キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

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胸いっぱいの単語帳 -2-

第1話を書き終えたところでちょっと身体がオーバーヒートしてしまいました。更新が進まず申し訳ありません。


2/7追記
ようやく公開に相成りました。
本当にお待たせして申し訳ありません。


光一の変態っぷりを少し復活させてみたり。
**********


11月1日。水曜日。
「……」
「……」
僕の部屋でわら半紙にプリントされた小さい字とにらめっこ。
コンタクトを外した摩央姉ちゃんは、瓶底眼鏡で目を細めながら数字と戦っている。
僕はその隣で別の紙と二枚を交互に見比べる作業をこなす。


小さなちゃぶ台を囲んだ男女二人がこんな滑稽な状態になっているのにはワケがある。
僕たちが見ているのは先週行われた校内模試の結果。
点数分布表と摩央姉ちゃんの点数を照合していく作業をずっと続けている。
中間テストの結果が芳しくなかったこともあって、気合十分で臨んだ摩央姉ちゃん。
「出来?そんなの気にしない気にしない」
三つ編みを揺らしながら余裕を見せる姿を見て安心していた。
―――その余裕はどこに消えたのか、今日の表情はいささか硬い。
「うーん…」
「どうしたの?」
「ちょっとね…」
頬杖をついて、悩ましげにひとつため息をつく。
(……)
僕が見ているもう一枚の紙は、摩央姉ちゃんが取った点数の一覧表。
ずらりと並んでいる数字は中間テストとは比べ物にならない点数。
この点数のどこが不満なんだ?としか思えないほどの高得点ばかりなのに、この人はしっくりといっていない。
「私だってこれくらいはやれば出来るのよ!」と笑顔で言い出すと思ったらこのサマ。
いつになく不満顔なのが気になって、摩央姉ちゃんの視線を追いかけてみる。
真横に座っているから垂れた三つ編みが視線の元を隠すように見える。
だから横目でちらりちらりと線を確かめ、少しずつその線の先へと視界を向けていく。
(あ…なるほど)
追っていった先に書かれていたものに、僕は何かを感じ取った。
確認を終えてもう一度視線を上に戻した僕は、三つ編みを垂らした幼馴染の顔を見つめる。
(摩央姉ちゃんの横顔…)
自分の部屋で、しかもこんな至近距離で見ることができるのは僕だけの特権。
学校の男子がこんなこと知ったら…。
「何?私の顔をじーっと見て」
「えっ、あ…」
しまった。気づかれた。
いらぬ妄想に浸っていたところで鋭い視線を浴びる。
視線の主はさらに目を細め、何かを企んでいるような目つきに変わった。
「もしかして、私に惚れ直してたとか?」
「ち、違うって」
「ふーん、そっか…」
違うと答えるとがっかりしたように視線を落とす。
これが何を意味しているのかは、すぐにわかった。
…まったくこの人は。
「…ごめん」
「本気でそう思ってる?」
「思ってるよ」
少しぶしつけに言ってみる。
「なんか素直じゃないわねー。二人っきりなんだから素直になったっていいじゃない、こんな感じでさ」
摩央姉ちゃんはそう言って身体を近づけ、僕の腕にしがみついてきた。
や、柔らかい感触が、腕に…。
「あはは、赤くなってる~」
「摩央姉ちゃん!」
この確信犯め…。
羞恥のあまり膨らみに密着していた腕を振り払い、睨みつける。
「ふふっ、まだまだ子供ね」
「う…」
「いいわよ。許してあげる」
僕の気持ちを知ってか知らずか、摩央姉ちゃんはクスリと頬を軽く緩めて見つめてきた。勢いをつけて啖呵を切るつもりが小首ひねりを食らってしまう。
すっかり遊び道具にされてしまっていたことに気づくも、時すでに遅し。
でも、悪い気はあまり…いや、全然しなかった。
「そうだ、何で私の顔を見てたのかぐらいは聞いておきたいわね」
「それは…」
摩央姉ちゃんがずっと睨むように見ていたもの―――「2」という数字。
その数字がどうして気になっていたのか尋ねてみる。
「やっぱり、やるからには"1番"を取りたいじゃない」
「そりゃまあそうだけど」
「この"2位"ってのが気に入らないわ」
ところどころに見受けられる"2"という数字を指さしながら、三つ編みを揺らして語気を荒げる。
どの整数よりも1に近いこの数字は、負けず嫌いな摩央姉ちゃんの闘志に火をつけるには一番効果があるのかもしれない。
「悔しいから、さっさと続きやるわよ」
そう言って摩央姉ちゃんは鞄から参考書を取り出した。
本一冊でさっきまでのおふざけ気分はどこへやら、緊迫感を醸し出す僕の部屋。
ピリピリとした空気を察した僕は、邪魔にならないように自分の机に向かった。


