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キミキス*Kimikiss SS図書室
PS2ソフト「キミキス*Kimikiss」(©2006 ENTERBRAIN,inc.)のメインヒロイン・星乃結美をメインにした創作小説図書室です。

かわら版其の三

金曜に卒論中間プレゼンを控えていてSSまで手が回っていない筆者です。
現在結美視点の転校後を書いてますが、もうしばらく時間をいただきたく思います。
早く終わらせてSS書きたい…。




では本題。
「Ensemble Waltz」を運営されている月見香倶夜様との相互リンクをさせていただくことになりましたので、ここで報告させていただきます。
筆者同様、結美スキーのお一人です。


http://www.ringo.sakura.ne.jp/~kaguya/ewaltz


サイト右下部にリンクスペースがありますので、そちらからどうぞ。
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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

キンモクセイの咲く街 -1-

お待たせして申し訳ありません。


いつもより長いです。
なので格納形式にさせていただきました。

柊姉、登場の巻。
(10/17 タイトル変更)
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かわら版其の二

先日仄めかしていたSS書庫の整理が一段落つきましたので、ここで報告させていただきます。
過去の作品をひと通り読めるようにしてあります。
(※「伝わらない想い」は後日UPする予定です。)
また別室として「TLSS」専用の閲覧室と、書庫専用の掲示板を設けました。
これからもSS図書室をよろしくお願い申し上げます。



http://yuumislibrary.web.fc2.com/

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新作SS予告

僕が想う人は、このレールのずっと先にいる。


私が想う人は、このレールのずっと先にいる。


離れてしまった二人を繋ぐのは、一本のレール。
そして、ポツンと立つ一つの小さな駅―――


新作SS『終着駅の向こう側~Over the Terminal~』(Both Side)10月2週第1話公開予定




以前書いたとおり、2人の結婚までを書いていきたいと思います。
今回は光一と結美の両方の視点で書く予定です。
基本的に1回読みきりの形を取りますので、上のメインタイトルのほかにサブタイトルがつきます。メインタイトルはカテゴリー上のまとめとして存在する、と言えばいいでしょうか。
上手く伝わってるかわかりませんが…。


季節に合わせて書くつもりなので、1年で済むかどうか。
その間にブームは過ぎ去りそうです(汗

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web拍手お返事&ひとこと

すっかり返信が遅くなり申し訳ありません。
次のSSの構想を考えてますが、何分結婚までを書こうなんぞと無謀な挑戦をしようとしてますので、時間が全然足りません(汗
でも、「やめとけ」と言われても書いてしまう気がします。たぶん。
頑なになって大学を卒業できないと本末転倒ですが。

ちなみにこの間上げた『男のオトし方』…改めて読んでみると、内容の薄さは然ることながら、三人称はイマイチな印象ですね。
今後はできるだけ当事者視点で書こうと思います。

それではお待たせしました。お返事を。


>頭で描いた世界を形に出来るって、やっぱりすごいと思います。良いものを読ませて頂きありがとうございました。次は転校後のSSですねw

ありがとうございました。
ええと、どうお答えしましょうかw
自分はすごいとは思ってません。ただ、思ったことを言葉にして表すしかできませんし…。だから起承転結が伴わず、中身がグダグダになったりするんです。
褒めていただくのが恐縮です。特に今回は。

で、転校後のSSですが、もう構想は出来上がってます。一話目だけ(汗
今までみたいに週~回というペースでかける環境にないので、のんびり見守ってやってください。



結美が転校して一週間。
離れてしまった結美と光一は、お互い同じことを考えている気がします。
「クリスマスに、あの人と逢いたい」と。

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男のオトし方

このネタは某掲示板を見ている人なら知っていると思います。たぶん。


今後も某掲示板のネタは書いていくつもりです。
タネをまいたのは自分ですから…w
続きを読む

かわら版其の一

現在このブログ形式のサイトと連動してまとめサイトを製作中です。
とある情報筋から過去の作品を見ているゲストの方がそこそこおられるということで、1ページに記事が5つしか表示されないここよりも読みやすいように、どうせなら通しで読めるようにしようと考えました。
ファイルの拡張子の関係で現在悪戦苦闘してますが…
また、まとめサイトでは以前shiguさんからリクがあった『TLSS』関連のSSもいずれアップできるように…と考えています。
TLSSのSSを書かれている別サイトさんを見ていると「何このクオリティ」とかなり萎縮してますが…。




