲く道で -5-

本編最終話。
お待ちどうさまでございました。


長いとか言っちゃ嫌。
だって2週間分だもの(爆
++++++++++


「先生、僕じゃダメですか…?」


…まさか、生徒から告白されるなんて。


生徒を恋愛の対象として見ることはない。
私にとって、生徒はずっと生徒のまま―――そう信じていた。
その信念が目の前でいとも簡単に崩れ去ることに驚いたし、ショックだった。
「はい、じゃああと5本で今日は終わりね」
水泳部の指導に当たっていても、彼の真剣な表情が脳裏に焼きついて離れない。
彼の告白が私の心を占領した。
でも、あの人の代わりは誰にもできない。
それだけあの人の存在は大きい。
だから、相原君の告白を受け入れることは…できない。


その気持ちとは裏腹に、相原君に惹かれるものがある…。
惹かれている自分がいる…。
(私、どうすればいいんだろう…)
自分の気持ちがわからない。
彼と一緒に山に登った日にもまして混沌とした想いが湧き上がっている。
併走する想いに息苦しくなった私は、副顧問の先生に断ってプールを抜け出し校舎の屋上へと向かった。


誰もいない屋上に登ると、綺麗な夕焼けが空を彩っていた。
地平線に半分身を沈めた夕日を眺めながら、柵に肘をつき物思いに耽る。
私は、どうしたらいいんだろう。
あの人の顔を思い浮かべながら、夕日が沈むのをじっと見つめる。
(……!)
あの人と相原君の顔がだぶって見えた。
いつかお風呂場で感じた感覚が再び私の身を包む。
「川田先生」
「…相原君」
驚いたところで誰かが声をかけてきたのに気づく。
振り向くと、そこには相原君が立っていた。 
「どうしたんですか?」
「夕日を見に来てたの。ここから見る夕日は綺麗だから」
「そうですね」
平静を装いながら彼に接する。
話しながら彼は柵に肘をつき、同じ景色を眺めはじめた。
「……」
「……」
二人で景色を眺める―――まるで輝日南山にいたときと同じようなシチュエーション。
ふたり横並びになりながら、何も言葉の交わされない時間が過ぎてゆく。
ちらりと彼を見ると、夕日に赤く照らされた表情は伏し目がちでなぜか切なく映った。
「相原君」
「何ですか?」
「あなたって、キス…したことあるの?」
「どうしたんですか!?突然そんなこと」
「教えてくれたっていいじゃない。あなただけ私の恋を知ってるなんてずるいわ」
「……」
私だって、相原君のことを知りたい。
「僕は、キスしたこと…ないです」
「そっか、ないんだ…。私と同じね」
「えっ…?」
あからさまに驚く相原君。
この歳になってキスのひとつもしたことがないなんて―――たぶん、彼はそう思っていた。
「初恋の人とは…したことないんですか?」
「生徒に手を出すわけにはいかないからって、卒業までおあずけだったの。真面目な人だったから」
「……」
「卒業したらキスしてくれる約束だったのに、それもできなくなっちゃって…」
果たされなかった約束を思い出して、また辛くなる。
そしてまた、過去と現在の間に挟まれて辛くなっている。
「ねえ、昨日の話…本気?」
彼の気持ちを確かめることで、自分を落ち着かせようとした。
「もちろんです。僕は先生のこと…」
(……)
彼の気持ちはまっすぐ私に向けてくれている。
嬉しい気持ちがあるのは確か。だけど…。
「…ありがとう。でも、あの人の代わりは…無理よ」
「……」
一方の私の気持ちは、まだ揺らいでいる。
この状態で返事をすることは…私にはできない。
「でも先生、僕は…!」
「あなたのことはいい子だなって思う。ただ、あの人の代わりは…ね…」
「……」
「『好き』って言ってくれる気持ちだけで嬉しいわ。ありがとう」
「…はい」
彼の表情が沈んでゆく。
私は彼のこんな顔を見たくないのに…。
私にとっては不本意な反応が罪悪感を呼び起こし、余計に辛くなった。
「先生、部活…行ってもいいですか?」
ショックを隠せない様子の彼は、トーンの低い声で私に尋ねてきた。
「ええ。日曜の大会が終わったら学園祭までは自主練習だから、その後ならいつでもいいわよ」
「ありがとうございます」
「あと、来週大会があるんだけど…見に来る?」
「はい」


大会のことを少しだけ話し、私は屋上を後にした。
屋上を去るころには彼は少し笑顔を覗かせていて、安心した。


大会当日。
輝日南から1時間はかかる会場に、相原君は姿を見せた。
吹っ切れたのか、落ち込んだ様子は感じられない。
「トップクラスの選手の泳ぎを見て、勉強するといいわ」
開会式の前に会ったとき、私は一言だけアドバイスをした。
まだ素人の彼が、どこまで他人の泳ぎを見る力があるかなんてわからない。
でも、わからないなりに彼の可能性に賭けてみることにした。
きっと何かを得てくれるはずだと信じていた。
そして、明くる月曜日。彼は教官室に私を訪ねてきた。
「川田先生、よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ。大会では何かつかめた?」
「ばっちりです!」
笑顔を浮かべ、握り拳を見せつける彼の表情は自信に満ちていた。


