キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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桜の咲く道で -4-

ちょっぴり長い第4話。


北国の桜には間に合わせたいっ…!
++++++++++


「何やってんのよ、光一」
週が明けて摩央姉ちゃんに経過報告に行った僕。
返ってきたそのひと言めが、これだ。
「…ごめん」
腕組みをする摩央姉ちゃんに責められながら、僕はただ下を向いていた。


プールに行く前の日。
音楽室で祇条さんに会ったとき、埒を開けるヒントを教わった。
「好きなことをしていると他のことは忘れられるから、時間がすぐに過ぎてしまう」
先生の好きな水泳に打ち込んでもらえば、少しは気が晴れるかもしれない。
僕が先生に水泳を教わることで、いつもの明るい川田先生に変わってほしい。
その思いは、もう少しで届くところだった。


明るい表情を取り戻した先生を見て、ホッとした。
「先生が水泳を始めたきっかけって何ですか?」
「きっかけ?それは…」
調子に乗った僕が興味本位で尋ねた質問で、先生の顔がこわばった。
失敗した―――一瞬で次に起こる状況を把握した。
「高校のとき、先生に褒められたからよ」
術を失い丸腰の僕の耳に、力のない声がズシリと重く響いた。


僕たちに待ち構えていたのは、予想外としか言いようのない展開。
川田先生に近づくつもりだった僕たちは、逆に自分たちから距離を遠ざけてしまった。


僕はまったく油断のならない状況に身を置いていることを思い知らされた。
責められても言い訳なんてできない。
でもその一方で、解決の糸口は掴むことができた。
先生は、高校のときの話をすると表情を曇らせる。
ということは、先生の“過去”をひも解けば、確実に悩みの元にたどり着ける。
「トモちゃんの過去か…」
僕の話を聞いた摩央姉ちゃんは腕組みをしたまま、しばらく俯いた。
「僕が調べるよ。今回は僕のミスだから」
「頼んだわよ。今度失敗したら承知しないんだから」
「わかってるって」
先生の力になるためには、二度と同じ轍は踏めない。
摩央姉ちゃんに念を押されながら、僕は図書室に向かった。


図書室の扉を開けると、見覚えのある顔がカウンターに立っていた。
そういえば…。
「星乃さん」
「あ、相原君」
同じクラスの星乃さん。
図書委員の彼女なら、卒業写真の場所を知ってるはずだ。
「卒業写真ってどこ?」
「奥の郷土の歴史のコーナーにまとめられてるから、すぐわかると思うわ」
星乃さんの指さす向きには『郷土史』と書かれた札が挿されていた。
「うん、わかった」
「わからなかったら、また聞いてね」
「ありがとう」
ひとつ会釈して、言われたコーナーに向かい先生の代の卒業写真を探した。


++++++++++


(…ふぅ)
授業が終わると決まってため息が出るようになった。
これが私らしくないことはわかってる。
でも、堪えるのも限界…。


「川田先生」
「相原君…」
放課後、ロッカーの前を歩いていると相原君に会った。
「先生の初恋の人、この学校の先生だったんですね」
「ど、どうしてそのことを…?」
「卒業写真…見たんです」
(……)
いつもその人のそばで写真に映っていて、ニコニコしていて…。
明らかに見てわかるという彼の言い分に私は納得するしかなかった。
「察しがいいわね。その人が…私の初恋の人よ」
隠していた過去が、相原君の手によって露になってしまった…。
「知られてしまった」という気持ちで、また胸が締め付けられた。
…でも、彼に知られたなら、これ以上ひとりで我慢する必要もない。
ぎゅっとこらえていたものが、今度は少しずつ緩んでいく気がした。
「自分がどこまでできるかわからないけど、先生の力になりたい」
彼の言葉が嬉しかった。
だから話を聞いてもらいたくて、彼に少しだけ付き合ってもらうことにした。