他の方のSSを見ていると自信喪失に拍車がかかって「書きたいことを書く」というスタイルが崩れそうです。もう頭の中がモヤモヤ。いいのかこれで。
(注:筆者は萌え路線とかそういうのをあまり意識したことがありません。SSに関する知識もありません。だからSSの世界で言われる「王道」とかそういうのは一切頭に入ってません。ただ書きたいことを書く。それだけが筆者を動かしています)
こういうのって意識するべきなんでしょうか。気になるところです。

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今後の展開~新作SS予定~

早速web拍手をいただきありがとうございます。


結美の転校までは書き上げましたので、今後は原作では書かれなかった光一と結美の遠距離恋愛を書く予定です。もう既にそのリクが…w
読み方によっては長編にも短編にもなるような作品を書いていこうと思います。一回読みきりだけど一つ一つを繋げたら実は長編だった…みたいな感じです。






リアルで卒論やらなきゃヤバイ状況なので、更新は一気にスローダウンします。一段落して、気分が乗った日に一気に書くつもりです。
…とは言いながらできるだけリアルタイムで書ける様にはします。読んでる側に立った時に、時間を追って上げていったほうが現実感があっていいかな、と思ったり。

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伝わらない想い~Time Limit~ -執筆後記-

今回は非常に難産でした…。
書き出しの頃に少しだけ書きましたが、結美の心情描写をどれだけブレずに書くかに悪戦苦闘しました。それが最後まで足を引っ張り、結果として日曜日に間に合わず遅れてしまい…。申し訳ありません。
またもう一つの軸であった「時間」に関する記述にも苦労させられ、結局結美の心情に含めることしかできず…切なさを前面に出した分、あまり明るく楽しい作品にはできませんでした。
このサイトを立ち上げてからずっと守ってきたポリシーも打ち砕かれました。自分の中でポリシーとしていたのが、「結美(光一)ボイスでの補完」。語り口調で書くので、できるだけ読むときに詰まるような難しい表現は避けて書いていきました。が、それも途中で挫折。やむを得ず文体を変えたところもあります。


…何かと課題を浮き彫りにした作品でした。


内容的には、スキルートにナカヨシルートを若干混ぜた感じってところでしょうか。原作にはないオリジナルを「2人の廊下」より多めに含めています。






また感想等お待ちしております。
web拍手を押していただきコメントしていただくもよし、メールフォームであれこれ注文つけていただくもよし、コメントに罵詈讒言書いていただくもよし。
もう何でも来いですw凹む気満々ですがww

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人物紹介~その11・里仲なるみ~

里仲なるみ(さとなか なるみ)
私立輝日南高校1-A。
光一の妹・菜々と同級生である。
輝日南では有名なうどん専門店『里なか』の一人娘であり、学校のない日は店の手伝いを全てこなす。
祖父・軍平(ぐんぺい)の厳しい監督のもと、うどん打ちのスペシャリストとしての修行を積んでいる。
それは学校生活にも波及し、所属する家庭部ではうどんを専門に扱い料理を製作。
「うどん研究会」という小規模団体も立ち上げ、日々新作の研究に勤しんでいる。
菜々からの吹き込みにより光一のことを「かっこいい」と一方的に片思いしているが、光一は単なる思い込みだと思っている。
1年生ではあるが、性格的にも精神的にも小学生レベルの幼さが残っているので、これからどう変化していくかは見ものだったりもする。
その他に特筆すべきは、体育は得意中の得意であること(逆上がりを除く)。
ショートカットの髪型に真っ直ぐすぎる性格が特徴。
身長147cm。4月8日生まれの牡羊座。血液型B型。






今回の場合、結美との絡みは非常に難しかったです。やっぱり菜々頼み。
ナカヨシルートなら絡ませるのは簡単なんですが、今回はそういう感じじゃなかったのでどうしようかと。でも結美が転校直前に学校を回るという設定があったので、それを使ってなるみを登場させました。
これでヒロイン全員が登場。長かった…。