++++++++++


川田先生の特訓は、前よりも数段厳しくなっていた。
「この前言ったことを忘れたの?もう1回やってみて!」
「まだ腕の振りが甘いわよ!鋭くかきこんで!」
鋭い声が水の向こうからビシビシと飛んでくる。
まるで馬に鞭を振るう騎手のように、次から次へと先生は僕に檄を飛ばした。
僕はそれに応えるため、必死になって泳ぎ続けた。
「いたっ…!」
「大丈夫!?」
ノルマの半分を超えたところ。
ターンしようとタッチした瞬間、指をくじいてしまった。
くじいた部分が腫れて赤くなっている。
「ちょっと見せて」
「あ、でも…」
「いいから見せなさい」
手を引っ込めようとした僕を睨みつけ、先生は僕の手を取った。
「うん、この程度なら冷やせば大丈夫ね」
「そうですね」
「さすがは男の子ね、強い骨だわ」
症状を確認した先生は、くじいた指をマッサージするように揉み始めた。
時々冷やすように痛めた場所に息を吹きかける先生…。
「ふーっ、ふーっ」
先生の顔が…こんなに近くに…。
「あ…」
僕は思わず声を上げてしまった。
声に気づいた先生は一瞬キョトンとした表情を見せたあと、状況を察したらしく頬を赤らめる。
「…赤くなることないじゃない!」
「先生こそ」
「う…」
不意を突かれたのか、先生は言葉を詰まらせた。
「氷を取ってくるから少し冷やしましょ。腫れが引いたらまた再開するわ。それまで休憩!」
早口になっている先生はどう見ても動揺していた。
教官室に戻り氷を持ってきた先生はふくれっ面をしたまま。
先生がまた教官室に戻った後、僕はあまりにおかしくて吹き出してしまった。


腫れが引いた後、再び僕は先生の特訓を受けた。
終わったのはもう日が沈む直前。天井の照明が水面(みなも)を照らしていた。
「今日の特訓はどうだった?」
「やっぱりキツイです…」
「でもさすがね。私の特訓についてくるんだから」
「あはは…」
「学園祭まではこのメニューだけど、ついてこれるわよね?」
「もちろんです!」
「うん、いい返事だわ」
先生は嬉しそうに表情を緩ませている。
つられて僕も頬が緩む。
「それじゃ、明日からも頑張りましょ」
「はい!」
明日からの特訓に胸を躍らせながら、プールサイドでストレッチをこなした。
…そういえば、週末は学園祭。
「先生は学園祭、どうするんですか?」
シャワーに行く前に、僕は先生に訊いてみた。
「どうするって…あ、男子は知らないか。私ね、毎年あそこで占いやってるの」
先生が指さしたのは用具室。
先生いわく、その占いは女子の人気スポットとして有名らしい。
「当たるって評判なんだから」
「じゃあ、僕も占ってもらおうかな」
「ええ。待ってるわよ」
先生は自信たっぷりに話した。


僕が占ってもらうとすれば…ただひとつ。
僕と、先生の相性。
(どうなるんだろう…)
結果を早く知りたくて、学園祭までの日々が遠く感じた。
先のことが気になって眠れなかった。




週末。
いよいよ学園祭の日を迎えた。
占いの結果を知りたい。
そして、先生にもう一度想いを伝えたい。
誰にも負けない川田先生への気持ちを胸に、僕は学校へと向かった。


++++++++++


「次の方~」
学園祭。
今年もたくさんの女の子やカップルの生徒たちが私の占いを目当てに来てくれている。
仲睦まじく腕を組むカップルを見ると羨ましくなるけれど、そうも言っていられない。
みんなの将来に希望を持たせられるように、水晶球に気持ちを集中させた。