11月15日。水曜日。
放課後の図書室に行くと、毎日のように濃紺の人だかりができている。
センターまで2ヶ月。3年生が自習机を占領するのがいつしか当たり前の光景になった。
どの机でも先生と生徒が対面形式で勉強している。 
「この小説の肝になるのは…」
「で、この評論の趣旨っていうのはね―――」
川田先生も他の先生たちと並び、赤ペン片手に受験生に付きっ切りで指導をしている。
いつもは静かなこの場所が、熱を帯びた空気を発して雰囲気を変えている。
(摩央姉ちゃんは…)
その群れの中で、呼び出した張本人を探そうと机の周りを探してみる。
奥のほうまで見渡してみるけれど、探し人の姿はない。
本棚の並びを突き抜け、カウンターのほうへ戻ろうとしたその刹那、後ろから声が聞こえてきた。
「光一み~つけた!」
「わっ!」
声の主は後ろから腕を伸ばして僕に抱きついてきた。
勢いがついていたのか、後ろからラリアットを食らったような態勢。
前のめりに倒れそうになって、ギリギリのところで踏ん張る。
(…ん?)
この背中の感触…。
振り返ると、満面の笑みで僕を見る摩央姉ちゃんがいた。
「ま、摩央姉ちゃん…」
「びっくりした?」
「…ここは図書室だから」
冷静を装うフリをして、妙なドキドキ感に襲われる。
身体は本棚に隠れてはいるけれど、カウンターや周りの目が自分たちに向いているような気がして、人差し指を唇に当てて摩央姉ちゃんに見せる。
すると小声でそんなことわかってるわよ、と唇を尖らせながら言い訳を返してくる。
「ところでさ、光一って社会の選択何だった?」
「日本史だけど?」
「なら、ちょっと教えてくれないかな」
そういって僕の手を取り、個室へと連行。
ドアを閉めると座って座って、と隣に座らせる摩央姉ちゃん。
僕が腰を下ろすのを見計らい、座るとすぐに教科書を開いてどの範囲かをペン先で指し示す。
「このページのあたりまでね」
(…中世か)
範囲は鎌倉時代から戦国時代に入るまで。
ちょうど、僕が2学期の中間テストでやったところだ。
僕はバインダーノートを鞄から出し、ノートを挟んでいるところまでめくる。
(日本史…日本史…っと、あった)
1学期までではありえないほどびっしりと書き込んだノート。
知らず知らずのうちに色分けもされていて、見やすいものになっていた。
「光一もやるわね~」
耳元から声がする。
僕だってこれくらい…とはいっても、摩央姉ちゃんの影響なのは明白で。


「チンギス=ハンって漢字でどう書くか覚えてる?」
「それぐらい余裕よ」
白紙のルーズリーフを前に三つ編みを跳ねさせながら、スラスラと字を書いてゆく。
『成吉思汗』
「正解」
「こんな簡単なの出さないでよね」
「昔、とある難関大でこれを問う問題が出たらしいんだけど?」
「…随分詳しいのね」
「先生が言ってたから」
「なーんだ」
とはいっても、ここまでは小手調べ。
今回の中間テストで学年トップ10に入った実力をナメてもらっては困る。
「じゃあ、金閣寺と銀閣寺の正式名称と設けた人物と設けた目的、および2つの寺が立てられた当時の文化の特徴は?」
「特徴…?なんだったかな…」
一瞬上を向いて目を細め、何かを思い出す作業に入る。
それは1分としないうちに解け、思い出したようにペンを走らせた。
「金閣寺は正式名を鹿苑寺金閣といい、銀閣寺は慈照寺銀閣という。金閣は3代将軍足利義満が、銀閣は8代将軍足利義政が山荘として設けた。
金閣が設けられた時期の文化は金閣のあった土地から北山文化と呼ばれ、武家文化に伝統的な公家文化を取り入れたのが特徴である。
一方で銀閣が立てられた時期は東山に銀閣があったことから東山文化と呼ばれ、禅などの影響を受けた幽玄・侘びの世界が特徴的である」
「うん、バッチリ」
「ふー、面目躍如だわ」
摩央姉ちゃんは長いセリフを終えてホッとした様子で頭の上で手を組み、伸びをしてみせた。
その姿には確かな自信と余裕が感じられる。
もう、僕より遥か先に行ってしまったような気がして、身近な存在なのに不思議と距離を感じてしまう。