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人物紹介~その10・祇条深月~

祇条深月(しじょう みつき)
私立輝日南高校2-B。
国内有数の由緒ある家柄に生まれる。
幼少期からピアノやクラシックバレエなどの英才教育を受けてきた生粋のお嬢様。
生まれたときから許婚がおり、その人と結婚するという祇条家代々のしきたりに運命を決められている。
非常に高貴な身分であるがそれを鼻にかけるようなことはなく、とっつきやすいタイプのお嬢様である。
その一例として食堂のおばちゃん、略して「食おば」との交流があり、テラスで友人らを集めてお茶会を開くこともある。
登校時は英国製のリムジンに乗って登校。だが、帰りは「待たせると皆様のご迷惑になりますから」ときびな池のそばの自宅まで徒歩で帰る。
大人しく従順な性格であるが、一方で間違ったことには決然とした態度を取る芯の強さも持ち合わせる。
また二見瑛理子と同じクラスであるが、交流はまったくと言っていいほどない。
ショートボブの髪型に水のように澄んだような声が特徴。
身長158cm。10月19日生まれの天秤座。血液型A型。






結美と深月を結ぶ共通点…ということで迷わず花壇を選びました。
花の表情を読み取るという彼女独特の感覚に助けられた感じです。
花の表情一つで世話をする人の性格や世話をするときの気持ちがわかってしまう…一種の特殊能力だと思います。
感覚の鈍い凡人には無理だ(汗)
そういえば、「条」のつく名字の人は先祖が高い身分の人だと言う話。
どこかで聞いたような気がしますが、それはまた別の話で。

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人物紹介~その9・水澤摩央~

水澤摩央(みずさわ まお)
私立輝日南高校3-C。
光一の幼馴染であり、家も目と鼻の先にあるほど近い。
今時の女子高生らしくファッションや流行には敏感で、かつスタイルもいい。当然のように校内の男子の注目の的である。
(が、光一はあまりの摩央の変貌ぶりに高校に入ってから声をかけることができなかった)
だが、こうなったのには理由がある。
もともと摩央は瓶底メガネをかけるほどの勉強家だったのだが、高校受験に失敗。その反動が彼女を「今時の女子高生」へと変貌させた。
また受験失敗の反動は教科書アレルギーをも生み出し、教科書に触るだけでジンマシンが出るほど。
その割にフライトアテンダントなどの華のある職業に就きたいという夢も持つ。
川田先生のクラスの生徒であり、先生を「ともちゃん」とあだ名で呼ぶ気さく過ぎるほどの明るい性格でもある。
色素の薄い茶がかった髪の毛に三つ編みが特徴。
身長162cm。2月27日生まれの魚座。血液型O型。




今回は摩央姉ちゃんに恋敵の色を含ませたアドバイザー役をやってもらいました。いろんなキミキス関連のところを見ると、こういう役になりやすいという話が出るのは唯一攻略可能な年上キャラとして仕方のないところなのでしょうか。


余談ですが、個人的には結美たんの次に好きなキャラです。随分差がありますがw
幼馴染のお姉ちゃんっていなかったので、ある種の憧れというか何というか。もし結美たんがお姉ちゃんだったら…紙芝居イベント的な感じなんでしょうね。
うむ、やっぱり結美たんだw

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伝わらない想い~Time Limit~ -20-

学園祭を控え、金曜の授業は午前中だけで打ち切られた。
私は午後の空いている時間を使って、やり残したことを全部済ませることにした。
お世話になった先生に挨拶をした。
図書委員のみんなに挨拶をした。
花壇の花たちに、図書室の本たちに、私が関わったすべてのものにお別れを言った。
慣れ親しんだ人やものと離れるのは名残惜しい。でもそれは、たとえ花でも本でも同じ―――そう言い聞かせて、涙は見せないようにした。
でも、彼と離れることだけは「名残惜しい」という言葉では片付けられない。
彼のことを考えると、後ろ髪を引かれるような…むしろ力いっぱい引っ張られるような感覚になる。それは私の心をそのまま表しているし、もしかしたら彼の心も表しているかもしれない。
(このまま輝日南に残りたい…)
叶わないこととわかりながら、そう強く願った。