「ようこそ、占いの館へ~」
お昼過ぎ。
彼はひとりで私のところにやってきた。
「か、川田先生…」
「あ、びっくりした?」
相原君は私の服装を見るなり、口をあんぐりさせて驚いた。
「占いは雰囲気が大事だから」
「は、はぁ…」
あっけに取られている彼の表情がおかしくて、吹き出しそうになるのを必死でこらえた。
「それで、何を占ってほしいの?勉強のこと?将来のこと?」
カマをかけながら、彼の本心を探ってみる。
「僕と川田先生の相性です」
「え…」
「僕に初恋の人の代わりが無理なのはわかってます。でも、相性を占ってもらうくらいいいですよね?」
ためらうことなく言い切った彼に驚いた。
占いは自分のことを占うものじゃない。
自分の気持ちが入ってしまう。
でも、言われた以上は占わないといけない…。
「いいわ。占うだけよ」
彼に誕生日を聞き、私の誕生日と組み合わせる。
「それでは、水晶球にご注目~!」
彼と私の相性…。
葛藤を感じながら、赤く光る水晶球に答えが映し出される。
「あなたと私の相性はとってもいいわね。多少年の差はあるけれど、気にすることなく仲良く過ごせそうね」
「やった!」
手放しで喜ぶ彼。
バッチリ、理想的…彼の口から出てくる言葉は私の心をかき乱した。
「相原君、これはあくまで占いだからね。当たるかどうかなんてわからないんだから」
「先生、占い師が自らそんなこと言ってもいいんですか?」
「う…」
クギを刺すつもりがかえって墓穴を掘ってしまう。
なんてことを言ってしまったの、私…。
「私の占いは当たるって評判なのよ。必ず当たるわ」
じゃあ二人の相性は抜群なんですね―――「当たる」と言った以上、彼の指摘に頷くしかなかった。
「…はぁ」
「どうしたんですか?ため息なんかついて」
「占いって自分のことを占うものじゃないのよ」
「どうしてですか?」
「自分の気持ちが入っちゃうから」
「自分の気持ちってことは…」
「…あ」
またやってしまった…。
しかも、こんなところで自分の気持ちに気づくなんて…。


私は彼に惹かれているだけじゃない。
彼のことが好き。


喜ぶ彼の前で、疑いようのない自分の気持ちを知らされた。
「よかったわね、いい結果が出て」
慌ててフォローするけれど、もう後の祭り。
間違いなく、彼にも私の想いは伝わっているはず…。
案の定、彼は口を真一文字に結び、真剣な表情で私に訊いてきた。
「先生、このあと時間ありますか?」
「ええ。フォークダンスが始まるまでなら」
「話したいことがあるんです。なので、時間のあるときに屋上に来てもらえませんか?」
「…ええ」
「それじゃ、待ってます!」
「あ、ちょっと!」
駆けるように去っていく彼の背中は、瞬く間に暗闇の中に消えていった。


「相原君」
ホームルームを終え、私は彼の言った場所に足を運んだ。
すでに待っていた彼は、ひとり柵の前で佇んでいた。
「話って、何?用があるならさっき話せばよかったのに」
「すみません。人がいると話しにくいことなので…」
話しにくいこと―――占いのときに感じたあのことだ。
「先生に迷惑をかけるかもしれないけど、聞いて欲しい」
彼の前置きは、直感を確実にした。
「先生、僕は先生のことが好きです!」
「あ…」
「初恋の人の代わりが無理なのはわかってます。でも、そばにいることはできます!」
だから、あの人だけではなく僕も見てほしい…私に訴えかける表情は今まで以上に真剣だった。
相原君に言われて初めて、彼のことを見ていなかった私に気づかされた。
彼の気持ちは私に伝わっていたのに…。
私をずっと励まし続けてくれた彼に申し訳なかった。
「私も、ね…相原君のことが好き…」
「先生…」
彼と過ごす時間が増えて、彼の気持ちに気づくようになって…。
あの人と相原君の顔がダブるほど、どんどん存在の大きさが近くなっていた。
それでも私は、あの人のことばかり話をしていた。
そして、今もまだ…。
「ごめんなさい」
「先生、僕は待ちます。あの人とのことを笑顔で思い出せるようになるまで僕は待ちます」「相原君…」
…嬉しかった。
こんなときも彼は、私を支えてくれる。
彼の気持ちが私の胸に響いて、彼の存在をより大きくした。
「私ね、輝日南山で祈ったことがあるの」
「え?」
私が祈ったこと。
もし彼が私のことを好きと言ってくれて、今の私を好きになってくれたなら…彼を好きになってもいいですか、と。
彼のそばにいる私を見守ってくれますか、と。
相原君に言うと、彼も同じことを祈ったと言ってくれた。


―――想いはひとつ。


「相原君、好きよ」
「先生、僕も好きです!」
「あ…先生って言っちゃ嫌」
先生だなんて、これから一緒に思い出を作っていくのに…。
「じゃあ何て呼べば…?」
「知子って呼んで」
「ええっっ!?」
彼の反応で昔を思い出し、吹き出し笑いしそうになった。
あの人も、名前で呼ぶように言ったらうろたえていた。
今と昔で立場は違うけれど、私は好きな人には名前で読んで欲しい。
その気持ちは変わらない。
「と、と、知子…」
「なあに?光一さん」
「キスは…できない?」
キス…。
たどたどしい口調で求める彼。
好きな人とキスすることが一度叶わなかった私にとって、二度もなんて辛すぎる。
あんな悲しい思いをするのは嫌だから…。
私は彼に近づき、目を閉じた。
彼の顔が少しずつ私の顔に近づくのを感じる。
そして…。


ファーストキス…。


彼の腕の中で、二人の気持ちはひとつになった。
私の中の混ざり合った感情が、ひとつになった。
唇を離すと彼の胸元に顔を埋め、余韻に浸る。
「ずっと、そばにいて…」
私は彼を離さない。彼にも、離して欲しくない。
腰に回した腕に溢れる想いを乗せて、私たちは屋上で抱き合った。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

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