彼を助手席に乗せ、ある場所へと向かった。
生徒を車に乗せるなんて初めてだから、ちょっと違和感があったけれど。
「どうして丘の上公園に?」
「あの人、ここみたいに高いところが好きでね、よくこうやって二人で過ごしたの」
丘の上公園に着いてすぐ、彼は私に訊ねてきた。
ここは、あの人との思い出がたくさん詰まった場所。
「彼、真面目で、奥手で、決して女子にモテる方じゃなかったんだけど…」
真面目で奥手―――でも、はにかんだ笑顔が素敵。それが私にとっては魅力だった。
先生としてだけではなく、人間としても尊敬できる存在だった。
その先生に憧れて教師を目指し、自分から輝日南高校に戻ってくることを選んだ。
でも、先生の命日が近づくと、昔の思い出が影を落としてしまう。
楽しかったはずの思い出なのに、それがかえって重荷になってしまう皮肉が苦しくなる―――ずっと抱えていた想いのたけを、相原君にぶつけた。
泣きそうな私にハンカチを渡す彼はほとんど黙ったまま。
話を聞きながら返す言葉をずっと探していたように見えた。


「さ、湿っぽい話はこれでおしまい。話を聞いてくれてありがとう。すっきりしたわ」
話を聞いてもらったおかげで、胸のつかえが下りた気がした。


もうすぐ、命日がやってくる。
その日は日曜日だし、久しぶりに輝日南山に登って、あの人に会いに行こうと決めた。


++++++++++


命日。
一年であの人のことを一番考える日、と言っていいかもしれない。
早めに家を出て車でふもとまで行き、そこからリュックサックを背負って山道を登った。
都会では感じられない澄んだ空気。
登るたびに近く感じる青い空。
その空を彩る白い雲。
私の歩く道のそばには、緑が生い茂る。
自然のキャンバスを肌で感じるのは、何年ぶりだろう…。
豊かな自然に囲まれながら、私はあの人と歩いた道を前へと進んでいった。


「川田先生」
「相原君!どうしてここに!?」
輝日南山の中腹にある休憩所で休んでいると、相原君に出会った。
「命日…ですよね?」
「…ええ」
「先生や、あの人の想いをもっと知りたくて…」
「……」
いつになく思いつめた表情の相原君。
こんな彼を見るのは初めてだった。
「一緒に、登っていいですか?」
突然のことだったから、彼の問いかけに少し戸惑った。
でも、嬉しかった。
「ええ、一緒に登りましょ」
彼と並んで、頂上を目指してまた歩き始めた。


少し険しい道を抜け、小川を渡る。
「あの人とも、こうやって手を繋いだんですか?」
小川を渡り終えたときに彼が発した一言で、あの人との山の思い出を思い出した。
教師と生徒は街中で手を繋げない。だから山では思う存分手を繋ぐことができた。
それが嬉しくて、私は一度手を繋ぐとなかなか手を離さなかった。
「僕も川田先生と手を繋げて、嬉しいです」
私の話を聞いて彼が返した言葉は、当時の私を髣髴とさせるようだった。


頂上に着いたころには、もう太陽が西に傾き始めていた。
きれいな空気を存分に味わい、小さく見える輝日南の街並みを二人で眺める。
「あの人とも、こうやってこの風景を眺めたんですね」
「ええ」
輝日南山はあの人とはじめて登った山。
それだけに、他の山にはない特別な想いがある。
彼にそう言うと、彼は「そうだったんですか…」と一言だけ呟いた。


会話の間が空いたところで、私は彼に聞きたいことを訊ねることにした。
「泳ぎ方を教わりにきたのは、私のためだったんでしょう?」
それだけじゃない。この前の丘の上公園のことも、今日のことも。
全部私のためだった。
そう気づかされたとき、とても嬉しかった。
“先生の力になりたい”
彼の言葉に嘘はどこにも見当たらなかった。
「ばれましたか?」
「ええ」
苦笑いを浮かべる彼を見ると、彼の取ってくれた行動が嬉しかったのと同時に、私にとって“ひとりの生徒”でしかない彼の存在がだんだんと大きくなっていくのを感じた。
―――私は彼のことをどう思っているんだろう。
また、彼は私のことをどう思っているんだろう。
「どうして…そこまでしてくれるの?」
「それは…」
「あっ…ごめんなさい。どうかしてるわね、私…」
すでに答えの出ている質問を投げかける私。
心の中でもう動揺が始まっていたんだと思う。


ひと呼吸おいて、私は彼にあの人に祈るよう話した。
「何が何でもそうするつもりでした」
彼の強い口ぶりが嬉しかった。
彼と一緒に、私は天国のあの人に向かって祈った。