―――そして、運命の日。変わることのないタイムリミットを迎えようとしていた。
「おはよう、星乃さん」
「おはよう」
挨拶をしてきた相原君は、吹っ切れたような顔をしていた。
そんな彼に少し安心した私は、これから始まる最後の日に臨んだ。
朝礼が始まり先生に呼ばれた私は、黒板の前でクラスの人たちに転校することを伝えた。
「今までありがとうございました」…挨拶を終えた途端、こらえていたものがじわりと目頭に伝わった。
「星乃さん、今までありがとう」
「あなたのこと、忘れないからね」
席に座った私を囲むクラスの人たちの目にも、涙が浮かんでいた。
「最後だし、学園祭を一緒に回ろうよ」
「私も!」
「俺も行く!」
次々とみんなからの誘いを受ける。でも、私には約束がある…。
「みんな…ありがとう…。でも私…」
私は彼のほうを向き、彼の様子を窺った。
彼は私をちらりと見ると、表情を変えずに席を立って教室の外へと出てしまった。
(あ…)
人混みの中心にいた私は、そこから抜け出すように彼を追いかけた。
「ごめんなさいっ…!」
誘ってくれたみんなに何度も心の中で謝りながら、私は廊下に出た。
真っ直ぐに伸びる教室前の廊下には、もう彼はいない。
(相原君…どこに行ったの…!)
どこにいるという宛てもないまま、私は走って彼を探した。
追いかけてくるクラスの子を振り切り、拭いても拭いても流れる涙に視界を遮られながら、華やかに彩られた廊下を駆け抜けた。
彼に…相原君に会いたい。ただそれだけで、慣れないことに足が震えても、つまづいて転んでも走り続けた。
(どこにいるの…)
彼の姿が見えなくて、途方に暮れた。でも足を止めると涙がとめどなく溢れてきそうで、足を止めようとは思わなかった。
そして、1ヶ所だけ学園祭で使われていない場所にたどり着いた。
(図書室…)
私が1年生の頃からずっと親しんできた場所。彼と知り合ったのも、ここだった…。
ドアに手をかける。すると、閉まっているはずのドアが開いていた。
ドアを開けると、そこには相原君が本を持って立っていた。
「相原君…」
「ごめん。星乃さんに薦められて読んだ本、まだ返してなかった…」
「……」
彼が教室を出た理由がわかった。
最後の日に、こんな仕事があるなんて。
「せめて、最後は星乃さんに渡したいと思って…」
「…うん。わかったわ」
私はカウンターに入り、いつものように手続きの準備をする。
2人きりの図書室。2人だけの空間が、この広い図書館で出来上がっている。
いつかの映画で見たようなシチュエーションに酔いそうになりながら、私は彼から本を受け取った。
「ごめんね、いきなり教室を出て行って」
「…ううん、いいの」
彼とこうやって2人でいられるなら、私はそれだけで満足。
2人の時間を共有できるこの時間が私にとっては貴重なもの。
こうやって輝日南高校で過ごすことは、もうないのだから…。
「もう、ここに座ることもないのね…」
座り慣れた椅子を撫でながら、見慣れたカウンターからの風景を見渡す。
もう少しここに座っていたくて、何だかセンチメンタルな気分になった。
『それではオープニングセレモニーを始めますので、生徒の皆さんは体育館に集合してください』
「…そろそろ、行かなくちゃね」
「うん…」
学園祭の始まりを知らせるアナウンスは、センチメンタルな気分を加速させた。
「相原君…」
「何?」
「もう少し、ここにいたい…」
「……」
輝日南での最初で最後のわがまま。
『相原君と一緒にいたい』―――私の心からの願いだった。
あと何時間もすれば一緒にいられなくなる…だから、せめてこの時だけは2人でいたかった。
「星乃さん…」
「行かなきゃいけないのはわかってる。でも、相原君と一緒にいたいの」
「……」
私の言葉に彼は一瞬戸惑うような表情を見せた。
私は椅子から立ち上がり、彼の手を両手で握り締めた。私の想いが伝わるように、強く、強く握り締めた。
「…私は、好きな人とここで知り合えて嬉しかった」
「……」
「1年生のときから同じクラスだったのに、話すことなんてなくて…目が合っても話しかけてくれなくて、嫌われてるのかなって…」
「……」
「だから…話しかけてくれたとき、嬉しくて…私……」
言葉が上手くつながらなくて、涙がまた浮かんでくる。
すると、彼は私をカウンター越しに抱きしめた。
(あ…)
「星乃さん」
「相原君…」
「星乃さんの気持ち、よくわかったよ。僕も、星乃さんのことが好きだ」
一度聞くことを拒みながら待ち焦がれていたこの言葉を、ようやく聞くことができた。
伝わらなかった…伝え切れなかった想いが、伝わった。
「うん…ありがとう…」
「だから、転校しても僕のことを忘れないで欲しい」
「忘れるなんて…できない…」
彼の背中に回した手にぎゅっと力を込めた。
離したくない。離れたくない。ずっとこのままでいたい…。
「私はそばにいられない…けれど、心はあなたのそばにずっといるわ」
「ありがとう」
そして彼は、私の唇にそっと彼の唇を触れさせた。
その瞬間、流した涙は色を変えて、嬉し涙になっていた。
「じゃあ、学園祭…行こうか」
「うん」
私たちは手を繋ぎ、セレモニーで誰もいない廊下を2人で歩いた。