伸びを続けながら、摩央姉ちゃんは口を開いた。
「社会は暗記モノっていうけど、実際勉強してみると大変なのよね」
「どうして?」
「私立ぐらいなら暗記でもいけるけど、難関国立大の二次試験みたいに記述式の問題だとしっかり時代の流れとか背景とか掴んでおかないといけないのよ」
「へー」
「しかも校内模試じゃ『この単語を使え』なんて縛りをつけてくるし…」
話しながら赤色にびっしりと染められた部分を見せるようにノートを開き、僕に見せてくれた。
難関国立を突破するために、担当の先生に記述問題の添削をしてもらうという。
…あまりのレベルの高さに、もうついていけない。
勉強の面で僕の出る幕はもうないことを確信した。
「ここまででいい?」
「うん、サンキュ」
「ここから先は一人で出来そう?」
「戦国時代なら任せて。ゲームでしっかり勉強したんだから」
得意げにして鼻歌を奏でながら、「やっぱり蘭丸よね」とのろけてみせる高校3年生。
この調子なら、摩央姉ちゃんには2ヶ月も必要ないのかもしれない。


11月29日。水曜日。
雨が降る前特有の、アスファルトから湧き上がる焦げた石のような匂い。
それが北風と一緒に僕の嗅覚をつついていた。


もうすぐ12月。
摩央姉ちゃんは休みの日に予備校の模試を受けに行くことが増えた。
家で勉強していたのがそのままデートになっていた僕たちは、だんだんと会う機会が減っていた。
平日も、決まった曜日でしか会えないようになっていた。
それは淋しくもある。でも、志望校に合格するのならそれでいい。我慢は厭わない。
いつからかはわからないけれど、そう決めていた。
今日はその決まった曜日。


雨粒が頬を掠める。
間を置かず、粒は勢いを増して地上に降り注ぎ始めた。
(まずいなぁ…)
あいにく傘を持ち合わせていない。
灰色に染まった空を恨むように見上げながら、僕は雨宿りのできる場所を探した。
雨は降る勢いを強め、僕たちに向かってくる。
負けじと足を速めて、定休日の店のアーケードで何とかしのぐことにした。
道のほうを見ていると、肩を濡らした人たちが鞄で頭を覆い、雨宿りをしようと駆け足をしている。


ブレザーの肩に浮いている雨粒を手で払いながら、雨脚が弱まるのを待つ。
「光一!」
雨宿りを始めて10分ほどたったころ。僕を呼ぶ声がした。
傘の中から見える三つ編みの毛先が、声の主の正体を教える。
「あ…摩央姉ちゃん」
「傘ぐらい準備しなさいよ」
「ごめん」
朝の天気予報で雨が降るとは言っていなかったのに…。
摩央姉ちゃんの準備のよさに感心する。
「風邪…引くよ」
「うん、ありがとう」
雨に濡れた僕を気遣って、ハンカチを渡してくれた。
それでブレザーの濡れた部分をふき取る。
「ありがとう」
「いいえ。どういたしまして」
僕の隣に立って傘を閉じ、渡したハンカチをポケットにしまいこむ。
ポケットに手を入れたまま閉まったシャッターに少しもたれて、何かを思うようにひとつ息を吐き出した。
「雨…やまないなぁ」
僕がポツリと呟くと、摩央姉ちゃんは閉じた傘を差し出した。
「相合傘、しない?」
「え、でも…」
摩央姉ちゃんの傘はさほど大きくない。
二人で入るとどちらかが雨に濡れることになる。
もう冬はすぐそこ。濡れたら風邪を引くかもしれない。
模擬試験や受験勉強で忙しいのに、摩央姉ちゃんに風邪を引かせることは出来ない。
「今度は摩央姉ちゃんが風邪―――」
「いいから。ね?」
隣にいる相手は譲らなかった。
―――相合傘。
摩央姉ちゃんと二人で同じ傘の中に入る…小さい頃にやったことがあったようななかったような。
「傘、持つよ」
曖昧な記憶を辿りながら、傘の柄を持って歩き出す。
ちょっとしたエスコート状態。
高校生になってこんな風に摩央姉ちゃんと歩くなんて思っていなかったから、自分で持つと言いながらこの状況が少し恥ずかしかった。
「よかったら、ウチであったかいもの飲んでいくといいわ」
傘の持ち主は鞄を濡らさないように胸に抱きながら、僕に提案してくれた。
「でも悪いよ」
「ずっと光一の家にはお世話になってたし、たまにはいいじゃない?」
誘ってくる顔には笑みがこぼれている。
そして傘を持つ僕の手をそっと握り締めてきた。
…この誘いを断るのは申し訳ない。
「うん、わかった」