++++++++++


(僕ではあなたの代わりはできませんか?)
(先生が僕のことを好きになってくれたら、二人のことを許してくれますか?)
川田先生の初恋の人に祈った。
先生のことはただ“先生”としか思っていなかった。
でも、先生のことを考えるといつもとは違う感情が体を流れていた。
―――僕は、先生のことが好きだ。
先生と山に登って、はっきりと自分の気持ちがわかった。


「登山の本…?」
「うん。それで、できるだけ読みやすい本がいいんだ」
授業の合間、星乃さんに相談に乗ってもらった。
彼女と話すという理由で友達からは冷やかしを浴びせられたけれど、それに付き合っている時間はない。
僕にとってはとても大事なこと。
「お昼休みは当番だし、そのときに来てくれる?候補になる本は選んでおくから」
「わかった。ありがとう」
昼休みに約束を取り付けて、時間までただ勉強に集中した。


「これなら、読みやすいと思うわ」
「ありがとう」
昼休み。
星乃さんから本を受け取った僕は、閲覧机で本を開き紙面に視線を集中させた。
山登りを経験して、山のよさを感じた。
でもそれだけじゃない。
先生と、また別の山に登りたい。それが登山関係の本を読む本当の理由。
「読書なんて珍しいわね」
ふと声のしたほうを見上げると、川田先生が笑顔で立っていた。
「それって、山登りの本…」
「はい。次にどの山に行こうか、探してたんです。他の山にも登ってみたくて」
「じゃあ、今度二人でどこか登ってみる?」
読んでいる本を見て一度表情を険しくさせたけど、僕の話を聞くと先生はすぐに笑顔を取り戻した。
「いいですね!じゃあ、どこにしようかな…」
僕が乗り気になって探していると、先生は急に無口になった。
「…ダメね。ついあの人のことを思い出しちゃって…」
先生を見上げると、ポツリとそう呟いた。
「あの人ともこうやって次にどの山に登るか相談したわ…」
「……」
「あなたのおかげで元気になったのに…」
(……)
思い出が蘇るたびに暗くなる先生が、少しもどかしくさえ感じた。
僕は立ち上がり、先生に素直な気持ちを話した。
「無理することなんてないですよ。でも、思い出を悲しがってちゃダメだと思う。本当は楽しい思い出のはずなのに…」
「…そうよね。大切な思い出を悲しがってちゃダメよね」
何か考え事をするように視線を下げていた先生は、僕が話し終わると視線を戻した。
「ありがとう。もう大丈夫だから」
愛想笑いにも見える笑顔を見せながら、先生は表情を緩ませた。


僕は意を決して、先生に訊ねた。
「先生、僕じゃダメですか…?」
「え…?」
「初恋の人の代わり、僕じゃダメですか?」
「あ、相原君…いきなり何言うの?」
「先生、僕は…本気です」
先生が驚くのも無理はないと思っている。
でも僕は、先生への気持ちを素直に伝えたかった。


キーンコーン…


無情にも、答えを聞けないまま図書室にチャイムが鳴り響いた。
「さ、早く行かないと遅刻するわよ」
「先生…」
僕を急かし、足早に図書室を去った先生。
それを追いかけることもできず、僕はその場に立ち尽くした。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

どうもはじめまして。SS・桜の咲く道で続き楽しみにしています。
【2007/05/05 16:32】 URL | kazu #-[ 編集]
>北国の桜には間に合わせたい…!
・・・もう北陸地方や東北地方も桜が散っていますからね…
ただ北海道の桜が散るのは5月20日ごろらしいです。
その日までに完成お願いします!
【2007/05/05 18:08】 URL | ツバメエース #g54.wAi6[ 編集]
>kazu様
こちらこそはじめまして。ご来訪ありがとうございます。
SSはマイペースで更新してますので、またお暇なときに覗いてやってください。
ちなみに次が本編最終話です。
【2007/05/05 22:43】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]
>ツバメエースさん
情報ありがとうございます。あと2週間か…。
北海道の桜が散るころには完結するよう頑張ります。
あんまり大きな口は叩けませんが(汗
【2007/05/05 22:46】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]

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