その後、体育館に行かなかった私たちは担任の先生にひどく叱られた。
先生に叱られるなんて初めてだったけれど、彼と一緒にいられたことが私にとっては何にも換えられない大切なもの。
相原君と一緒…それが私にとって最高の幸せ。
その彼と、転校しても心で通じ合える。
「旅費貯めて、休みになったら会いに行くよ」
帰りに彼が言ってくれた言葉を胸に、私は輝日南から見知らぬ土地へと旅立った。






『叶わぬ恋なら、いっそ諦めてしまえばいい』
人はそう言うかも知れない。
でも、私はそうは思わない。
もしあの時諦めてしまっていたら、彼と知り合い、会話を交わすこともなかった。
そして、彼への想いを胸の内に秘めたまま、見知らぬ土地へと旅立っていた。
言葉で上手く伝えることはできないかもしれない。
態度ででも、上手く伝えることはできないかもしれない。
それでも、私は不器用なりに背伸びして、彼の恋人になるという幸せをつかむことができた。


伝わらない想い…それはきっといつか、想いを寄せる人に伝わる―――

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伝わらない想い~Time Limit~ -19-

片付けを終えて学校を出る頃には、もう外の街灯が点き始めていた。
「じゃあ、僕は星乃さんを送っていくから」
「気をつけて帰ってね」
「相原先輩、星乃先輩、さよなら!」
「お兄ちゃん、あんまり寄り道しちゃダメだよ?」
菜々ちゃん・なるちゃんと別れ、私たちは輝日南駅に向かった。
「すっかり遅くなっちゃったわね」
「そうだね」
歩きながら2人で暗くなった空を見上げる。
「肉じゃが、ほんとにおいしかったよ」
「ありがとう」
「なるみちゃんが言ってたよ。あれを学園祭に出すうどんと一緒に出したいって」
「そんな…私のなんて…」
「本当だよ。そうそう、なるみちゃんは『里なか』の一人娘なんだ」
「そうなの?」
「うん。あの子が一緒に出したいっていうくらいだから、星乃さんの腕前はすごいってことだよ」
「うん…ありがとう」
『里なか』といえば、評判のうどん専門のお店。輝日南にいたころよく家族で食べに行った。
まだ子どもだったけれど、うどんもだしもおいしかったことは覚えている。
「どうせなら、学園祭でも食べたかったなぁ…」
彼は小声で呟いた。
「うん…」
(学園祭…か…)
彼と一緒に過ごす最後のチャンス。
もう少しで、彼とは一緒にいられなくなる。
「星乃さんは、学園祭ってどうするつもり?」
唐突に彼は学園祭の話を切り出した。
「まだ、何も決めてないわ」
「じゃあ、一緒に回らない?」
「えっ…!?」
彼から学園祭の誘いをもらった。
驚いたけれど、私は1つしか答えを持っていない。
「うん、私も一緒に行きたいって思ってたから」
「そっか。よかった」
ひとつため息をつくと、彼は立ち止まった。
「どうしたの?」
「星乃さん、少しだけ…いい?」
「うん、いいけど…」
立ち止まったのは輝日南駅のもう目の前。
通勤ラッシュでスーツを着た人たちが次々と私たちとすれ違ってゆく。
「星乃さん」
「何?」
「キス…させて欲しい」
「え…でも、人がたくさん…」
「大丈夫、目立たないようにするから」
「うん…」
相原君がしたいなら…私は彼の言葉を信じるだけ。
改札を抜ける人の死角になるように、大きな柱の陰に隠れる。
光のほとんど当たらない空間で私は柱に背中ごともたれかかり、彼の顔を見上げた。
彼の手は私の肩に乗せられていて、キスまでは秒読み。
その手に力が入り、彼の顔が近づく気配を感じると、ゆっくりと瞼を閉じた。
「んっ……」
唇が重なる。彼の吐息が私の頬をくすぐった。
彼は唇を重ねたまま、離れようとしない。
目立たないところにいるはずなのに「誰かに見られている」という気持ちが唇を刺激する。
「相原君…そんなに長く…」
「ご、ごめん…」
恥ずかしさが頂点に達して、これ以上耐えることはできなかった。
でも、彼の切なそうな表情が私の心に何かを訴えかけていた。
そして彼は、キスの理由を話し始めた。
「肉じゃがを食べて…思ったんだ。星乃さんともっと一緒にいたいって」
「相原君…」
「星乃さんを困らせることはわかってる。でも、自分の気持ちに嘘はつけない」
「……」
彼の瞳から、かすかに光るものが見えた。
「相原君…涙が…」
「あ…ゴミでも入ったのかな」
目を掻きながら作り笑いを浮かべる彼の顔は、どことなく引きつっていた。
…彼の気持ちに応えきれない自分が、悔しい。
「本当にごめん…」
「ううん、悪いのは私だから…」
「どうして?」
「私が転校することを言わなかったら、相原君にこんな想いさせなくて済んだのに…」
「星乃さん…」
私のせいで…自分を責めることしかできなくて、感情はもう歯止めが利かなかった。
初めて、悔しくて涙を流した。
「星乃さん…そんなに自分を責めないで欲しい」
「でも、でも…」
「僕は、星乃さんと最後に時間まで一緒にいられたら、それでいいから」
「あ……」
彼は泣きじゃくる私を強く抱きしめた。
「こうして2人でいられたら、僕はそれでいいんだ…」
「相原君…」
人目を憚らず、もう一度…今度は私から唇を重ねた。
流し続けた涙は、いつの間にか頬を伝う前に乾いていた。
「…星乃さん」
「何?」
「…ありがとう」
「ううん…学園祭、楽しみにしてるわ」
「僕もだよ」
余韻に浸りながら、私たちはお互いの家路へと向かった。