10分としないうちに、「水澤」と書かれた表札の前に着いた。
「さ、入って」
「お邪魔します」
久しぶりに摩央姉ちゃんの家に入った。
いつ以来かは覚えていない。でも、当時と何も変わっていない気がして懐かしかった。
「こっちに座って」
僕をリビングに招き入れた摩央姉ちゃんはキッチンに向かい、程なくティーセットを持ってやってきた。
真っ白なポットとカップが眩しいくらいに輝いている。
「さっきお湯入れたところだから、ちょっとだけ待ってて」
そう言ってリビングから姿を消し、どこかに行ってしまった。
誰もいないリビングに、僕ひとり。
昔の思い出と記憶を頼りに、リビングを探検してみる。
リビングの窓からは雫越しに僕の家がうっすらと見える。
昔はよく菜々と2人でこの道を往復したよな…。
何度もチャイムを鳴らすんだけど、摩央姉ちゃんはわざと居留守を使って出てこなくて。
待ちくたびれた菜々がぐずりだしたところで見計らったように玄関から飛んできて…。
そのお返しに僕らが居留守を使ったらすぐにバレて、2人揃ってお仕置きされたっけ。
……懐かしい。
物心がついたころからずっと摩央姉ちゃんと一緒だった。
そして、これからも…。
物思いに耽っているとバタバタと階段を駆け下りる足音がして、僕は慌てて椅子に座りなおした。
「ごめーん、髪の毛を梳きなおしてて」
摩央姉ちゃんは三つ編みを解き、ウエーブがかった髪を揺らしながらリビングに入ってきた。
クセの強さを物語るように毛先が四方に枝分かれしている。
「大変なんじゃない?」
「もう慣れたけどね」 
そう言ってズレかかった瓶底眼鏡を指で直しながら、白い容器に手を近づけた。
「もう、いい頃かしら」
蓋を傾け、うっすらと湯気を上げるティーポットから三角錐のバッグを取り出し、また蓋を閉める。
その蓋を押さえて、カップに赤みがかった茶色の液体を注ぎ込む。
独特の香りが部屋に漂い、鼻をくすぐる。
「はい、どうぞ」
「いただきます」
スティックシュガーを開けて薄切りのレモンを浮かばせ、ひと口すすってみる。
「…あちっ」
さすがに沸かしたてのお湯は熱い。ひと口ずつ、ゆっくりと口に含んでいく。
あったかいものを流し込み、雨に濡れた体を温める。
「どう?あったまったでしょ?」
「うん、ありがとう」