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伝わらない想い~Time Limit~ -18-

次の日も私は時間を見つけて学校を散策した。
やっぱり、どこに行っても学園祭の準備に追われている。
時折聞こえてくる笑い声に羨ましさを感じながら、私は記憶の引き出しに次々と学校の風景を詰め込んでいった。


家庭科室を通り過ぎようとすると、中から声が聞こえた。
「………ちゃん、この新作どう思う?」
「なかなかいけると思う」
「先輩は、どうですか?」
「僕もいけると思うなぁ」
(え…この声…)
聞き覚えのある声に、耳が反応した。
気になった私は、目立たないようにドアの端から中の様子を見てみることにした。
「先輩、本当ですか?」
「うん、僕はこういうの好きだから」
「やった!」
1年生らしい女の子が2人、男の人を囲んで喜んでいる。
(何だか楽しそう…)
少し口元を緩ませていると、中にいた男の人と目が合った。
(あっ…)
やっぱり相原君だった。私に気づいた彼は2人に何かを言って、ドアに近づいてきた。
「星乃さん」
「相原君…ごめんなさい」
「気にしないでいいよ。いつからいたの?」
「さっき来たところ。何してたの?」
「いま、新作のうどんの試食をやってるとこなんだ。よかったら食べない?」
「そうなの?でも私…」
いいからいいから、と彼は私の手を取り、中へと連れて行った。
「じゃあここに座って」
「あ、うん…」
彼に促されるまま椅子に座る。目の前にはどんぶりとお箸が用意してあった。
彼はキッチンに立っている2人を振り向かせ、紹介を始めた。
「じゃあ紹介するよ。星乃結美さん。僕のクラスメートなんだ」
「はじめまして!」「はじめまして!」
2つの元気のいい声が部屋にこだまする。
「キッチンのそばにいるツインテールの子が菜々。僕の妹なんだ」
「相原菜々です。よろしくお願いします」
「で、うどんを茹でてるのが里仲なるみちゃん。菜々のクラスメートなんだ」
「里仲なるみです。うどんの感想、あとで聞かせてくださいね。あ、菜々ちゃん、それ取って!」
キッチンが少し慌ただしくなったところで、彼は私の隣に座った。
「菜々ちゃんとなるちゃん、元気いっぱいね」
「そうなんだよ。2人に会うと僕のほうが圧倒されるんだ」
苦笑いを浮かべる彼を見て口元が緩む。
「でも、どうして相原君と妹さんが?」
ちょうど茹で上がったうどんを持ってきたなるちゃんが事情を説明する。
「実はうどん研究会の子が2人とも今日はいなくって…それで菜々ちゃんと先輩に味見をお願いしてたんです」
「味見というより毒味かもしれないけどね」
「先輩、何か言いました?」
「い、いや、なんでもない」


「あ、おいしい」
だしをひと掬いしてみると、感想が自然と口から出た。
「本当ですか!?」
「うん、いりこのだしが効いててとってもおいしいわ」
「あ、わかっちゃいました?」
「すごーい!どうしてわかったんですか?」
なるちゃんは照れ笑いをして、菜々ちゃんは目を丸くして私を見つめる。
「うん、私…よく料理してるから。いりこのだしもよく使うのよ」
「そうなんですかぁ」
感心する2人の横から、相原君は私に声をかけた。
「星乃さん、料理得意って言ってたよね?」
「うん。でも、どうして?」
「何か作ってもらいたいな、なんて思ってね」
「え、でも…」
「大丈夫です。家庭部で使ってるものは使っても問題ないですから」


思わぬ展開で料理をすることになった私。
『また星乃さんのお弁当が食べたい』―――あの時の『また』が、違う形で実現した。
(どうしよう…)
何を作るか考えながら、準備室にあったオレンジのエプロンを借りて身につけた。
食材と調理器具がキッチンを囲み、出番を待っている。
相原君は私を手伝うため、流しで待っている。
(じゃあ、あれを作ろうかな)
ひと通り食材を見て、使えそうなものをまな板に乗せ、適当な大きさに切っていく。
「相原君、その鍋…取ってもらっていい?」
「わかった」
小さめの鍋をコンロに乗せ、火をつける。温まったところで鍋に油を引き、鍋全体に伸ばす。
「何作るつもり?」
「それはできてからのお楽しみ」
油の上にお肉を乗せ、炒めようとしたその時。
「熱いっ」
「大丈夫?」
油が弾けて、私の指に飛んできた。
冷やさなきゃ…と思って火を弱め、流しに向かおうとすると、彼が私の腕を取る。
「指、貸して」
彼は油の飛んだ部分を軽くキスするように口に含んだ。
(あ…)
私の指が、彼の口に…私は恥ずかしくて下を向いていた。
時々舌の先が這っているのを感じると、くすぐったくて余計に恥ずかしい。
「よし、これで大丈夫」
「あ、ありがとう…」
「気をつけてね」
「うん」
私は相原君が冷やしてくれた場所に自分の口を近づけ、もう一度念入りに冷やした。
そして頬の熱さを自分で感じながら、コンロの火を元に戻した。


コンロの前に立っている間、指に彼の舌の感覚がずっと残っていた。
思い出すとくすぐったくて恥ずかしくて、彼がすぐそばにいるのも忘れて一人で照れていた。
「はい、お待たせ」
「あ、肉じゃがですね?」
「すごーい!」
肉じゃが…私の得意料理。
それを一度、彼に食べて欲しかった。迷ったけれど、その理由で私はこのメニューを選んだ。
「いただきまーす!」
3人が同時に肉じゃがを口に運ぶ。
「おいしいですっ!」
「おいしい!」
「よかった…」
菜々ちゃんとなるちゃんには気に入ってもらえた。
彼の感想は…?気になって、相原君の方に目を向ける。
(えっ…)
彼の器の中は、ほとんどなくなっていた。
「星乃さん、やっぱりすごいよ」
「ううん、私なんか…」
「こんな肉じゃがなら、毎日食べたいくらい」
「そんな…」
繰り返し彼から褒め言葉をもらった。
『毎日食べたい』…彼からこんな風に言ってもらえて、嬉しかった。
「ごちそうさまでした」
4人で手を合わせ、一緒に後片付けをした。

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『キミキス』『TLSS』(PS2)の二次創作をやってます。
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