「ところで、今日はこの後どうするつもり?」
脈略もなく訊いてみる。
「今日は休息日にしようかな…って思ってる」
「勉強はいいの?」
「うん。せっかくあなたと会えるのに、勉強ばかりじゃ息が詰まっちゃうから」
ずっと突っ走ってきたから、給水所も必要。
頭のいい摩央姉ちゃんのこと。ペース配分もしっかりと考えてるんだろう。
「そういえば、昔は光一もウチに来て遊んだわよね」
「うん」
二人で紅茶を飲みながら天井を見上げて、僕たちは昔の思い出を呼び戻していた。
「いつだったっけ?ウチの中でかくれんぼすることになって、私の箪笥の中に隠れたの」
「え…あ…」
恥ずかしい過去をこの人はよく覚えている。
何かで切り返したいけれど、出せるカードがない。
「見つけたのはいいけど、下着まみれになってたあなたを見たときは笑ったわ」
「その話はっ…!」
身体の真ん中から熱いものがこみ上げてくる。
興味本位で箪笥の中に入って、鬼だった摩央姉ちゃんに見つかったときは大笑いされた。
あの時は菜々にひどいこと言われたっけ…。
思い出すだけで恥ずかしい昔の出来事。
「さすがに今じゃできないわよね~」
「もう身体が入らないよ」
今入ったら何て言われるか…。
「このド変態!」じゃ済まない。菜々に話が流れたら相手にされなくなる。
さすがにそれは耐えられない気がした。
「他にも光一はここでいろんな伝説を残してくれたんだけど、聞きたい?」
「…もういい」
これ以上聞くと紅茶が不味くなる。
咄嗟にカップを置いて首を振った。
「でも、ほんといろいろあったわね」
「…うん」
「空白の1年半を除けば…ね」
「……」
何を言おうとしているのか、すぐにわかった。
カップを置くカチャリという音が静かに響く。
「あなたっていつも『摩央姉ちゃんと結婚する~』って言ってたじゃない。あれ、半分冗談だって思ってたの。いつもいつもこればっかり言ってたのに、成長するにつれて言うことも少なくなった。だから、だんだん嘘っぽく感じちゃって。それが高校生になって、突然何もなかったように話すことすらなくなって…。あなたの顔を見るたびに、なんだか心にぽっかり穴が開いた気がしてた」
「……」
「そこで自分自身の気持ちに気がついたの。なのに、久しぶりに喋ったあなたに『摩央姉ちゃんが変わったから声をかけられなかった』って言われて…。私は距離を作ったつもりなんてなかった。あなたに見てもらいたくておしゃれをしてたのに、そのせいであなたと距離を作っていたなんて…皮肉なものね」
頬杖をついて視線を斜めに下げ、ひとつため息をした幼馴染。
いつだったか、こんなことが前にもあった。
「だから、今こうやって光一とお茶できてるのが幸せなの」
「摩央姉ちゃん…」
下げていた目線を正面に合わせると、眼鏡の奥から何かがこぼれそうなのがわかる。
まるで摩央姉ちゃんの言葉を裏付けるように、それは瞳の先から頬へと伝った。
「…ごめんね。昔のことを思い出したらちょっと切なくなっちゃって」
ハンカチを取り出して眼鏡を外し、僕に背を向けてこぼれたものを拭う。
その姿を見ていると僕も切なくなって、胸が痛む。
「ねぇ…私の部屋、来てみる?」
「え?でも」
「摩央チェックその69。女の子が淋しいときはそばにいること」
久しぶりの摩央チェック。
少し都合のいい解釈かもしれないけど、摩央姉ちゃんと一緒にいられるのならそれでいい。
「うん」
「…ありがとう」
言った本人も強引だって事はわかっていたのかもしれない。
僕の返事を聞くとゆっくり立ち上がり、二つのカップを片付けた。


キッチンから出てきた摩央姉ちゃんは僕の手を取り、二階へと誘った。
「菜々ちゃんの部屋ほど可愛くないけどね」
少し照れながらドアを開けると、年上らしく落ち着いた空気のする部屋が見えた。
中に入るとうっすらとコロンらしきいい香りがする。
「ここに座って」
ベッドの上に座るように言われ、腰を落ち着かせた瞬間。
「え…」
唇に柔らかな感触を覚える。
不意を突いたキスに、押し倒される形でベッドに身を預けた。
「これがないと、淋しくて…」
「……」
唇を離した摩央姉ちゃんは、一言ポツリと呟いた。
…どうしてこういうことに気づいてあげられないんだろう。
鈍感な自分を責めた。


「もう少しだけ、付き合って欲しいの」
摩央姉ちゃんの部屋で、日が暮れても二人で話し込んだ。
ずっと、手を繋ぎながら。

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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

コメント

風邪ですか?無理せずゆっくり休んで直してくださいね。

しつこいようですが・・・、キャラソンはどの店でも売り切ればかりでしたよ(ーー;) やっぱり咲野ファンの自分にとっては彼女の歌が1番でしたね(^^♪(笑)
【2007/01/23 17:10】 URL | 雷 #-[ 編集]
満足な出来なんですねぇ。キャラソン。
私の場合は風邪じゃなくて本当にオーバーヒートですよ。何事も無茶は禁物。

キャラソン欲しい…。
【2007/01/23 19:24】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]
心にハットトリック決められましたよ(笑)
【2007/01/23 20:09】 URL | 雷 #-[ 編集]
ブログ設立100記事おめでとうございます!!!v-315

>本題
学力ランキングですか・・・
そういえば進研ゼミで一度○島県ランキング2位なった覚えが・・・
あのときは本当に後一歩だったために悔しかったなぁ。もうあんなチャンスは来ないかも・・・
そんなこともあったので、摩央の気持ち分かります。1番が1番良いですね。
【2007/02/09 23:15】 URL | ツバメエース #g54.wAi6[ 編集]
ご無沙汰しておりますm(__)m
風邪が治ってなによりです!!これからも頑張って下さい。
【2007/02/10 19:40】 URL | 雷 #-[ 編集]
>ツバメエースさん
中高生時代にしか味わえないんですよね。こういう「順位」で一喜一憂できるのは。
大学ではランク付けしませんから。

>雷さん
おかげさまで風邪は治りました。

バレンタインSSを書く筆が進めば、文句ないんですよねぇ。
【2007/02/11 23:00】 URL | Author #y/MN7pSg[ 編集]

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